怒りと哀しみ
ふっははははマジで小説どう書いてたっけーーーーーーー!??????
「ラヴィ!」
声をかけるとラヴィはもそりと体を起こしこめかみを掌で押す。
「...涼香。」
「ラヴィ!ラヴィよね!?良かった...良かった...!」
「馬鹿野郎!わしらがどれだけ心配したと...うぅ。」
「ゆうき...りょうか。」
治ったと思った。でもなにか様子が変だ。
「...ラヴィ...じゃないわよね。誰。」
「結城 涼香。お前を殺す。何があってもお前の全て壊す。結城涼香に制裁を。殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せころ...せ...ぐ...ぅ...あぁぁ...あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
目を虚ろにし、ただ口が動くだけで表情はない。殺せと何度か言った途端耳が痛くなるほどの奇声を上げ白目...と言っても全てが黒いのだが目をぐるぐると動かした。
「...っ...ラヴィ。ごめんなさい。」
手刀でラヴィの脊髄部を強く強打する。
かくんと首を座らせラヴィの体全体の力が抜けた。
「...誰。誰なのよ...。」
ラヴィをこんなにした奴は私のことを恨んでる。強く強く恨んでいる。どうして。私に何かすればいいのに。なぜラヴィまで。
「りょう...!」
涼香に手を差し伸ばそうとしたミシューがぎょっとした。
「許さない。私が返り討ちにしてやる。内蔵も全て消し炭にしてやる...。」
爪がくい込み、血が流れるほどに強く拳を握りしめた。怒りで痛みも何も感じずにただただ静かに怒った。
絶対に殺してやる。
コンコン...
「涼香様。お客様がいらっしゃっています。」
ギルドの従業員が重たいドアをノックし無機質な声でそう言った。
「...客?どこに行けばいい?」
「っ...!客室です...。」
扉を開けて従業員に話しかけるとビクリと驚いてから口と鼻を塞ぎ嫌そうに言った。
「...ありがとう。...それと、人と話す時は礼儀をわきまえなさい。」
ラヴィの症状が伝染るとでも思っているのか。風邪やノロじゃあるまい。伝染るのなら1日ともにした私達にはとっくに感染ってる。なんなんだあの態度。ムカつく。
「...ちっ。」
ミシューはラヴィをみておく、と部屋に残った。
コンコン
客室の部屋のノックをする。
「どぞ。」
...聞いた事があるようなないような声だわ。
「失礼しま...」
まさか。なんで。
目の前の黒いソファーに座る女の子。ずっと。ずっと一緒にいた。向こうの世界では。
「...っ久しぶり...おねー。」
急いでソファーから立ち、私に抱きついた。それはそれは愛おしそうにガラスに触れるような繊細さで。
なんで?なんでいるの。
「夏香...。どうして...。」
「へへ...会えたね。嬉しい?私おねーがいないと生きていけないよ...?言ったでしょ...おねーがいないと...私死んじゃうって。」
鳴が死んだ時、ずっと私の心は壊れたままで。それを全て受け入れるとこの子は、夏香は言った。私は苦しかったこと。死にたいこと。全てを吐き出した。3時間ほど泣いた。それを黙って聞いてくれていた夏香は涙でぐちゃぐちゃな私を優しく抱いた。その時に、そんなこと言ってた気がする。
「いなくならないで。おねーだけはいなくならないで。おねーがいないと私死んじゃう」って。
「...っだからって!だからって死ぬなんて!まだ早いのよ!どうして!?何で死んだの!まさか自殺じゃないよね!?ふざけないでよ!あんたが居なくなったら残されたお母さんは!?あんたが居なくなったら...誰があの強がりの母さんを守れるのぉ...!!」
ふざけないでよ...なんで...こんな最悪なことに...。
「...おねーがいないと...私は...」
「もう少しだけ...生きててよ...。どうして...。大切な人の命は...大切にして欲しいのに。粗末に扱わないでよ...どうして?鳴が欲しかったものを...私が失くしたものを...お母さんが大切に守ってきた...大切にしてきたあんたの命をどうしてそんなに簡単に...」
あぁ...死にたい。おかしくなりそう。
「簡単なんかじゃ...!」
「あんたが楽になるために...どれだけの人が悲しむと...?」
「おねーは母さんのことばっかだね!!なんで?!私が死んだのは全部おねーのせいだもん!おねーが死んだから!おねーのいない世界なんてないのと同じだ!!」
パシンッ!
夏香の頬を叩いた右手が少しジンとした。
「...なに...いってんの?あんた...何言ってんのかわかって言ってる?私を...私を抱いた時。あんたなんて言ったか覚えてる?あの言葉に救われたのに。なんであんたが...そんな...そんなこと言うの...?」
「...なんで泣くの...おねぇ...?」
驚いたように涙を流す夏香。
私のせいだ。私が死んだから。私がこの子の中心になってしまったから。
「私がいるよって...」
「...え?」
「あんたは...鳴がいなくても私や皆がいるよって!...言ったのよ...。言ったのに。」
「...おね...。」
夏香は私に手を伸ばそうとする。
「最低よあんた。会いたくなかった。全然嬉しくないわよ!!」
その手を手で払う。
「...ぁ。」
ただただ涙を流し続けた。
私も、夏香も。
「...今日は...私達と泊まりなさい。」
「...私達...?何それ。他の人といるの?」
がしりと私の腕を強く掴む。
「ちょ...夏香...!痛いわよ。」
「誰といるの...!?ねぇ!!」
凄い形相で私の腕をブンブンと振る。
「っ今から教えるから!!離しなさい!」
「っ...ごめん...。」
夏香は自我が戻ったように急いで手を離し、肩を落とした。
「...どうしたのよ。行かないの?」
夏香はずっと俯いて突っ立ったままだ。
「て。」
「え?」
「手が...繋ぎたい。恋人繋ぎ。...だめ?」
「良いわよ。ん。」
手を差し伸べると嬉しそうにはにかみ指を絡めた。
「...ごめんなさい。」
ゆっくりと部屋まで歩いていると、夏香が悲しそうに呟いた。
「何が?死んだこと?私がいない世界なんてって発言したこと?」
「...全部。死んじゃったことも。私なんにも考えてなかった。おねーがいなくて苦しくて。それで、仕事頑張ってくれてた母さんを見てなかった。おねーが私に大切にしようねって言ってたのに。...ぅ...ごめっ...なざい゛...!」
...本当にこの子は、気が強いようでとても脆い。でも言ったことはすぐに反省できる。取り返しのつかないことをしたら、その事をずっと、ずっと覚えてる。
「忘れちゃだめだよ。この罪はずっと背負わなきゃいけないの。私もごめんなさい。死んじゃってごめんなさい。もし、多分ありえないけど、お母さんがこの世界に来たとしたら。その時は前より大事にしよう。あの人がいなかったら私たちは生きれてなかった。あの人がいなかったら私はずっと泣くのを我慢してた。あの人が代わりに我慢してくれてたから、私達は辛くても前に踏み出せたの。私は夏香もいなかったらあの時死んでた。」
「...うん。ごめんなさい。私もおねーもお母さんもいないと辛いよ。悲しいよ...?」
「うん...。そうね。」
私達はゆっくり、それはそれは亀が歩くようなスピードで部屋へと歩いた。




