私の女神自慢
どうも、最近親友がまた彼ピッピつくって遊んでもらえなくて寂しげな猫又です...(><)
今回は初っ端からラヴィ目線で書いていきます。
「...え?」
ラヴィの情けない声が風の音でかき消される。
1時間前
「...うっ...ぇ...。」
私の横で涼香が口を抑えてうずくまる。
「...ちょっと、大丈夫?」
涼香の背中をさすってやると、真っ青な顔をして、掌をこちらに向けへらっと笑った。
本当に馬車だめなのね...。
「...」
...涼香は強いっていうのは知ってる。だけど、六角オウガを気軽に倒せるほどの実力はないと思う。何故この人はこんなにも無茶なクエストを受けたんだろう。
心の中で、一つため息をついた。
「...ふぅ、ん、いける。なんくるないさ〜。」
涼香は眉間に皺を寄せて、全然いけてない顔色でフラフラと立つ。
「なんくるないさ?なによそれ。」
聞いたこともない単語に?マークをつける。もしかしたら涼香の故郷なのかもしれない。
少しだけでも、謎に包まれた涼香を知ることができるかもしれない。
「え...!?なんくるないさ知らないの!?え...嘘!?.....あ、まぁ、沖縄ないし当たり前かしら...。」
さいごにボソッとオキナ...?みたいなこと言ってたけど、なんくるないさってそんなに有名なの?
「...まぁいいわ。それより、どうするの。こんな薄暗い森で。六角オウガがどこにいるか分かんないじゃない。」
まったく、こんな所でつまずくなんて。
「...あぁ、ちょっとまって。これなら...。」
そう言って、涼香は静かに目を瞑って、急にぱっちりと目を開けた。
すると、手を前に出すと、魔法陣が大きく浮かび上がり、空に向けて増大しだした。
「...なっ...なにこれ...!」
あまりの光景に目を疑った。魔法陣、それは魔法を編み出すラムデ語が何万何億文字と書かれた陣で、その色の普通は、火が赤、水が青、光が黄色で闇が紫、風が緑で字や陣が描かれている。
「...東南方向24メートル先、2匹。西の方向、620メートル先1匹。...おっけ、もういける。」
そう言ってから、腰に手を当てて、ほっとしたように息を吐く。
「...おっけ、じゃないわよぉぉぉぉ!?何今の魔法陣の色!?ぐちゃぐちゃに混ぜたような...どす黒い色は!?...あぁ、そうだった。そういえばホテルの獣人のときもだ...。」
私は頭を抱えた。私の頭にあの時と光景がよぎる。
「...え?」
「...あの時、あなたは誰かに命令するように『命令殺傷』と言ったわよね...。なんであの時、見たことも無い魔法が繰り出されて、なんの魔法陣も浮かばなかったのよ...。なんで...あの時気付かなかったのかしら...。」
そうだ、あの時は涼香の沈みように不安と心配で頭がいっぱいになって考えられなかった。
あの時、空間から急に刃物が数十個と浮かんで、一斉に動き出して爆発した。
「...えっと...それは〜...その...。」
「あんな魔法...私見たこともないし、本にも載ってなかった。あなたは...何者なの?」
涼香は魔王である、と言われても不思議はないぐらいに謎だらけの怪物だ。
「...私は...きゅ...んんんん...普通の...ヒューマンよ...。」
きゅ、そう言いかけてから目頭を押さえて、明らかな嘘を言った。
...やっぱり言ってくれないのね。
「...分かった。もういい。」
私は涼香が言った六角オウガの方向につま先を向ける。
「...ラヴィ...また、話すから。...私が決心するまで...待ってて...。」
そう言いながら、何故か花の香りがする体を私の体に押し付けながらきつく抱いてきた。
...こんなこと言われたら...諦めようにも諦められない。
「...できるだけ、早くしてよ...これ以上不安にさせないで...。」
そう言って私は拳を強く握った。
「...!来た。構えて。」
そう言って涼香は後から回していた腕をばっと離し、南東の方に向けて、見たことも無いようなポーズをとった。
「...こいっ!」
青白い頭から背中にかけて大きな角を生やしたイノシシが物凄い速度で走ってきた。その後ろからまた同じのが走ってきていた。その六角オウガは思ったよりも、ずっと体が大きく、四つん這いでも、3メートルはあるんじゃないか、というぐらいに図体がでかかった。
だめだ。これは勝てない。
「...はぁ、思ってたより遅いし弱そうだし、ガッカリだわ。」
涼香はそう言ってから、首を右に曲げ、コキン、といわせてから、左手の手のひらを前にかざし、右手に拳を握って、後ろに大きく引いた。
「...だめっ!涼香逃げ...」
私が庇おうとすると、涼香はにっと笑って高く飛び、六角オウガの額を右手で貫いた。
貫いた、なんていうと貫通したことを連想させるだろう。言い過ぎだ、という人もいるかもしれないが、涼香は本当に貫いた。原理は分からないが、殴った箇所から、真っ直ぐに、あの魔法陣のどす黒い色の線が、六角オウガの体内をめり込み、貫いた。
その後も、体制を崩したものの、バック転をし、避けながら体制を整えたあと、見たことが無い綺麗な振りの蹴りを六角オウガにお見舞した。
「...ふぅ、思ったより重かったけど言ってたよりも弱くないかしら...。」
「...はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?なっ、なっ、なっ、なんで!?え!?涼香...あ、あんた...。」
もう、涼香って本当に何者なの?もう意味わかんない。
「...ほら、早く角取るわよ。合計で12本取れたわね。」
そう言ってから、せかせかと六角オウガの角を取っていく。
「...いっそ清々しいわ。」
そう言って、ガンガンと頭に鳴り響く痛みを、和らげるために、頭に手をやって、大きなため息をついた。
「...ふぅ。全部取れたわね。」
「一度ギルドに戻っ...」
「にょいしょ。」
...は?
「...な...なにそれ...。」
涼香はふと、こちらを見て、作業を止めてから、ん?という顔をして、衝撃の言葉を放った。
「...空間魔法みたいなやつだけど。」
...こ、こいつサラッといいやがった...。
私が驚いてる間も、涼香はポイポイとどす黒い魔法陣の中に角を放り込んでいく。
「空間...ま...魔法...?」
なにそれ...いつの時代の伝説...?
「...ねぇ、もしかしてこれも異例なの...?」
さぁぁぁと、血の気を引きながらこちらに向けて言葉を放つ。
「...涼香って...馬鹿なの...?」
もう、こんなの苦笑いするしかないでしょう?
「...もうどうなってるのよ...アルヴァちゃん...。」
そう言って、涼香は頭を抱えた。
「...アルヴァ?」
誰それ。女よね...。
「...西の方行かなきゃ!」
馬鹿みたいに話をねじ曲げてから、わざとらしく、走った。
「...っ涼香のバカァァァァァァァ!」
捕まえて、思いっきり頬をぶつ。
スパァァァァァァァァァァァン...ッ!
森中に音が響きわたり、鳥がバサバサと飛んでいく音が聞こえた。
「...っっぎょめ...。」
そう言って、綺麗な顔が子供の泣く前の表情に激似な顔をした。
「...知らないもん。」
涼香を置いて、西の森へ歩く。
「...ごめんね...違うの。ラヴィのことは好きなん...ぅぐっ...ぐぐぐぐ...のぉぉぉ...痛いいいい。」
涼香はへにゃへにゃと笑って話していると、急に胸を押さえて苦しみ出した。
「どっ...どうしたの!?大丈夫!?涼香!」
「ふぐっ...ぐぐ...んん...ん、はぁはぁ...だ、大丈夫...。」
「ほんとに大丈夫!?街に一回戻ろう!?」
そう言って背中をさすると、涼香は天使の天罰だから...と冗談を言って笑った。
「...さ、行きましょう。」
...もうなんともなさそうだけど...大丈夫かし
ら...。
「...え、えぇ。まだ戦えそう...?」
顔を覗き込むと、私の頭をポンと叩いて、
「まだ余裕よ。」
と柔らかく笑った。
余裕というもののさすがに1時間足らずで終わるとは思わなかった...。
「...え?」
「...ん?どうかした?」
せかせかと、また六角オウガの角を空間魔法の陣に向かって投げる投げる。
「...今で...終わり?」
「...えぇ。楽勝だったわね。お疲れ様ラヴィ。」
「...私何もしてないんだけど。」
私は人差し指で自分を指す。
「隣に居てくれたじゃない。」
そう言って、女神のような笑顔で笑った。
...あぁぁぁもう、好き。