第3節、1話 カズミの思い
頭に霞が掛かったかのように、意識がはっきりしない。
「ここは・・・どこだ?」
カズミは真っ暗で、フィールドと思われる場所に佇んでいた。
「真っ暗で、静かだ・・・」
スタジアムの照明に火が灯り、眩しさのあまりに目の前が真っ白になる。眩しさに目がなれると、自分が、カミカゼスタジアムに居ることに気づいた。
「カズミ、こっちにパスだ!その手に持っているボウルを、パスしてくれ!」
僕はボウルを持っている事に気がつく。
「ああ、僕がボウルを投げなくちゃ」
手を振っている、イリーナに向かってピンポイントでボウルを投げる。
イリーナは前後左右フェイントをかけ、次々と相手選手を抜いていく。
「タッチダウン、ナイナーズ!」
パスが無事に通り、カズミほっと胸を撫で下ろす。
「流石だなカズミ」
「ありがとう、イリーナ!」
「他の事は何も出来ないが、パスだけは一流だな」
「え、イリーナ。何を言っているの?」
普段は人を見下す事をしないイリーナの発言に、カズミは驚きを隠せなかった。
「イリーナ、言い過ぎですよ。カズミが驚いてるでしょ・・・」
「スズネ!良いところに来てくれた。イリーナの様子がおかしいんだ!」
後ろから現れたスズネは、カズミを背中から抱き留める。
「大丈夫。自分の身も守ることも出来ない貴方の事は、ちゃんと私が貴方を守る。だから心配しないで・・・」
「スズネまで、どうしちゃったの?おかしいよ!」
「貴方は心配しなくていいの。貴方は何もせず、私たちに守られてればいいのよ・・・」
気がつけば、辺りはまた暗闇に包まれていた。
「大丈夫か、カズミ。今にも泣きそうな顔をしているじゃないか」
今度は暗闇の中からクラリスがあらわれ、背中からカズミ抱き留めていたスズネを振り払う。
「あー、顔をぐしゃぐしゃにして!可愛い顔が、台無しじゃないか。で、どうしたんだ?」
普段通りのクラリスを見て安心したのか、カズミの体から急に力が抜けた。
「よ、よかった。みんなの様子がおかしいんだ!クラリスさん何とかしてよ」
するとクラリスは、カズミの腕を取り自身の豊満な胸に、カズミの顔を埋めた。
「お前は一人じゃ何も出来ない。何にも出来ない甘ちゃんなんだよ!だから、このままあたしに甘えてればいいのさ。そうすれば、もっともっと気持ちよくしてやるよ。なあ?」
クラリスの大胆な行動に、すぐさまカズミは腕を振り解く。
「つれないねぇ。あたしの胸は、そんなに不満だったじゃい?それとも、平坦で何もないスズネに抱きしめ欲しかったのかい?」
「クラリスさん、平坦で何もないとは失礼です。スレンダーと言って頂きたいたいですね。さあ、カズミ。貴方は私が守るから、こっちへおいでなさい・・・」
「み、みんな、どうしたの?何かおかしいよ!」
皆の様子がおかしい事に恐怖し、後ろにたじろぐ。
いつからそこに居たのか、イリーナはカズミを捕まえ、床に組み伏せる。
「つーかまえた。さあカズミ、また私にパスを出してくれよ。お前はパスを出すしか能がないだ。けど、お前が居れば私は最高のプレーができる。だから、私の為に永遠にパスを出してくれよ!」
「嫌だよ!僕は違った形でも、みんなの力になりたいんだ。分かってくれよ!」
カズミの言葉に、イリーナ、スズネ、クラリス表情が豹変する。それはゴミクズを見るかの様な顔だった。
「あっそ!パスをくれないカズミなんて要らないな。残りの人生、一人で惨めに過ごすんだな」
そう告げると、イリーナは暗闇の中に消えていった。
「貴方は何もしなくていいのに、それを拒むのですね。拒むの者を、私は必要としていません。さようなら・・・」
一言告げ、スズネは霞の様に姿を消す。
自分が捨てられたと解ったカズミは、クラリスにすがり付こうとする。
しかしクラリスは、カズミを邪魔者かの様に振り払い、蹴飛ばした。
「あたしだけでなく、他の二人も許否するなんて。お前はバカだよ!人に甘えることもできず、あたし達の要求にも答えられず、そんなやつは捨てられて当然さ!それじゃあな」
「お願いだよ!なんでも言うことを聞くから、お願いだから僕を捨てないで!」
「もう遅いんだよ!この暗黒の中で、くたばってろ」
その言葉を最後に、クラリスは暗闇の中に姿を消した。
「嫌だ、嫌だ、嫌だよ。お願いだから、僕を捨てないで!」
カズミは悲鳴のような声をあげ、目を覚ます。
気がつくと寮の自室で、朝を迎えていた。
服とシーツは大量の汗で、べちゃべちゃになっていた。
コンコン!
「カズミどうしたんだ?下まですごい悲鳴が聞こえてきたぞ」
ドアノブをひねり、部屋に入って来たのはクラリスだった。
先ほどの夢を思い出したのか、恐怖に我を忘れる
「あ、あああ・・・」
「どうしたんだ、カズミ?」
「来るな、来るな来るな来るな!」
近づいてきたクラリスを見て、パニックを起こしたのか、カズミは部屋にあるものをありったけ投げ、暴れだしたのだ。
「カズミやめろ!痛い。ああ、仕方ない!」
そう言うと、懐から銀色の鍼を出し、カズミ首元に投げつける。
トスッ!睡眠の魔法がかけられた鍼が、カズミの首もとに刺さり、意識を失いベットに倒れこんだ。
この部屋からの音を聞き付けたのか、イリーナ達は血相をかき集まってきた。
「クラリスさん!どうし・・・て、何があったんですか?」
部屋の惨状を見たのイリーナ達は、ただ驚くばかりだった。
「どうもこうも、あたしが部屋に来たらカズミがパニックを起こして、暴れだしたんだよ。後は見ての通りさ」
それを聞いたイリーナの顔は、どんどんと青ざめていく。
「昨日もカズミが起きて来なかったから、起こしに行ったが、その時も青い顔をしていた。ただの悪い夢を見たと言っていたので、クラリスさんには報告をしていなかった。申し訳ない!あの時に報告していれば」
イリーナは後悔のあまりに、涙が止まらず顔を上げることが出来なかった。
「イリーナ。昨日の時点で今の事態を予測なんて、あたしにも出来ないさ。だから顔を上げろ。な!」
「でも、私が・・・」
「その顔を、カズミにも見せるのか?あいつが今のイリーナを見たら、余計に悲しむぜ。それに、あたしだって耐えているんだからな」
クラリスの一言が効いたのか、必死に涙を止め顔を上げた。
「それより、今回の事態は異常だ。あの取り乱し様は、ただ事じゃない。ちょっとスズネ、この部屋を調べてほしい。何があってもいいようにイリーナと一緒にな」
部屋の外で待機していたスズネは、初めて部屋に入る。
「わかりました。イリーナ、申し訳ないですが、私の警護をお願いします・・・」
「解った」
一言だけ告げると、悔しさを押し殺しイリーナは立ち上がる。
「あたしは医務室にカズミを連れていく、後は頼んだぜ」
そう言うとクラリスは、カズミを担ぎ上げ医務室へ向かった。
「では、始めますか。イリーナ、万が一の時はお願いします」
スズネの言葉に、イリーナは頷く。
「式紙達よ、悪しき物を見つけ浄化したまえ。上条流式紙・・・」
スズネの手から離れた式紙達は、部屋中を探索する。
「鬼が出るか、蛇が出るか」
「注意して下さい。出てくるものが、鬼や蛇どころでない可能性もありますからね・・・」
コンコン!医務室の中にノックの音が、響き渡る。
「クラリスさん入っていいですか?」
「大丈夫だ!入ってきてもいいぞー」
ドアをノックしたイリーナが部屋に入り、後からスズネが入って来た。
医務室の中ではベットで眠るカズミと、頭に包帯を巻いたクラリスがいた。
「クラリスさん、頭大丈夫ですか?さっき血が出ていましたけど」
「なあに、心配ないさ。むしろ重傷なのは、カズミの方だよ」
「カズミの状態は、如何ですか・・・」
「大分マナを消耗しているよ。だが、事態を把握できたのが今日でよかった。もし発見が遅れて、あと数日経っていたらと思うと、ゾッとするよ。で、スズネ。例のやつ出てきたんだろ?」
「話しが早くて、ありがたいです・・・」
三人でやり取りをしていると、カズミが声をあげ、ゆっくりと起き出した。
「カズミ、気分はどうだい?」
「う、ああ・・・」
クラリス達の顔を見た瞬間、先ほどの夢を思い出したのか、恐怖に顔が凍り付く。
カズミの反応を見たクラリスは、どんなにひどい目にあったか、手に取る様に解ってしまった。
「カズミ、怖かったろ。気づいてやれなくて・・・ごめんな」
クラリスはカズミ手を取った瞬間、感情を抑えられなかったのか、涙を止める事が出来なかった。
「クラリスさん!お願いだから・・・泣かないで!僕、大丈夫だから」
クラリスの涙を見て逆に冷静になったのか、カズミは彼女を諭し始める。
「悪い、カズミがどれ程ひどい目にあったかと思うと、悔しくて悔しくて」
落ち着きを取り戻したカズミだが、クラリスの頭の包帯を巻いてることに気がつく。
「クラリスさん。その包帯は、もしかして」
クラリスは子供を諭すかの様に、右手でカズミの顔を撫でる。
「この仕事をしていれば、患者から物が飛んでくるなんてよくある。だから気にするな」
自分のしでかした事を思いだし、今にも感情が爆発しそうだった。
「ごめんなさい。クラリスさん、本当にごめんなさい・・・」
「大丈夫だって。お前が泣いていると、あたしまで・・・」
最後まで話そうとしたが、涙が止まらず言葉がでない。
気がつけば、カズミとクラリスは、二人揃って泣きあったのであった。
「二人とも、落ち着きましたか・・・」
「イリーナに偉そうな事を言ったのに、あたしが泣き出すなんてな」
「クラリスさん、スズネ、イリーナ。迷惑をかけて、本当にごめんなさい」
二人の様子を見たスズネは、部屋での探索結果を話す。
「さて、先ほどの探索結果をお話ししましょう。カズミ、貴方の部屋からこのような物が出てきました・・・」
スズネが取り出したものは、熊の形をした、いわゆるキモ可愛いと言われるタイプの人形だった。だが、それはお札で何重にもくるまれている。
「この人形、何処で手に入れたのですか?差し支え無ければ、教えれほしいのですが・・・」
「確か、三日くらい前かな。チームスタッフの人から、ファンからのプレゼントです、そう言われて貰ったよ。変わった見た目の人形だったけど、ファンからもらった物だし、部屋に飾って置いたんだ」
話を聞いたスズネは、話を理解すると共に、カズミの人の良さを漬け込まれたのだと、結論付ける。
「なるほど、その様な経緯でしたか。申し訳ありませんがこの人形、即刻処分します・・・」
「この人形、何か問題があるの?」
「実はこの人形、呪詛の一種が仕込まれていまして、夜な夜な貴方の体を蝕んでいたようです・・・」
スズネの言葉に、カズミ絶句するしかなかった。
「なんでこんな事をする奴が居るんだ!」
イリーナは悔しさの余り、拳を壁にぶつける。
「それは・・・」
「ファンタズムボウルが、国家間での代理戦争だからだ」
スズネの言葉に被せる様に、クラリスが語り出した。
「ちょっと待ってください、なんでファンタズムボウルが代理戦争なんですか!僕達がやっているのは、スポーツでしょ!」
「カズミはこっちへ来て日も浅いし、最初に話した事を覚えれいないかもしれないか。元々ファンタズムボウルは、戦争の代わりに始められたと言う話は、覚えているか?」
この世界に来た初日だっただろうか、戦争ばかりする人類に疲れた神々が、戦争の出来なくなる呪いを掛けたと。揉めごとの解決に、戦争が出来なくて困っていたとき、ある王様がファンタズムボウルで決着をつけようと言い出した。そして、ファンタズムボウルを制した国は、一年間世界を統治する権利を与えられると。これが現代まで続いた、ファンタズムボウルの始まりである。
「でも!」
カズミは認めたくなかった。短い時間だが、真剣に取り組んできたスポーツが、戦争の代わりだと言う事を。しかしクラリスは、話を続ける。
「お前は認めたくないと思うが、これが現実なんだよ。敵の国に勝つために、平気な顔をして足を引っ張る奴もまだまだ居る。あたし達のやっているスポーツは、国家間の争いでもあるんだよ」
「でも・・・そんなのって!」
「まあ、そんな酷い事をする奴がいるのも覚えておいてほしい」
「けど、今回の件は度を越えています。一歩間違えれいれば、カズミが死んでいました・・・」
一歩間違えれいれば、死んでいた。その一言はカズミを打ちのめすのに、十分なものだった。
スズネ言葉に、彼ははただ項垂れるだけだった。
「僕は・・・死ぬの・・・」
「そんな事はさせません、私たちが貴方を守ります。絶対に・・・」
「もちろんだ!」
「あたし達に撒かせとけ!」
彼女達の想いは、カズミにとってうれしいものではあった。しかし、彼の心の中では、ある感情が強くなっていた。
「ありがとう。みんながここまでしてくれる事に、感謝しかないよ。なのに、僕は・・・何も出来ない。僕は守られてばかりで弱いせいで、自分で何も出来ないのが、悔しい・・・」
その時!部屋全体に凍えるような悪寒が走り、その場に居た者に、不快な感触が起きた時だった。
「心臓が、痛い・・・助け・・・」
カズミは心臓の辺りを抑え、床に倒れこんでしまった。
「あたしは呪詛に対向する秘薬を作るから、スズネはカズミに回復魔法をかけて欲しい!イリーナは、このメモに書いた物を倉庫から取ってきてくれ!」
イリーナの指示に、スズネは頷き、イリーナ倉庫へ向かう。
「どうしてだ!さっきまで、カズミの容態は安定していた。なのに!」
クラリスは予想外の事態に、苛立つ気持ちを隠しきれない。
「クラリスさん!私が時間を稼ぎますから、安心して薬の調合をしてください。この事態を解決出来るのは、貴女はしか居ないのですよ・・・」
「悪い、スズネの言う通りだ。あたしが冷静にならなきゃ、カズミを救うことは出来ない!助かったよ」
そうだ、あたしがカッカしてちゃダメなんだよ。今はカズミを救うことだけを、考えるんだ。
「言われた物を、持ってきました!後は、お願いします」
「任せろ!あたしを誰だと思ってる!」
クラリスから、苛立ちと動揺は消え、いつもの自信に満ちた表情が戻ってきた。
「後はこれを配合して、完成だ。今助けるからな!カズミ、口を開けてくれ!」
しかし、心臓の痛みの為か、カズミの顔がこわばり、口が開かない。
クラリスは、思考をした。
カズミに薬を飲ませるには、口移ししかない。だが、唇がふれ合う。それはキス、キス、キスキスキス!
口移しに戸惑い、自問自答をするクラリス。だが、目の前には苦しむカズミがいるのだ。薬を摂取出来なければ、死んでしまうのだ。
「クラリスさん!どうしたんですか?早く薬を飲ませてください!」
クラリスの心の内を知らないイリーナは、早く薬を飲ませる様に促す。
「あー、仕方ない!」
意を決したクラリスは、調合した薬を口に含み、自身のくちびるとカズミのくちびるを重ね、薬と自身の舌を、カズミの口内にねじ込んだ!
クラリスの口から摂取した薬は、カズミの体に浸透し、心臓の痛みが取れ、容態が安定していく。
苦しみから開放されたカズミは、目を開ける。だが、目の前には自身とくちびるを重ね、何故か舌まで口に入れ込んだクラリスが居たのだ。
「wer〆<=☆фyui!」
大人の女性とキスをしただけでなく、口の中に舌まで入れらる、いわゆるディープキスを体験したカズミは意味不明な悲鳴をあげ、倒れてしまった。
「クラリスさん。百歩譲って、薬の口移しは分かります。しかし、舌まで入れ込んだのは何故ですか?しかも長時間・・・」
「スマン、完全にテンパっていた」
クラリスの回答に、スズネとイリーナはため息をつく。
「で、感想は?」
なんとも言えない表情をしたイリーナは、クラリスに問いただす。
「なんて言うのか・・・ありがとうございました」
ありがとうございましたと、意味不明な発言をするクラリス。自分でも何故こんな行動をしたのか、理解出来ないのだ。彼女の顔は、恥ずかしさの余りに真っ赤に染まっていた。だが、カズミは最も重傷だった。
ゆでダコの様に顔を真っ赤にして、頭からは大量の湯気が出てくる。
「クラリスさんと・・・クラリスさんと・・・」
カズミは、クラリスの名前を呼びながら一向に起きる気配がない。
カズミの額に、手のひらを当てるイリーナ。
「凄い熱ですね、調合した薬に葛根でも混ぜました?」
「いや、心臓の病に葛根はNGだ。だから入れていない。むしろ、感情の高ぶりから来る、マナの燃やしすぎが原因だ・・・」
「ですよねー」
カズミの容態を確認し合う、イリーナとクラリス。
せっかく心臓の痛みからされたカズミだったが、もうしばらくうわ言をあげながら倒れているのであった。
部屋の中には、非情に気まずい空気が流れていた。
薬を口移しする必要があったといえ、クラリスはカズミにディープキスをしてしまったのだ。
これからを話し合おうとする両者だが、顔を合わせられず、話が始められずにいた。
「あ、あの、クラリスさん。その、えー」
「あ、ああ、なんだカズミ」
両者共顔を合わせようとするが、見つめあう事が出来ない。
「えーと、ごちそうさまでし・・・て!僕は何を言っているんだ!ごごごご、ごめんなさい!」
「だ大丈夫だ!こちらこそ、気持ち良かっ・・・て!あたしも何を言っているんだ!さっき舌が入ったのは故意です。じゃなくて!」
もはや二人の会話は、漫才と化し、会話の体をなしていなかった。ベテランの夫婦漫才の夫婦でも、ここまで息が合うこともないだろう。
しびれを切らしたイリーナは、自身の手をパンパンと叩き、話を始める。
「いいか!クラリス、カズミ!この部屋の中で、何も無かった見なかった!はい、復唱」
イリーナの言葉に、渋々と応じる二人。
「「この部屋の中で、何も無かった見なかった !!」」
二人の声が、見事にシンクロする。
「はい!もう一度!」
「「この部屋の中で、何も無かった見なかった!!」」
もうやけくそなのだろうか。カズミとクラリスは、叫ぶように、イリーナに指示された言葉を復唱する。
叫んでスッキリしたのか、幾分か落ち着きをもどす二人。
イリーナは再び手を叩く。
「二人とも落ち着いた様だな。スズネ、今回の事態の説明を頼む」
「わかりました。先程は肝を冷やしましたが、お陰で色々とわかりました。カズミ、これからは、自分では何も出来ないと思うのは止めてください。でないと、貴方の命はいくつあっても足りません」
「どう言うこと?」
「今回の呪詛は、貴方の負の感情をトリガーとしています。先程も、自身を卑下しているときに、呪詛の力が高まりました。ですので、自身を卑下するのは止めてください」
スズネの言葉に、黙り混むカズミ。
カズミの思いを察したのか、スズネはとある提案をする。
「やはり感情で、呪詛を押さえ込むのは難しそうですね。それなら、貴方の負の感情の根本を取り除かなくては、いけません。カズミ、力が欲しいですか?・・・」
「もちろんだよ。僕はみんなと自分を、守れる力が欲しい。みんなの力になりたいんだ!」
皆を守る力が欲しい。切なる思いを伝えるカズミ。
「貴方の思い、受け取りました。その想いは力となり、大切な人たちを守る、力となるでしょう・・・」
「それで、僕は何をすればいい?」
「我らが神、シナツヒコ様のお力を借りましょう。さすれば、貴方は体内の呪詛から開放され、新たな力も手に入れる事が出来るでしょう。カズミ、今から私に着いてきてください。シナツヒコ様に会いに行きましょう・・・」
「お願いします!」
「では、行きましょう・・・」
こうしてカズミとスズネは、カミカゼの守護神シナツヒコに会いに行くのであった。果たして呪詛を取り払い、新たな力も手に入れる事が出来るのだろうか?




