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ガチレズ教師が吸血鬼になったら。  作者: 猫又二丁目
第4章 クエスト~ヴァルバナの宝花の採取~編
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頂上の異変

ザクザクと、雪をふむ音が3重に重なって聞こえる。

それをかき消すように吹雪の音が大きくなる。


「寒そうじゃな。」

「私達は涼香のお陰で寒くないけどね。」


2人は何気ない会話をしているが、いくら寒くないとはいえ山道を歩いていることにはかわりがない。二人とも息は切れていて顔にも疲れが見えた。

「二人とも大丈夫?しんどそうだけど。一度休憩する?」

「んーん、あと少しだし大丈夫。」

「わしも楽勝じゃ。」

あと少し、ねぇ...?もういっそ転移して終わらせてあげたいわ。けどバレたら面倒なのはもう学んだ。

「はぁ...もどかしいわ...。」

ポソリと呟くと、横で聞いていたラヴィが怪訝な顔をしたあと、またすぐに前を向いて歩き出した。


...あと10キロくらいかしら?

2人もだいぶしんどそうだし、強制的に休もうかしら。

「二人とも、ここで休憩しましょう。」

「「嫌。」」

...やっぱりね...。

「私疲れちゃったわ...。」

わざとらしくふぅ...とため息をはいてやる。

「...ふっ、涼香が?」

鼻で笑ったなこいつ...?

「どうせわしらを休ませるための嘘じゃろ。行くぞラヴィ。」

手で、クイッとラヴィを先に進むよう指揮する。

「...むかつくわァ。」

「え?」

ラヴィが私の言葉に目を真ん丸にして振り向いた。

「いーから休んで!!私が気にするのよ!」

そう言って、空気を圧縮させ、見えない椅子を作った。

「ここ座れるから。二人とも座って。早く。」

「えっ...ちょ...。」

「何をするんじゃ...おいっ。」

ふん、乱暴に座らせてやった。ざまぁみろ。

「はい、水分補給。」

空間魔法から取り出したコップに水の魔法的なやつで水を入れてやったのを二人に渡す。

「あ、ありがとう。」

「...いただきますなのじゃ。」

二人ともこくこくと喉をならして飲み干す。

ほら、やっぱり喉乾いてたんじゃない。

「「ぷはっ!」」

「もう一杯いる?」

「...お代わり、お願いします...。」

「同じく...なんかすまん...。」

手をかざして、コップに水を入れる。

「んく...こく...こく...」

「ごきゅごきゅっ...!」

飲む時の音が違うの面白いわね。

「満足、ありがとね涼香。」

「助かったぞ涼香...。」

申し訳なさそうに目を伏せて頭を下げる二人。素直なのはいい事よね。

「はいはい、もうちょっと休んでいきましょう。」



「ねぇ涼香。貴方は両親とか…いるの?」

5分程の沈黙があってから、ラヴィが咄嗟にそんなことを聞き出した。

「急にどうしたの?」

「いや…涼香ってなんか異次元すぎて神様から無理矢理形成されてたりするんじゃ…って思っちゃって。」


なんとも失礼な。私から見れば異次元はあなたの耳や手から出る魔法たちよ。

「親はちゃんといるわよ。」

お母さんと夏香…それと死んだお父さん。ちゃんといる。

「…え!?やっぱり強いの!?」

「強い…のかしら。えぇ、お母さんは強い。お父さんは私が産まれる前に死んでしまったから…。」


お母さんは、嫌なことがあったり仕事がつめつめで苦しくても弱音を一切吐かなかった。本当は苦しかったんだろうけれど私達子供がいるから弱っているところを見せなかった。本当にお母さんは強かった。

「涼香のお父さんなんだもん…きっと優しくて強かったと思うわよ。」

ラヴィは少しもぞもぞと足を動かしてから恥ずかしそうにそう言った。

「ありがとう。大好きよラヴィ。」


「にしてもじゃ、わしは天使の加護を受けてるとやらが気になって仕方ないぞ。いつから受けてたんじゃ?」

急に真竜神様が喋り出したと思えば、この前咄嗟に出た嘘を掘り返してきやがった。

「ん゛…えと…3歳くらい…だったと思う。」

あぁぁぁ…もう嫌だよ…適当に言ったけどどうか面倒臭いことにならないでっ!

「ほぅ!そんなに幼子の時から天使に見据えられとったんか!やはりわしの涼香は凄いのぅ…。」

うむうむと何度も首を上下にふる。良かった…納得してくれた…。にしても頷く真竜神様可愛い。


「まっ、お前の涼香じゃないけどね。」

機嫌良さそうに頷く真竜神様を見て嘲笑したラヴィが髪の毛を指先でクルクルしながらそう言う。

「…は、はん!少なくともお前のではないがな!!」

腕を組んで、プイッとそっぽを向きながらそう返す。

「……二人ともまぁまぁ落ち着いて。元気そうだしそろそろ行くよ。」

不服そうにも二人ともコクリと頷いた。

なにはともあれ登山再開だ。



「あと何キロくらいじゃろう…。早う着いてくれんかの……。」

「弱音吐かないで。こっちまでしんどくなってくる。」

2人はもうヘロヘロだ。実はあの休憩の後の山の傾斜が最低最悪だった。ドン引くくらいに急な傾斜だった。それに道も下より雪が降り積もり、膝の少し下辺りまで積もっており、雪に足が取られ体力が奪われる。

あと4キロほどで着くが、もう一度休んだ方がいいだろうか。

「……どうする?休む?」

「いんや……行く……。」

「竜に同感…。」

言うと思った。でも、もしこの後もこの傾斜と道が続いたり酷くなったりするのであればこの2人の限界は近い。なんとか楽をさせてやりたいのだけれど。


「この雪がなくなれば結構楽できるんじゃない?」

そうじゃない。この体力を奪っている雪を何とかすればいいのよ。

「な、何を言ってるの涼香?」

ラヴィがゾッとした顔でこちらを見る。

真竜神様は声も出ないほどに絶句している。


この量の雪を溶かしてしまうと雪崩がおきかねない。

雪をどかすのも同じくだ。どうしよう。

(涼香、まず雪をどかしたあとにすぐにサイドの雪の断面に結界をはってすれば何とかなるんじゃないかな?。)

「そうだった。魔法があったんだ。」

しまった、声にでてた。

ありがとうアルヴァちゃん。

「何をするつもり……?」

「もうわし恐怖でちびりそうじゃ。」

「雪をどかすのよ。その後に結界を張ってから歩き終わった雪のなくなった道にもう一度修復の魔法で雪たちを戻す。」

「な……にいってるのかわっかんないなぁ……?」

「……」

「やるわよ。」

私は手を前にかざし、近くの雪を丸ごと宙に浮かすイメージを頭に浮かべた。

よし、出来た。

次はレベルアップでずっと先の雪も同じように。

神経がやられるなこれ。

ぼこぼこと雪がどんどんと宙に浮いていく。

「これを、続けていく……。ふぅ…先に進むわよ。」

「「…そだねー。」」

なんか古いの出てきた気がしたけどなんでもいいわ。

歩き終わったあとの所と宙に浮いた雪に修復の魔法をかける。するとみるみる真っ新な雪の地面が出来て行った。

「よし、出来るわね。」



その調子で歩いて行ったら、とても楽に進んでいけた。ラヴィと真竜神様もとても楽そうに歩いている。

何故か目は死んでいるけれど。

「もう私何があっても驚かないわ。」

「わし神様なのに…。」

ブツブツと話しながら先に進んでいく。

一体なんなんだ。

「二人とも、ちょっとは楽になった?」

後ろに歩く2人にそう言うと、二人とも困ったような顔をした。

「もしかして楽じゃない?」

「そうよ……涼香は私達のためにこんなことをしてくれたのに…。」

「申し訳ないのぉ…涼香は()いやつじゃ……。」

「え?なによ?」

もそもそと喋られても聞こえない……。

よく分からない二人を放って私は作業に集中した。



「あ、頂点あそこじゃない!?」

どれほど歩いただろうか、目の前に真緑の綺麗な葉達が見えた。綺麗だ。

「やっと…ついたのぉ...。」

二人とも笑顔に戻って良かった。

すたすたと進んでいく。そこにはきっと綺麗な風景が待っているんだろう。そう考えると、私も自然に笑顔になった。



「え...。」


頂上に足を着いた3人の顔から笑顔が消え失せた。

「なに...これ。」

「...。」

まともな反応だ。だって、


()()()()()()()()()()()()()()()()


「待って、どういうことよ。どうして()()()()()()()()()()()のよ...。」

「ねぇ、何か嫌なものが来る。」

ラヴィが不意にそんなことを呟いた。

涼香は何も感じない。真竜神様も涼香と同じ反応をしている。


「だめよ。来る!逃げようこれはやばい!ほんとにやばいやつなの!!」

顔を真っ青にし、必死にそう叫んでラヴィは涼香と真竜神様の手を取り走り出した。


「どういうこと、私何も感じない!」

涼香がそう叫んでもラヴィは無我夢中で頂上から東にに走り続けるだけだ。

「一体どうしたんじゃラヴィ!」

「来るの!ダメなやつがくる!」

そう言ってずっと東に走り続ける。ラヴィも正確にはその“ダメなやつ”が何なのか分かっていないようだ。


「ラヴィ、どこに行けばいい?」

ラヴィの声色を聞いて本当にやばいと察した私はラヴィに向かって叫んだ。

「どこか遠く!こいつが来ないどこか遠くに!」

ラヴィ今()()()って言った?

あいつじゃないってことはそれはずっと近くに...


ゾクッ.....


(逃げて涼香!!)

背筋に凍るような感覚を受けた途端、キィン、と耳鳴りがするほどの大声でアルヴァちゃんが私の頭の中で叫んだ。


「転移!!!」


そう叫んだ途端、私達はよく分からない草原に尻もちをついていた。


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