清美高校という学校について
まず、初めに僕の通う○○県立清美高校について語りたいと思う。
と言っても、別に歴史がどうだ、校風がどうだ、というような小難しい事ではなく、清美高校が周りから見たらどんな学校でどう見られているかということだ。
清美高校、この学校の周りからの評判を一言で言い表せば、「美女の多い高校」の一言に尽きるだろう。
当然、これは他校と正確な比較をしたわけではないし、美的感覚なんて個々人の主観的な意見でしかないのだが、在校生である僕こと高城誠から見ても付近の高校よりも美人が多いと思わなくもない。
まあ、その理由として、まず、女子の割合自体が高い事は挙げられるだろう。清美高校の制服は男女共にブレザーなのではあるが、この制服が何かのドラマのモデルになったらしく、女子の間では、この制服でイケメン王子様に壁ドンとか、顎クイとかをしてもらう事が憧れなのだそうだ。そのため、女子の受験数が自然と多くなってしまい、現在、清美高校での男女比は4:6となっている。
また、清美高校は市内では政陵高校、北高校、小湖高校に並ぶ、通称四校の一つとして知られており、市内の公立高校ではそれなりのブランド価値を持っていることもあるだろう。
まあ、実際の偏差値では政陵高校を断トツの頂点とし、次点に北高校、そのまた次点に小湖高校、わずかな差で清美高校であるというのが内情ではあるのだが・・・
しかし、いや、だからと言うべきか、清美高校はこの四校の中では最も高い倍率を誇っていた。秀才たちはこの学校の独特な授業方針のため、本来、清美高校を受けるには学力が足りない人も四校というブランドや制服に惹かれ、短期間の詰め込みにより受ける人が多いそうだ。
そのため、この清美高校はガリ勉タイプからヤンキーや不良と言わないまでもチャラいタイプと言えば、良いのだろうか?決して、難関大学の進学を主目的としていない人もこの学校にはそれなりに見受けられたりする。
それに、美女が多いと噂を聞き、「美人の彼女が欲しい」といった事を目的とする、お頭の出来は良いのにバカな奴や青春を謳歌したいがために入ってきた奴、文化祭のある行事が目的の奴など、個性豊かな面々も多く、中学校のバラエティー豊かさをそのまま受け継いだような学校なのである。
まあ、かくいう僕も中学の時、進路で北高校にギリギリで受かる程度の学力はあったのだが悩んだ結果、指定校狙いで清美高校を選んだが、その理由の一因として、「美女が多い」という評判に惹かれた節があるのだからあまり人のことはいえない。最も、僕の友人である柚木司沙のように彼女狙いが九割、つまり、お頭の出来は良いのにバカな奴とはさすがに同列であるとは思いたくないのではあるが・・・
さて、高校生と言えば、生物学上最も男性の一生の中で性欲の強い時期である、つまり、何が言いたいかと言うと彼女や恋愛の話に興味津々なお年頃というわけだ。「彼女できた?」や「どんな子がタイプ?」、といった話に困ったときに適当にする話題から公然の場では到底話せないような下世話な話題まで、それこそ男の欲望の数だけあるといっていいだろう。それ中には、「うちの学校で一番可愛いのは誰だと思う?」といった話題も含まれる。
当然、我が校の過去から現在に至るまでの男子生徒がこの話題をしないはずがなく、様々なグループが様々な視点から様々な状況で嬉々としてこの不真面目極まりない議題をこの上なく真面目に議論した結果、清美高校は伝統的に各学年1人ずつ候補を挙げ、この3人を世界三大美女ならぬ、学校三大美女として祀り上げているのである。
最も世界三大美女が日本において、クレオパトラ、楊貴妃、小野小町の三人というのが一般的な認識に対して、一部意見では小野小町がヘレネ―に変わったり、楊貴妃が虞美人に変わったりするように、学校三大美人が非公式な制度である以上、人によって多少の変化をするらしいが・・・
それでも、清美高校において一般的な三大美女は現在、三年生栗原愛里沙、二年生蒼井奏、1年生桜井舞彩、である。
実はこの三人、僕は面識があったりする。同じ学校に通っているのだから、普通に生活していても見かけることぐらいはあるだろう。それに彼女らは清美高校のみならず、周辺の高校ではそれなりに認知度を誇っている、それをもって面識とするのはさすがにおこがましい。それでは彼女らは清美高校全生徒と面識があることになってしまうのだから。
まあ、だからといって、友達というわけでもない。
彼女たちも、恐らくではあるのだが僕の名前ぐらいは知っているだろうという関係だ。先に述べておくが僕が学校内の有名人で清美高校で名前が知られており、これをもって、面識があるということでも断じてない。残念ながら、というべきか当たり前というべきか、僕の知名度はそれほどまでに高くない。
せいぜい、去年のクラスメイトと現在のクラスメイト、そこから派生してたまに話題に挙がればいいかなーぐらいである。
では、校内有名人である彼女らがなぜ僕を知っているのか。それは僕の友人、朝比奈隆盛に関係する。
さて、この朝比奈という男、校内ではどのような認識をされているかといえば、「平凡」の一言である。
中肉中背、顔は悪くもないが良くもない、学業も平均点の少し上だったり、すごく下だったりとお世辞にも秀才であるとは呼べず、運動神経は良いものの、かといって何かのスポーツに真面目に取り組んでいるわけではなし、そして、何か特技だったり、特殊能力だったりも持っていない。
そんな彼ではあるが、しかし、どうしてか我らが学園の誇る三人の美少女たち、栗原愛里沙、蒼井奏、桜井舞彩と友達であり、どうやら、彼女たちから僕が見た限りではあるが好意を持たれているらしいのだ。
当然、朝比奈の友人である僕としては彼が恋愛に悩んでいるのであれば相談して欲しいし、馴れ初めや進展状況を聞き、からかいたいものである。
しかし、朝比奈はそういう話しを嫌うらしく、僕の最も仲の良い男友達、つまり、親友と言っても過言ではなく、朝比奈からも最も仲の良い男友達であると自負している僕でも、関係を聞いても「友達」の一言であるし、馴れ初めを聞いても「彼女たちから聞いてくれ」で押し通されてしまうのである。さすがに友達でもない女性と恋バナができるほど僕は図太くないし、女性との対話スキルが高いわけでもない。
そんなわけで、僕は未だに朝比奈と彼女たちの関係を正確に把握できていないのである。
まあ、話は逸れてしまったが結局、清美高校がどんな学校かといえば、昨今、日本の社会問題になっている少子高齢化問題や年々増加しつつある初婚率に逆行し、平均出産率の高さと高度経済成長期ばりの平均初婚率を誇る日本の経済に優しい学校と言えるだろう。
最もこれが良いことなのか悪いことなのかは皆さんの判断に任せざる負えないのだが・・・