初対面で気に入ったのじゃ。
どうも猫又です。無事テストから開放されたので、どんどん投稿させていただきます!
ギルドで受注したクエストが終わった後の帰り道、涼香は不穏な空気を感じとっていた。
それも巨大な個体で魔力もやばい。その個体から溢れ出てしまったのか、魔力が垂れ流し状態である。
……んー、これマジやばいんじゃないかしら?
「…ねぇ涼香。待って。」
不安そうな顔で私の服の裾を震えた指ででにぎる。
「…気付いた〜?あっはは…なんか、嫌な感じがするわね。」
そう言いながらもどんどんその巨大な個体に近ずいて行く。
どんどん近ずいて行く涼香をラヴィは全力で止めるが
ちから及ばずズリズリと引きずられていく。
「涼香…!ダメっホントに死んじゃうわよ……!?」
涙目でガチガチと歯を鳴らしながら訴えるラヴィ。
こんな可愛い顔されたら言うこと聞きたくなるんだけど、今回はどうしても聞けないのだ。
なんでか?そんなの決まってるじゃない。
「だって、面白そうなんだもの…。」
そう、こんなにも威嚇してくる魔物は初めてなんだもの。このまま道をずらして帰っても気になって夜も眠れないわよ。てか、夜に抜け出して会いに行くわよ。
「……面白い?どこが!?なにをいってるのよ!こんなの勝てない!面白半分で行って死んだ冒険者なんて500ほどいるのよ!?」
「半分じゃなくて全部よ。」
さてと、あと、200メートル先くらいかな〜。
「…やめて!お願い!」
……んー、ラヴィは確かに危険かもしれないわね。
「じゃあラヴィ、空間魔法で、私の空間の中にいてくれないかしら。もし私が死んでもラヴィは死なないし、私が死んだあとに出られるから。」
そう言ってラヴィの頭を数回ポンポンと撫でる。
「…ふざけないでよ!なにそれ!?馬鹿にしてるの!?」
「だってラヴィは私を信じられないんでしょう?怖いなら隠れていてもいいし、私を盾にしてもいいわよ?まぁ、信じられない盾なんて使わないでしょうけど。」
んー、我ながら子供のようなワガママだな。でもどうしても行きたいのだ。面白そうだし、それにアレも私の事を待っているのだろうから。
「…信じてるけど、でも危ないし…。」
ラヴィは私のこと心配しているだけということも十分に分かっている。
「…怪我はしないしラヴィにもさせない。信じて、ラヴィ。」
出来るだけ優しく、全てを包むように抱く。
ラヴィからはフワリと金木犀のような香りがした。
「…っ分かったわよ!信じればいいんでしょ!?」
そう言って私の腕にぎゅっと抱きついて、魔力を垂れ流している個体に向かって歩き出した。
あ〜、やばい可愛い。好きだ…抱きたい…なんかこういう所、鳴と似てるのよね……。
(全然似てないから!!やめてよ…馬鹿なこと言わないで…!)
……え?アルヴァちゃん…?
(…浮気だ…バカ涼香…。)
……ご、ごめん。
(…っ…!)
…?
「りょ、涼香……。あれ……まさか……。」
様子のおかしいアルヴァちゃんのことを探っていると、ラヴィが指をさして、50メートルくらい先のあれ、前世でよく見る、あのドラゴンが口からフシューっと息を吐きながらこちらを向き、目を細めた。
「……ドラゴンじゃない!」
異世界と言ったらドラゴンよね。うん、やっぱり来てよかった!
「そ……んな…伝説の…ドラゴンがどうして……!?」
ラヴィは信じられない、といった様子で目を大きく見開き祈るように両手を強く握る。
……伝説好きだなー。
「…我は真竜神と呼ばれ10000年前から恐れられていた神の一人だ。」
「あ、一匹じゃなくて一人って数え方なのね。ていうか結構急に自己紹介始まるわね。」
「……ひ、一人だ。急ですまん…。」
狼狽えた様子で大きな口から低い声を出す。
「…はぁ、男か〜。まぁいいや、続けて。」
「…?お、おう。……そ、それでだな、お主にここまで来てもらう為に魔力を出していたのだが、ほんとに来るとは……。」
真っ黒な身体に真っ黒な角、大きな爪に大きな牙。そして、なんとも綺麗なサファイア色の透き通った瞳。
……溢れ出るラスボス感。確かにこりゃ、誰も近づこうとは思わないだろう。
「…なんで、私に来てもらいたかったの?」
んー、ドラゴンに関わった訳でもないし…なんで?
「…単刀直入に問おう、お主何者だ。」
「……何者…とは?」
「…その馬鹿げた魔力量に禍々しい妖気、それに……黒く渦巻いている貴様の中の魔力に満ちた天使の血をどう説明する気だ…?」
……天使って…アルヴァちゃん…だよね。
(また面倒なヤツに目をつけられたね。私と涼香がそういう関係だってこと、神にバレたら私は消滅させられちゃうし。)
……消滅!?ちょっと待って……?じゃあどうするの…!?
(……僕を守ってね、涼香。)
……ええええええええええ!?!?!?
ちょ、待って嘘でしょ……。
「はぁ……あーもう面倒だから倒させて。」
頭を右手で押さえながら面倒くさそうに目を細く開ける。
真っ黒な魔法陣からマグマの球が無数に出てきたあと、真竜神に向けて大量に発射された。
「ちょ、ちょ、ちょ、待て待て待て待て!?」
そりゃあダッシュで逃げる逃げる。後ろにジュワァァァと言いながら溶かされた土を見てみるみる真っ青になり、落ちてくるマグマから涙目で逃げまくる真竜神様。うーん、なかなかやるわね。
「…すばしっこいのってウザイ…。」
全部のマグマが放たれてから、木の影に隠れて(図体が大きすぎて半分以上がはみでている)震えた声で、
「……か、かか、神になんてことをぉ……。」
と言った。
「…り、涼香あんた神に何してんの…。」
数十メートル離れた木の影に隠れて、ラヴィが震えながら言う。
「…んー、で、結局真竜神様とやらはなにしにきたの?私無宗教だから神とかどーでもいいんだけど。」
信じるっちゃ信じるけど。
「…お、お、お主に嫁ぎたいのじゃ!!」
真っ黒の顔が真っ赤に染まって目をくの字にしながら恥ずかしそうに叫ぶ。
「無理。」
うん、無理。ニートで自称神で男。男よ?うん、無理。
「なっなんでじゃ!?」
「神の嫁とか面倒くさいしあんた男だし。」
「……な、なんじゃと…?」
……あー、わしに嫁がぬのなら〜みたいな感じかなー、面倒くさ。
「わっわしが男!?!?」
「……ん?」
???????????
「わしは立派な淑女じゃ!!!」
「……オカマ?」
「違うわ!」
「……声完全に男じゃない?」
「ドラゴンはこういう体質なのじゃ!!」
「心は女の人……?」
「ちっっっっっがぁぁぁぁぁあう!!!」
そう叫んだ後ぼしゅんっと白い煙がたった後、真竜神様とやらは消えていた。
代わりにといえばいいのか、角が生えた黒髪でサファイア色の透き通った瞳を持ったナイスボディのお姉さんが立っていた。
「……は?」
「……わかったか!?わしは女じゃ!立派な淑女じゃ!!!」
ポヨンっと胸を手でたたく。
「…え?真竜神様?」
…どゆこと?
「やっと信じたか!?なら、わしをお主のよ、よよよ、嫁にしてくれ!」
白い肌が、真っ赤に染まり、鋭い目で私を見つめる。
「…マジで女の子なの?」
「だからそうじゃって言っとるじゃろ!!」
……ど、どちゃくそタイプなのだけど。
(りょーーーかーーーぁぁ?)
「ひっ…!」
ググッとお腹の中が圧迫される。体中の血液がこれでもかという程早く流れ、どくどくと心臓が馬鹿みたいに早く動き出す。そして、急に血液の一部が消え、ガクガクと揺すられたように視界がうねる。
「……どっどうしたの涼香!?大丈夫!?」
ラヴィが走って駆けつけ、背中を擦る。
真竜神様はあたふたと焦った様子で私の周りをウロウロとする。
まっ……て、アルヴァちゃん……これマジ……やば…。
「……はっ、ぐっぅ……ぅぅ……っっぷはぁっ!!」
全身の血液が元に戻り、心臓の動きも徐々にゆっくりに変わる。
……あ、焦ったー。死ぬかと思ったー。
(いい加減僕だけを見てよね。)
……!今のセリフはドキドキした……。
(いつもはドキドキしてないんだ〜ふーーん。)
いや……そういう訳じゃ…。
「涼香!?大丈夫なの!?!?」
ラヴィが真っ青な顔で私の肩を掴む。
「…ごめんね、大丈夫大丈夫。」
「ほんとに大丈夫なのか……?なんかの病気なのか……?」
涙目で、真竜神様が私の顔を覗き込む。
「…真竜神様ごめん。嫁には出来ない。けど、一緒に旅するくらいなら構わないんだけど、どうかしら?」
「……私は反対…。」
真竜神様が口を開こうとした時、横からラヴィが暗い声で言う。
「……どうして?」
「だって、そんなの…真竜神様に…涼香が取られちゃう…わ…。」
真っ赤な顔して、口元を腕で隠して、ぽそぽそと言う。
「…可愛い。」
(…おい。)
あっ違うの!つい…じゃなくて!その!
「なっ……なっ……何言ってんの!?!?」
「…えーと、その、つい。」
(やっぱつい、なのかよ浮気者。)
いや……その…えと……。
「…わしも行く。ラヴィは今まで涼香と一緒にいたんじゃろ…わしだって……一緒にいたいもん……。」
人差し指の先っぽ同士を合わせ、クルクルしたり、くいくいしたり、恥ずかしそうに俯く真竜神様。
……真竜神様は私の何をそんなに気に入ったの。
「……美少女3人にアプローチされるとか尊い。」
そう言って私は静かに合掌した。