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第1節、2話 異世界で、アメフトで、バトル?その2

 ファンタズムボウル。それは神々から戦争を禁止された世界で、人間が編み出した代理戦争。ファンタズムボウルは半年間のシーズンで優勝した国家が、世界を統治する権利をえる。


 そして上位(プレーオフ)に進出した国家には、統治監視国として世界を統治する権利を獲得する。死者の出ない代理戦争。スポーツとしての娯楽。ファンタズムボウルは代理戦争でありながら、神や人々の熱狂的な支持を得たのだ。


 各国はチームを強化し優勝をする為に、様々な分野から超一流のプレイヤーを引き入れる。ある国は、カレッジファンタズムボウルのチャンピョンを。またある国はチェスのグラウンドマスター。


 他にも、総合格闘技(バトルアスリート)のチャンピョン。カウガール。シャーマン。アサシン。冒険者。魔法少女等、各分野の超一流を引き入れ、チームを強化していった。


 そしてここに、甲子園準優勝投手であるカズミ・サワタリが召喚をされる。異世界に召喚をされたカズミはカゼカミ国の選手として、異世界の代理戦争に巻き込まれていくのだった。







「やあやあみんな!ファンタズムボウルの、解説兼実況アナウンサーを勤めているサスガだよ」


「相棒兼、質問役のワカバだよー」


「本作の主人公、カズミ・サワタリ君が入団するチーム。カゼカミ・39ers(サーティナイナーズ)について紹介していこうと思います。ワカバ、ナイナーズについて紹介して貰おうか」


「ナイナーズ?うーん、30年以上毎年最下位付近ををウロチョロしているチームで、応援していることが苦行と茶化されるチームだよー」


「ナイナーズは前衛(ライン)が伝統的に弱く、どの位弱いかと言うと障子紙と揶揄される位に弱い。他にも、将来有望な選手をトレードに出したり。年棒が一定ラインを越えたらすぐ放出する」


「まあ、弱いチームの典型だよねー。まあ、選手を国益に変えてるから、カゼカミの国としては問題ないらしいけど、流石にファンはヤキモキしてるみたいだね。サスガちゃん」


「そんなナイナーズに入団した、主人公のカズミ君。彼の入団が、万年最下位のチームにどの様な化学変化を起こすのか?」


「では皆さんのお待ちかね、主人公カズミ・サワタリの活躍する本編。異世界代理戦争ファンタズムボウル、はじまりますー」







はあ・・・どうして、こうなったのだろう。


 異世界迷いこんだ少年、沢渡和巳(さわたりかずみ)は、何故かファンタズムボウルと言うスポーツをする事になるようだ。

まさか足下に転がって来たボウルを正確に投げ返した事が原因で、入団させられそうになると言うこのような事態を、誰が想像しただろうか?



「つまり僕は、ファンタズムボウルの選手として召喚された。

ファンタズムボウルで上位入賞か優勝をすると、その国には世界を統治する権利が与えられる。こんな認識でいいんですね」


 カズミの問いに、先ほどボウルを受け取った少女、イリーナが頷く。


「そういう事だ。もしチームに入ってくれれば、衣食住のバックアップを保証するし、給料も出る」


「もし僕が、断ると言ったらどうなりますか?」


「おかしいな?召喚門を潜るために、君はこの世界に来るために強く願ったはずだ、スポーツをやりたいと」


「な、何でそれを!」


赤髪の少女の言葉に、カズミは狼狽える。


「召喚門は、神と契約した者しか潜る事はできない。それが答えだよ」


「じゃあ・・・断る事も、元の世界に帰ることも・・・・・・」


「プレーオフに進出しワールドファンタズムボウルに進出すれば、1年。プレーオフに進出出来なければ、3年て所か」


「最長3年・・・こんな異世界で。嘘でしょ・・・・・・」


 カズミは悩んだ。提案を受け入れるか、断るか。もし断れば、何も知らない異世界に放り出されるだろうか。そうなれば、異世界のモンスターに襲われるか。追い剥ぎ等の強盗に会いのたれ死ぬか。


 最悪の事態だけは何とか回避しようと考える。最悪の事態を回避するには、入団しますと言えば良いのだが、それを決断することが出来ない。もう一つ、決断を鈍らせるものがあった。


僕はアメフト初心者だぞ、しかもボウルをさわったのが今日初めての。なのにこの人達は、僕みたいなド素人をQB(クォーターバック)と言う重要なポジションで、数時間後の試合に出場させようとしている・・・・・・


 カズミもアメフトをテレビで見たことはあったので、なんとなくだがQB(クォーターバック)の重要な事は理解していた。理解しているだけに、何故このド素人に重要なポジションを任せようとするのか、カズミには理解が出来なかったのだ。


「僕は・・・この競技についてはドのつく素人です。そんな僕に、何故重要なポジションを任せようとするのですか?

教えてください」


「何故重要なポジションを任せるか。君が暴風の中、パスを成功させたからだ」


「あれは偶然で。それに、僕よりもっとうまい人は居るでしょう」


「いないんだよ、あれ以上のパスを出来る選手は」


「え?」


「カゼカミの国は、風の吹き荒れる地。風の神に愛され、風の性質を理解しているものでなければ、このチームQB(クォーターバック)勤まらない。その条件を満たしているQB(クォーターバック)は、ここ10年現れていない。だから!私は君が欲しいんだ」


「君が、欲しい・・・か」


 カズミが野球を再開するときに、幼馴染みに言われた時の言葉を思いだす。あの時も、そんな風に言われたな。


「わかり・・・ました。お世話になります」


 赤髪の少女は上機嫌になり、カズミの肩をバンバンとたたく。


「よろしく!ああ、君の名前は?」


沢渡和巳(さわたりかずみ)です」


「よろしく、カズミ。そしてようこそ、ファンタズムの世界へ」



 場所は変わり、ここはロッカールーム。これから自己紹介を兼ねた、ミーティングを行うようだ。


 カズミはロッカールームの豪華さに圧倒されていた。プロなので個人のロッカーは当然たが、百人くらい居ても余裕のあるロッカールームの広さ。革製のソファーに、巨大なテレビにビデオデッキ。


「ここは、異世界なのか?それとも、元の世界のスタジアムなのか?」


 異世界とはほど遠い、機械仕掛けの施設。カズミが困惑するのも、無理は無かった。現実世界、いやそれ以上のテクノロジーで作られたスタジアムだと言うのは明白であったのだ。



 床にはチームのエンブレムだろうか?巨大なヤタガラスと、チーム名が、描かれている。


「なになに、カゼカミ・39ers(サーティナイナーズ)と、読めばいいのかな?」


「よし、全員集まったな!ではこれから、自己紹介を始めたいと思う」


 すると先ほどの、赤髪の少女が立ち上がった。


「私はイリーナ・バニンクだ。よろしく頼む」


 イリーナはカズミに握手を求めようと、手を差しだす。改めて見ると、白のビスチェにジャケットを羽織りショートパンツと言う薄着の装備だが、右足と右腕だけアーマーを装備している。

しかしこのイリーナと言う少女。彼女の胸部の膨らみ、それは人生に置いて、見た事の無い大きさ(・・・・・・・・・)だった。カズミは思わず、ビスチェの凄まじい膨らみをまじまじと見てしまいそうになる。


いや、これ以上見続けたら不味いだろう。ここはリラックスだ、リラックスをするんだ僕。


「どうしたんだ?サワタリ」


「いや、特に何も」


「それなら良いが」


 カズミの反応を見て、腑に落ちない表情を見せるイリーナ。


ふー、危なかった。あの3桁近くはあるであろう巨大な胸を見ていたの、多分ばれていないよな。多分・・・・・・けど、イリーナのファッションや武器を装備しているのを見ると、ここは異世界なのだなと、実感をするな。て言うか、女の子達の服装が軽装過ぎる。他人の目線なんか全く気にしていないよ、絶対に・・・・・・


 異世界でのジェネレーションギャップに、ただ驚くばかりのカズミであった。


「えっと、沢渡和巳(さわたりかずみ)、よろしくお願いします。友達からは、サワタリとか、カズミと呼ばれています」


「カズミだな、よろしく頼む。私のことは、イリーナと読んでくれ」


「次は、俺だな」


 今度はビゲがフサフサで、まるで丸太の様に太い首と手足の男性が立ち上がった。


「キーン・フラール、ドワーフだ。仲間からはダブルシールドのキーンと呼ばれているよ。よろしくな、カズミ」


「次は、私ですね・・・」


 すると、巫女装束の小柄でスレンダーな少女が静かに立ち上がる。


「スズネ・カミジョウです・・・」


 前髪を眉が被る位で真っ直ぐ整え、後ろ髪は腰まで伸ばしたロングヘアー。これぞ、大和撫子と言った雰囲気の少女だ。


 その後も自己紹介が続いたが、流石に40人以上居る為か紹介だけで一時間近くも掛かった。


「最後に俺だな」


 白く染まったあご髭で、初老の男性が立ち上がった。


「ゴルド・ホプキン、選手兼ヘッドコーチだ。よろしく頼むぜ、カズミ」


「こちらこそ、よろし・・・ん、選手!失礼ですが、おいくつですか?」


 するとゴルドは、ガハハッと豪快に笑い始めた。


「やはり言われちまったか。まあ、慣れてるからいいさ。今年で50才になる」


ご50才!この人はあの山○投手よりも年上なのか!


 声に出しそうになったがそこはグッとこらえる。ゴルドの体を見ると、ボディービルダーのように引き締まった筋肉で、徹底管理された肉体だ。それを見ると、確かに現役だと言うのも頷ける。


「それと、俺をヘッドコーチと呼んだら罰金な。みんなからは、ゴルドさん、おやっさんと呼ばれている。後、クソ親父と呼ぶのは、勘弁な」


 すると先ほどまで一緒に観戦していた、メガネに金髪を後ろで結んだ白衣の女性が立ち上がった。イリーナ程で無いが、彼女の胸部もかなりの大きさであった。先程と同じ事を繰り返さぬよう、目線を彼女の顔に移す。


「そこはアンタが、クソ親父と呼ばれるような事をしているからだろ?」


「クラリス。クソは止めろと言ってるだろう」


「ドクターの忠告を聞けない奴は、クソで十分だ。おっと悪いね、あたしはクラリス・ホプキン、ドクターだ。よろしくな」


沢渡和巳(さわたりかずみ)です。よろしくお願いします」


「まあ、口の悪い娘だがドクターとしての腕は確かだ。さて、自己紹介も終わったし、ミーティングを始めるぞ」


ルール説明を兼ねたミーティングは2時間ほどかかり、終わる頃には僕はヘロヘロになっていた。


「えっと・・・・・・ファンタズムボウルのルールは、こんな感じで良いですか?」


 みんなの目線がカズミに集まる。


「4回の攻撃で10ヤード以上進めば、攻撃を継続。10ヤード以上進めないか、ボウルを相手に奪われると攻守が交代」


 うんうんとイリーナが頷く。


「相手に攻撃の権利を渡さず、エンドゾーン(ゴールのようなもの)にボウルを持ち込めばいいんですね」


 今度はゴルドが頷く。


「そして僕の役割は、相手の守備陣形を見ながら味方にパスをする、QB(クォーターバック)と言うポジションですね」


 するとゴルドが満面の笑みを浮かべた。


「OK。この短時間で、そこまでルールを把握出来れば十分だ」


 カズミはほっと胸を撫で下ろしたが、まだ不安に思う所があった。


もし僕が判断出来なくて、失敗したらどうしようか・・・・・・


 不安そうな表情で青ざめたていたカズミに対して、ゴルドはあるものを渡した。


「これは、インカムですか?」


「そうだ。ファンタズムボウルはインカムで情報伝達する事が出来るスポーツ。だからカズミに対して俺が指示を出すから、最初は指示通りやればいい」


なるほど、キャッチャーがピッチャーに指示を出すかんじか。それなら何とかなるかもしれない。


「いいかカズミ。お前さんのパスは、プロでもトップクラスだ物だ。後は、自信を持ってプレイをすればいい」


 多少大げさに言ってるのかもしれないが、カズミは自信のスキルを誉めて貰えた事が嬉しかった。こんな気持ちは、いつ以来だろうか。


「ゴルドさん。僕、頑張ります!」


「よし、そのいきだ。さあ、言ってこい!」


「オッス!」


 これからどんな困難を迎えるか分からないが、頼もしい仲間がいれば何とかなるかもしれない。そう思ったカズミであった。


次回は、和巳のデビュー戦です。

果たして、どんな結末を迎えるか。

次回をお楽しみください。

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