仲間達は死ぬほどいい人達でついつい泣いちゃいました。
私は宿屋を出たあとすぐ近くの路地裏の所に座った。
「はぁ...。自分が殺したもののあんなに簡単に人を殺せるなんて...。私...殺人者になったのね...。」
喉に何かが引っかかっているように、上手く声が出せない。視界には外国風のタイルの床だけ。いつも上を向いて歩いている自分が下を見ているのがすぐに分かってしまう。
「そりゃあここは、人を殺さないと生き抜いていけない場所なんだもん。しょうがないよ。」
「!?」
びっくりして、すぐさま上を向く。そこには太陽を背景に綺麗な金色の髪の毛を触る天使がいた。
「そんな簡単に人を殺せる...だっけ?そんなのこの世界限定じゃないよねぇ...。僕が見てきた限り地球でも牢獄に入れられるから皆人を殺さないだけで、刃物を使えばさっきみたいに簡単に殺せちゃうよね。分かっていることを何度言ってもしょうがないでしょ?涼香。君は人を...いや、この世界の住民を殺したんだよ。その罪に変わりはないよ。」
アルヴァちゃんは髪の毛をくるくると中指で弄って言葉の最後に突き放すようにパッと放した。
それは私がアルヴァちゃんに捨てられたような感覚だった。
「...アルヴァちゃんは天使だものね。人を殺した者には成敗を下す正義の象徴だもの。...私に何をするの?」
キラキラとした別世界の生き物を見上げて無理に笑う。本当に綺麗な子だな...と改めて思う。
「...僕は」
ストン...とアルヴァちゃんは膝を曲げて私と目線を合わす。その目はいままで生きてきた中で1番優しい目だった。まるで拗ねた子供をあやす様な目で私を見る。
「...君を慰めに来たんだよ?」
そう言ってアルヴァちゃんは私を優しく包み込むようにギュッと抱く。花の匂いがした。
「...っ!」
私は強くアルヴァちゃんに抱き返す。
そして私は大人とは全く異なるように大きな声を出して泣き叫んだ。その間アルヴァちゃんはずっと『涼香は顔に出にくいなぁ。』とか『もっと頼ってくれてもいいんだからね。』と言いながら優しく私の背中をポンポンと叩いてくれていた。
「スッキリした?」
「...ん、ありがと...。」
子供のように泣いたのが恥ずかしくてボソボソと礼を言うとアルヴァちゃんは私を見ながらニヤニヤとしている。
「涼香はまだ子供ですもんねー。」
「...ちょっとお姉さんっぽかったからって調子のんじゃないわよ!!」
グイグイと頬を引っ張る。
「い゛っいひゃいいひゃいっ!いひゃいから〜!!」
やっぱり...アルヴァちゃんは私の妹みたいな子だ...。アルヴァちゃんがお姉さんなんてありえない!たとえ歳上だとしても!!
グラッ
力が抜けていく。目の前がやわやわと白くなっていく。おなかが空いた...。
「お腹...空いた...。」
「...また吸血衝動きたぁ...ほら...満足するまで飲んで♡」
ズルリと服をずらす。
たまらなくなり私はアルヴァちゃんの首に噛み付いた。噛み付いた瞬間ジュワッと甘い蜜のような血が口の中に流れ込んでくる。
「ん...ぐ。ごきゅんっこきゅこきゅ...。」
「はぁっ...んんっ!!んぁっ!」
さっき泣いたせいで鼻が詰まっており、鼻呼吸が出来ないので一旦口を離す。
「はっ...あ...。」
舌で首筋を流れる血をヌルッと舐めとる。
また噛み付いてアルヴァちゃんの血を堪能する。
「あっあっ...あぁ...んっ...きもち...いよぉ...。」
「ごきゅっ!っぷぁ...げほっごほっ!!」
喉の変な所に入りむせる。
「えっ!?どど...どうしたの!?」
紅く火照った頬が嘘みたいに真っ青になる。
「きっ...気持ちいいの!?痛くないの!?」
気持ちいいとアルヴァちゃんが言った時衝撃だった。痛いのに悪いことさせてるなぁ...と罪悪感を持ったまま血を飲んでいたんだけど気持ちいいの!?
「...吸血鬼って血を飲む時牙から特殊な媚薬効果のある唾液を作り出すんだよ。だから牙が刺さっている以上気持ちいいんだよ...。ていうか前飲んだ時も僕気持ちいいって言ったような気が...。」
また頬を赤らめて恥ずかしそうに言う。
「う、嘘ぉ...。多分あの時は夢中で気付かなかったんだと思う...。」
「も、もういいの?」
「もっと飲めるんだけどお腹いっぱいだし血がなくなって死んじゃったらやだし...。」
「天使は死なないよ?天使は一人一人身体の中に血が少なくなったら血を増やせる機能ついてるし。」
...万能ね。
「気持ちよくなりたいなら今日しよっか?」
冗談交じりにクスクス笑って言う。
「...夜...待ってる。」
顔を掴まれてキスをされる。相変わらずアルヴァちゃんの唇は甘くて柔らかかった。
「そろそろ行かないと。ラヴィが心配してる。」
「うん。浮気は殺すからね?行ってらっしゃい。」
...今サラッと怖いこと言ったなー。口癖なのかな...。
「ラヴィ。」
ソファーに座って俯いているラヴィに軽く声をかける。
「...!涼香!!」
スクッと立ち上がって私を強く抱き締める。
「ラヴィ...。心配したの?」
色素の薄い緑色の髪の毛を指の間にスルッと通して撫でる。柔らかい...。
「するに決まってるじゃないっ!涼香のばか!1人で抱え込んで欲しくないのに!」
鼻をすする音がする。私のために泣いてくれているんだわ...。
「ラヴィ...ラヴィ...ごめんなさい...心配してくれてありがとう...。」
顔にキスをする。唇で涙をはむ。
「私も...次からは腕を掴まれないように...気をつけるわ...。」
「...うん。お願い。」
「マリー...じゃなくて受付のお姉さんの所に行きましょうか。」
「まだ診てるからまだ時間あるわ。あの...涼香、マリーって人はどんな人だったの?」
...私の言ったことはほぼ全部本当だ。マリーという名前を使ったこと以外。この話をするには7年遡ることになる。
「...長くなるかもしれないわ。」
「涼香のこと...知りたいの。どれほど長い時間が経とうと私はあなたを知ることを諦めはしないわ。」
ここからは...私の過去話になるわね...。
ここからは涼香の過去話です!




