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ガチレズ教師が吸血鬼になったら。  作者: 猫又二丁目
第4章 クエスト~ヴァルバナの宝花の採取~編
17/29

※夏香目線 ~大切な人に会うために。~

遅れました〜!ほんとにすみません!


※大変申し訳ありません。初めに書いていた「夏風目線」というのは、「夏風」ではなく、「夏香」です。

3/22 16:48 訂正しました。

「……ここ…どこなの…!?」

私は何故か、前方方位すべてが真っ白、いや、色がついているのかもわからない空間にポツリと座っていた。

「…こんにちは。結城 夏香さん?」

目の前には、長い金髪をなびかせ、少し垂れ下がった目をニンマリと細めた綺麗な女の子がいた。頭には金色の眩しい輪っかをつけ、背中には体に似合わない大きな羽。汚れ1つない真っ白なワンピースを纏い、挑発的に足を組み、何故か浮いている王座のような椅子に座っている。見たところの年齢にしては比較的小さめの体だが、堂々と座っているその趣は人間風情の私では表せないほどの、なにか大きなもので、ドシリという効果音がつきそうな程だ。


「……あなたは…?」

まるでテンプレの回答のように違和感のない質問をした。

ピクリと形のいい眉を不機嫌そうに動かし、何か考えてから艶めかしく光る唇を震わせた。

「……僕は…。」

僕、そう言った彼女は凄く、()()世界に似合わないように感じた。

この世界、と言っても私が少し前まで、いた世界なのだが。

信じられないかもしれないけど、私はここにはいなかったが、いつの間にか、ここにいた、という状況だ。何を言ってるのかは分からないかもしれないけど、私も状況が全くと言っていいほど解釈出来てないので、詳しい解説とかは勘弁して欲しい。


「……っ、僕はアルヴァだ。君を転生させるために君の目の前に現れたんだ。」

少し言い淀んでから、淡々と話し出した。


……ん?は?てんせー?

「何言ってんの?」

あ、しまった。そう思っても手遅れ、もう言ってしまった。昔からの悪い癖だ。仲のいい子以外には、脅しを含んだ低い声で喋ってしまう。挑発的、と言う人もいれば、恫喝的、と言う人もいる。

私のそんな言葉を聞く人は、眉間にシワをよせ、好感を持つような顔はしない。まあ、当たり前だ。

だけど、この人はちがった。眉を八の字にして、困ったように笑うと、

「相変わらずだね。」

と、ボソリと言った。

この人は私を前から知っている。そう確信できた。この声、この喋り方。困ったようなこの顔。温かい声。私を見る瞳。すべて知っている。


だけど、今は思い出せない。だってここが死後の世界だって分かったから。分かってしまったから。彼女の姿をみて分かればいいものの、混乱していてどこ、どこ、と?マークばかりが浮かんでいた。だが、いちど冷静になってみると、馬鹿みたいにするりと答えが出た。


『私は死んだんだ。そして今、この人が言うように新しい世界に生まれさせられようとしている。転生するんだ。』


と。ただそれだけが分かった途端、あの人に会いたい。今すぐに会いたい。と思った。生前では絶対に無理だったこと。もう会えないと諦めていた望み。だけど、死んだ私はその望みを叶えられる。


その事実に歓喜した。狂ったように笑えるほどに。嬉しい。もう一度あの人に会える。また、あの笑顔を見れる。あの人の体に触れられる。今すぐ会いたい。会えるんだ。やっと。死んでよかった。嬉しい。もう一度でも死ねるほどに嬉しい。


「……あはははっ!ははははは!!」


「……!?」


急に笑い出す私を頭のおかしなやつだ、とでも思ったのだろう。ギョッとした顔を向けたが、どうでもいい。早く。早く会いたい。今の時間も惜しい。これからもあの人の隣にいる時間が長くなる為にも今すぐあの人に会いたい。


「おねー、早く会いたいよぉ。」

自分でも気持ち悪いくらいに甘ったるい声が出た。

「……君はどこに転生したいの?」

苦虫を噛み潰したような顔をして、私から目をそらす。

「おねーのもとに!結城 涼香!私の姉なんです!私はどんな所でもいいです!ただ私はおねーに会いたい!」

祈願するように、死にかけの村人が狂ったように神に生を、望むように。

「…分かった。姿、種類、能力、スキル、全てを決めれるほどに君のポイントは高いんだ。決めて。好きな物を、求めて、自分の強さを。護れるように。自分を、大切な人を。」


「……護れるように。私は人間でありたい。最強がいい。誰にも負けないくらいに。おねーを護れるように。」

おねーを護る。鳴ちゃんがいなくなった時のあのおねーには絶対に戻らせないように。


「それは無理だよ。」

「……は?」

「君じゃ涼香は護れない。涼香を護れるのは僕一人だ。」

意味が分からない。私じゃ護れない?おねーを護れるのはこいつだけ?

「ふざけるな。お前おねーのなんなの?」

「彼女だよ。」

「……はぁ?おねーの彼女は…一人だけだ…。」

「その一人が私なんだよ。君には渡さない。涼香の初めては君に奪われたようだけど。それでも涼香のキスは、涼香の初恋は僕だ!護らせない。君が涼香の妹だとしても。」

「……なに…いってんの?」

信じられない。いや、信じたくない。

「……もう離れない。泣かせない。()は、もう絶対に涼香を一人になんかしない。」

「……鳴……ちゃ…」

知ってる。知ってる。蓋をしろ。記憶を消せ。この人には勝てない。だめだ。逃げろ。離れろ。


壊せ。


脳が警告する。止まれ、と。


それに反して体は前へ前へと進む。


言ってたのに。鳴ちゃんが死んだ時のような顔はもうさせないと。まさか自分でおねーの希望を壊す時が来るとは思わなかった。だけど、駄目なんだ。私が、私だけがおねーの大切な人でありたい。


「……まったく、人間っていうのは強欲だよね。」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「ね?なっちゃん。」


呼ばないで。その名前で呼ばないで。これ以上、私からおねーを取らないで。


ポツリと真っ白な雪が足元に落ちた。その瞬間体が裂けるような痛みが身体中を駆け巡った。




「ひっ……うぅ……ぐずっ……どうして、どうしてなの……」


「なにが?」


あくまで澄ましたように。他人のように。知らないように。


「……鳴ちゃん、なんで人間じゃないの?」


「…僕はもう死にたくないなぁ。ALSなんてもうなりたくないし、涼香を悲しませたくないし。……君に涼香を奪われるなんてもってのほかだ。」


鳴ちゃんとは思えない程冷たくて、震えるほどの重い声を出した。人間からアルヴァという天使に生まれ変わった鳴ちゃんは、前の鳴ちゃんとは打って変わった別人だった。


「……鳴ちゃんは、独占欲なんて、強くなかった。」


「鳴ってだれ?僕はアルヴァだ。涼香は僕のものだし、僕は涼香だけのものだ。」


冷たく見下ろす金色の瞳に映る私は、真っ赤で、醜い。


「……痛いよ。」


「……直ぐに治すね。…ごめんね、なっちゃん。」


手から淡い緑の光が優しく零れる。私の体に落ちた瞬間に私の体の隅々まで癒してくれる。

「ほんとに、天使なんだなぁ……。」

「向こうの世界なら、出来る人もいるよ。」

「……ねえ、おねーは強い?」

「強いよ。君なんて足元に及ばないくらい。僕でも負けるかもしれないくらい。」

「……会いたいよぉ、おねぇ。」

「会わせるよ。涼香も会いたがってる。」

……ん?会っていいの!?さっき涼香は僕のものだ、とか言ってたけどいいのかな?

「いいんだよ別に。涼香が笑うならそれがいい。第一なっちゃんなんかに負ける気はミジンコ程度もしないけど?」

「心読まないで!バカ天使!」

「ふふふっ、おひさ、なっちゃん。」

「今更〜?」

「…元気してた?おばさんは?」

「……元気だったよ。それなりに。お母さんも元気だよ。前から無表情だったのが、もっと無表情になったけど、いつもの優しいお母さんだよ。」

「そっか。」

「……私はおねーが死んでから何ヶ月しか経ってなかったけどさ、その期間が何十年ってほどに苦しかったし寂しかった。おねーは鳴ちゃんが死んだ後、馬鹿みたいに痩せたの。鳴ちゃんが最後に笑ったせいで、人の笑顔を見ると泣いてた。」

「……!笑顔……?」

「…鳴ちゃん、私は鳴ちゃんの事もお姉ちゃんだと思ってる。だけど、私はすっごい恨んでるんだからね。」

「…うん。」

「今すぐ、おねーに会える?」

「……ちょっと待ってね、…………。」

鳴ちゃ……いや、アルヴァさんは目を瞑り、集中する。

「……今すぐは無理だね。」

「え!?なんで?」

「涼香雪山にいるから。急になっちゃんをそこに移動させたら……分かるよね?」

察した。あーあ。まだ会えないのかー。

「なっちゃん、じゃなくて、夏香には涼香が降りた所に転生させよう。見た目はそのままだから見つけれると思うよ。多分。」

多分ってなに……。まぁ、愛さえあれば何とかなる。会えるんだ。会える。おねーにやっと。嬉しくて頭がおかしくなりそうだ。

「アルヴァさんが強いと思うようにそのポイントやらをふって。種族は人間で。見た目はそのままで。」

もう一度、アルヴァさんに伝える。おねーもきっと人間だ。そう見込んだ私は決意した。

「分かった。もう飛ぶ?」

「……うん。ファンタジー楽しんでくる。」

「行ってらっしゃい。」

その声を聞いた後、今いる空間が眩く光った。

その光をかいくぐった奥にいるアルヴァさん(鳴ちゃん)の顔はきっと、私の知ってる優しい天使のような笑顔だ。


おねー、今から会いに(愛に)行き(生き)ます。

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