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ガチレズ教師が吸血鬼になったら。  作者: 猫又二丁目
第4章 クエスト~ヴァルバナの宝花の採取~編
18/29

悲劇

今回ちょっと、いや、結構グロテスクです。

苦手な方は最後だけ読んで下さい。


「……どういう事。」

今朝、おかしなくらいに静まっている冷たい空気を浴びながら、転移で昨晩の女の子二人に会いに行った。

ただ、二人が私の記憶をちゃんと消せているかの確認だけだった。

ラヴィと真神竜様はまだ私の作った結界のようなものの中でテントを建てて寝ている。

テントじゃなくて、普通に空間魔法の中で寝れるんだけど、さすがにそれは凄すぎるっぽいのでやめておいた。


「……ほんと、何があったのよ。」


ぽつりと呟いたその一言は吹雪の音によってかき消された。

私の目の前には肉の塊、もとい昨日の晩私が血を吸った二人の女の死体が無造作に転がっていた。

その死体は一言で表すと『汚い』。

吸血鬼になってから、血液や死体を見たり、人を殺したりしても、そこまでの恐怖や不安、悪寒などはしなかった。


二人の女は裸で、剣ではなく、刀で切られたような切り傷が胸から腹にかけて刻まれ、片方の女は片腕が切り離されていた。

剣と刀、違いは斬れ味だ。この世界の剣はそれこそ漫画やアニメに出てくるような見た目だが、切る、と言うより潰す、という感じだ。そりゃあ、指に軽く当てただけでプツリとは切れるが、私が今まで見てきたような刃物とは違う。前世で私が人を殺すために見てきた剣は、テレビや写真などで近くで見れるものしか知らない。だが、その剣は斬れ味は軽く振るうだけで、圧縮された藁が真っ二つになるほどだ。人に本気で振るうと真っ二つになるんじゃないか、というほどのもの。


チラリと女の切り離された腕を見る。

断面が綺麗すぎるのだ。本当に、この世界の剣ではほぼ不可能な程の綺麗な断面。寒さで血が固まってよくは見えないが、綺麗すぎる。

それこそ、()()()()()()()()()()


「……この世界に日本刀の職人がいるとすれば?」

いや、まて。その考えはおかしい。アルヴァちゃんが言ってたが、この世界に前世の記憶を持っていくことは出来ない。技術も全て忘れ去られていたら、どう考えても不可能だ。それに、多分この世界には、目に見える物を持っていくことはできないと思う。もしかしたら出来るのかもしれないけれど、多分無理だと思う。少し前に聞いてみた時に、私が前世の姿のままでこちらの世界に転生、いや、転移出来たのは私が記憶があるかららしい。普通の場合は赤ちゃんの頃からやり直すらしいが、そうなると、前世の物や、目に見えるものを持ってくるのは不可能に限りなく近い。


「……魔法。」


魔法で作った剣ならどうだろう。刀程の斬れ味を出せるのかもしれない。

目を静かに瞑り、頭で斬れ味の良い刀を思い浮かべる。魔力を圧縮させ、目に見えるように、手に取れるように想像する。

手に固く、冷たい感触がじんわりと伝わる。


「出来た……!」

ほぼ透明で、少し黒く光る刀のようなものが出来た。

「斬れ味は……と。」

近くの木に本気で振るう。


切った。そんな感触はあったが、木の見た目は変わらない。

「……どういうことよ。」

木に体を預け、ため息をはこうとした時に、ズッと体が後方へふらついた。

「へ?……ちょっ……きゃぁぁぁ!?」

何とか体制を整えると、木が真っ二つに切り離れていた。

これだ。彼女たちを殺したのは多分魔法を使った剣を操る男だ。

それに複数人。私が彼女たちに会った時にはまだピンピンしていたから、それから1時間後くらい……か。雪に染み込んだ血はまだ新しい。

ということはこの近くにまだ居る。早めに終わらさないと鉢合わせる。ラヴィ達なら全然欠片も心配いらないことは知ってるけれども、やはりそんな男共を見させるのは気が気じゃない。

男達、と言ったのは彼女達の遺体から読み取ったことだ。

初めに言ったように、このふたつの死体は()なのだ。少し、遺体のソコを見てみたけれど、血が流れていたり、白い液体が腹の上で凍っていたりと、まぁ、すぐに状況は分かった。

「…鉢合わせたくないのに……ねぇ。」

ほんとに、私って偽善者なのかしら。彼女たちの死体を見てもなんにも感じなかった。ただ、私の喉の乾きを癒してくれた人達なのになぁ、と思っただけだった。

なのに、なんでこんなにもムカつくんだろう。

この人達を犯し、殺した男達は私が殺さないといけない気がする。彼女たちは私の命の恩人とまでは行かないが、恩人なんだ。それをこうも汚されちゃ腹がたたないのもおかしい話だ。


「感知」

……あぁ、いた。いち、にー……全員で7人。

サクッと終わらしてラヴィ達のところへ戻らないと。

「転移」

やはり転移の時の空間が歪むような、ズレるような感じは良いものでは無い。ぶっちゃけ嫌いだ。


「でもよ、ランスロットあの女達はすげぇ良かったぜ?」

「俺はそんな良くなかったな。顔は美人だったけど体はイマイチだ。」

「ひははははははっ!!ひでぇ!あんな無惨に殺しておいてよォ?」

「ズバーン!とな!あの女達も痛みもなく逝けたんじゃねー?ぎゃはははっ!」

「俺は犯してる時のあの泣き顔サイコーだっ……」


これ以上は聞いてられない。

なんなんだこいつら。ほんとに頭がいかれてる。狂ってる。気持ち悪い。殺したい。潰したい。抉りたい。泣き喚け。苦しめ。


あと6匹。このランスロットとか言う奴が魔法剣使いか。

「がぎゃっ!」

「あと5匹。」

闇魔法を使って空中を黒く染める。

私は暗闇でも目が冴える。お前らが戸惑ってる無様な顔もよく見える。

もう一度、闇の魔力を固まらせ、大きな手を作る。

「潰してあげるわ。」

1人を魔法の手で掴んで持ち上げる。

「いやだぁぁぁぁぁ!?なんだよこれ!どうなってんだよ!どうなってんだよぉぉぉぉぉ!?」

「喚くな、うるさい。」

そのまま、圧迫させ、男の体をぐちゅりと潰す。

「あぁ……血が飛んできちゃったわ。これじゃあラヴィと真神竜様に会えないじゃない。」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

狂ったように男達の中の1人がオノを振り回す。

「違う、違う。こっちよこっち。」

「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!ぶっころぉおおぉ……す……へぎゅっ……。」

ぶちゃりと大きな水音を鳴らし、男は空中を舞い、ボトリと嫌な音を立てて地面に倒れた。

「おい!?おい!?ザキラス!?」

「へぇ、さっきの男はザキラスって言うのね。」

焦る男の耳元で呟くと、ガクガクと先程よりももっと震えだし、ついにはじゅわ、と失禁しだした。

「…汚物が。」

男の頭を、指先で触れると、頭がぶちゅっと粉々になり、血が吹き飛ぶ。

「……」

「あと3人。」

先程から、ランスロットは静かに目を開けている。

「あ……あ……。」

「なに、大ヒットジブリ映画のカオがナイ子になっちゃった?」

虎の獣人にやったように、50本程の刃物を宙に浮かし、震える男に向けて、飛ばす。

「残りの2人は叫ばないのね。ねぇ、ランスロットさん?私の恩人を殺してくれたみたいだけど。」

「……ふんっ!」

「お前邪魔なんだけど?」

目が冴えてきたのか、私に向かって、大剣を振ってくる。それが当たる前に大男の体を灰に変え、酸素に変える。

「生命は大気に戻らなきゃ。」

そう言って、足元に転がる死体を全て消し去る。

「……お前何者だ。」

「お前に名乗る名前はないわ。」

「……ほう。強さは化け物級だな。姿も美しい。強い女は美しい。」

「黙れブス。気持ちわりぃんだよ。なに口説いてんだよ?時間稼ぎ?無駄だから。あんた弱いし。」

「戦ってもないくせによく言う……!」

……ほんとにどういうことなのかしら。魔法剣じゃなくて本物の日本刀だなんて。

「その刀、どこで手に入れたの。」

「これを知っているのか?」

「ええ。あなたも前は知っていたはずよ。」

「……どういうことだ。」

「いいからどこで手に入れたのよ。」

「……アイテムボックスだ。俺は昔から容量は小さいものの空間魔法が使えた。そこに何故か入っていたんだ。ぽつりと、これだけが。」

「……あぁ!その手があったわね!なんで思いつかなかったのかしら。」

そうだ、空間魔法が使えたら、こっちの世界でも持って行けるじゃないの!

「…次はこちらの質問だ。答えろ。先程の言葉はどういう意味だ。」

「あなたの記憶が消された。それだけ。」

「意味がわからん!ちゃんと答えろ!」

周りを囲っていた闇魔法を解く。

「…。」

「……な…どういう…ことだ。」

面白くなってきた。恩人には恩を返さないと。

「ふふっ……どうしたのよ。そんな顔して?」

「あいつらの死体をどこにやった!!」

「なになに、怖いわね。あなた男のケツでも犯すつもり?」

「ふざけるなっ!」

ギャグも聞かない。面白くないわ。

「生命は大気に戻らなきゃ。ね?」

「……まて、いみが……わからん……。」

本当は分かってるけど、拒絶している。そんな感じかしら。

「この空気中に浮いてるわよ?酸素になって、ね?」

「……な…」

「あなたも直ぐに魂ごと消しされるわよ。」

そう言うと、そろそろ自分が人間でも、獣人でも、この世界にいてはならないものの目の前にいるのが分かったのか、顔から血の気がさっていった。

「……ひ…怪物……!」

ランスロットは腰を抜かして、私を見てがくがくと震える。先程まではあんなに余裕だったのに。

「私から見たらあんたが一番怪物よ。」

そう言って、魔力を圧縮させ、作り上げた刀で、彼の腕を真っ二つに切る。

「……へ?」

「……ん?どうしたのよ。そんな有り得ないって顔して。あなたがしたことを真似しただけよ?」

「あぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!?!?」

恐怖に頭を支配された生き物は狂うのか。白目を向いて、顔を真っ赤にし、ただただ叫ぶ人形のようだ。

「……うるさいわね。」

胸から腹にかけて、中の臓器を全て真っ二つにし、綺麗に裂いていく。ゆっくり、ゆっくりと。彼女たちのような傷跡を作るために。

「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

心臓を切ったのにそれでもなお叫ぶ。

「心臓を切っても生きるのね。残酷よね、生きたい意欲って。」

そう言って、段々と小さくなる叫び声を聞きながら、腹の奥の腸まで、全部綺麗に裂いていく。

「……ぁ……ぁぁ…………。」

「…消えて。」

サラサラと、灰になってから透明になって消えていく。

先程まで、7人もの男がいたなんて、信じられないほどに静かで、生き物なんて何もなかったように。

足元には零れたビールが雪を汚していた。


「転移。」

もう一度私の渇きを救ってくれた女の子二人のもとに戻る。

「……こういう時、どうすればいいんだろ。」

酸素に変えるのはどうかと思うし、土に埋めるったって雪が積もってて難しいし。

「そうだ。」

空間魔法から、服を取り出し、それを魔法で裂いていく。

ちょうど四角に切ったところで、幼稚園の時に習ったチューリップの折り方を試す。

「それで、ここの枝をぶっ刺せば……」

不格好だけど、ちゃんとチューリップに見える様な気もする。

「ありがとうございました。ほんとにごめんなさい。」

そう言って手を合わせた。

「服って綺麗にできるのかな。服に着いた血、酸素に戻って。」

…………無理なのね。

「どうしよう……。」

「ほんと馬鹿だね。僕を呼べばいいのに。」

……え、待って。うそ。

「アルヴァ……ちゃ……。」

「へへっ!ただいまりょーか!寂しかった?」

アルヴァちゃんは、眩しい朝日をバックに天使の笑顔を私に向けた。

「……っおかえり。すっごい寂しかった…。」

そう言って、アルヴァちゃんに抱きつくと、アルヴァちゃんは私をあやす様に背中をぽんぽんと叩いた。

「愛してるよ……涼香…。」

アルヴァちゃんも寂しかったのか、私の服をぎゅっと握りしめ、私の首元にキスをした。

アルヴァちゃんおかえりぃぃぃ……よかった、やっとアルヴァちゃんと涼香のイチャイチャかける!最近シリアス多めやったからちょっと沈んでた……。読者様もそろそろ明るくなってもええんちゃうん?って思ってたと思うので、次回は明るめでいきます!

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