表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実を知った俺は異世界での経験で独り立ちをする  作者: ホットパイ
現実と別れ
8/9

巣立ち

それから、3日間幸恵さんの家でお世話になることになった。


学校には「転校のためにいろいろしなくてはならないことがあります」と言って休んでいる。


この3日間で俺は戸籍の住所を変えたり、幸恵さんのお手伝いをした。

そして、4日目に1度自宅に届いているだろう編入試験の結果と自分の荷物を取りに帰ることにした。


「お世話になりました。」


「いや、こっちこそ若いもんがいてくれて助かったよ。」


「自分の新しい部屋もここから近いので何かありましたら、いつでも呼んでください。」


「ありがとうよ。達也君も用事が無くてもこの家に来てもいいんだからね。」


「はい、そうさせてもらいます。それでは行ってきます。」


「はい、いってらしゃい。」

俺はこうして幸恵さんの家を後にした。


俺はバスに1時間乗り、最寄りのバス停で降りた。


達也はマンションに着くなり真っ先に自分の部屋のポストを見た。


「あれ?ねえな・・・」


ポストの中を何度も見ても何もなかった。


まぁ、小春が自分宛の奴と一緒に持っていたのだろう。


達也は気にせずにエレベーターに乗り部屋のある4階で降りる。

達也は自分の部屋のドアノブを回す。


「お邪魔します。」


もうここは俺の家ではない。

だから「ただいま」ではなく「お邪魔します」と言う言葉を使った。


別に誰もいないが自分のけじめの問題である。


達也は試験結果の封筒を探したが部屋のどこを探してもなかった。


「あれ?まさかお届けミス?・・・・」

達也は心配になり新城学園に電話した。


「すいません。先週の土曜日に編入試験を受けた受験番号002番の遠藤 達也なんですが、どうも試験結果の封筒が届いていなさそうで・・・・・はい、ではお願いします。

はい、えっ、合格ですか!

ありがとうございます! はい、来週の月曜日からですか。

はい。わかりました。よろしくお願いします。」


達也は電話を切ると


「よっしゃ~~~!!!!」

と自分しかいない部屋で近所迷惑も考えずに叫ぶのであった。



「ふう~」

思わず興奮してしまったな・・・。

達也は深呼吸をして落ち着いた。


てっきり、もう1度届けてそれが来るまで合否が分からないと思っていたがまさか自分の合否を調べてくれるなんて思はなかったな。

まぁ、大事な書類もあるみたいだしまた届けてはくれるらしいけど。


いや~、ありがたい。


俺はウキウキ気分のまま自分の部屋にある荷物をまとめる。

大きめのキャリーバックに入るだけの荷物しか持っていかない。


達也はもともと趣味が少なかったが異世界から帰ってきてからさらにいろいろなことに関心がなくなり必然と必要なものが減ったので別に何の苦労もせずに1つのキャリーバックで自分の荷物が収まった。


達也は自分の荷物をまとめた後、部屋の掃除をしてから、制服に着替え学校に向かう。


理由は最後に転校の手続きやら合格の報告である。


あれでも、あの先生にはたぶんお世話になった。

よく覚えていないけど・・・・・




「先生、無事に合格しました。」


達也は職員室で担任の西村を呼び出して一言目がこれだった。


「そうか、よかったな。でいつに行くんだあっちに?」


「明日です。」

担任の西村は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになるが頑張って抑えた。


「明日、えらく早いんだな。」


「はいそうですね。」

達也は適当に返事を返す。


「冷たいなお前・・・・」


「そうですか?」


「はぁ~まぁいい。あっちでも頑張れよ!」

西村は溜息をついたが最後は達也を励ました。


「はい、今までお世話になりました。」

達也は座っていたソファーから立ち上がり深々と頭を下げた。




達也は学校から自宅に戻りキャリーバックを持ってマンションを出る。


「いざ出るとなっても別に何とも感じないな・・・・・」


ここでの思い出は辛いことばかりで良いことなど達也には思い出せなかった。

達也はマンションから身を返すと2人の人物が立っていた。


「あっ・・・・・・」


それは達也が良く知っている人物だった。

そう、妹の遠藤 小春と幼馴染の夏川 美波だった。



―――――――――――――――――――――――


日曜日からあいつは帰って来ない。

いちよう連絡は貰っている。

「俺は無事だから気にするな。」と書かれたラインが来ていた。


「何よそれ・・・・・」


私は溜息をついて目の前にある1つの封筒を見た。

そこには「新城学園 遠藤 達也様」と書いてある。


「これはなんなのだろう?」

この封筒はさっき学校から帰ってきたら自分の部屋の番号のポストに入っていた。


達也に聞こうも繋がらないし、ラインも帰って来ないし・・・・


勝手に開けるのはダメなことは分かっている。

でも気になって仕方ない。


「でも、あいつなら後で謝ればなんとでもなるか。」

小春は軽い気持ちでハサミを持った。

「えい!」

私はハサミでその封筒を切り中身を見た。


「えっ、新城学園・・編入試験の結果?・・・・・」


どういうこと?・・・・・・

なんなのこれ・・・・・・

私は理解できなかった。


まさか、達也が言っていた試験ってこのことだったの?


私は震える手で編入試験の結果を見た。

そこには「合格」とだけ書いてあった。


私は急いでこれを問いつけるために達也に再度電話を掛けた。

ツーツー「おかけになった電話番号は・・・・・・・」

繋がらない。


私は何度掛けた。しかし繋がらない。


「何でよ!」


この時、達也のケータイは充電切れであった。

それはそのはずだ。達也は充電器を持たずに幸恵さんの家にいたのだから・・・・・

しかし、小春はそれを知らない。


私は誰か頼れる人にこのことを相談しよう考えた。

香澄ちゃん、明日香ちゃん・・・ダメ、あの子達は達也のことを知らないから話しても・・・・

「そうだ!」


私はその封筒を持ったまま玄関を出た。そして隣の部屋にチャイムを鳴らす。

「はい、あら、小春ちゃんどうしたの?」

出てきたのは美波ちゃんのおばさんであった。


「美波ちゃんは居ますか?」

「いるよ。ちょっと待ってね。美波、小春ちゃんが来ているよ。」

おばさんが奥の部屋に向かって美波ちゃんを呼ぶが返事がない。


「あら?どうしたのかな?まぁいいわ。小春ちゃん入って」


「はい、お邪魔します。」


「美波なら部屋にいるから」


「はい、ありがとうございます。」


「ええ、ごゆっくり。」

私は美波ちゃんの部屋のドアを開ける。


美波ちゃんはベットで寝転がりながらヘッドホンをつけていた。


「美波ちゃん。」

私は美波ちゃんの肩に触れて呼んだ。

「わぁ!どうしたの?小春ちゃんこんな時間に?」


美波はいきなり自分の部屋に現われた小春に驚いたのち、寝転んだ姿勢を直しベットに座り直した。


私も美波ちゃんの隣に座る。


「あの、美波ちゃんはあいつから何か話を聞いてる?特に土曜日の試験について。」


「(小春ちゃんがあいつって言うこと達也のことよね? て言いうか試験?なんのこと?)」


「いや~特にはないかな・・・・そう言えば、最近達也の奴、学校来てないな~」

美波は顎に指を置き、少し上見ながら答える。


「ええ、だって家にも帰って来てないからね・・・。」

「えっ、それどういうこと!」

美波は小春の言葉に驚いた。


「えっと、日曜日から帰って来てないの。」

「それって大丈夫なの?」

美波は達也が何かの事件に巻き込まれたんじゃないかと心配した。


「いや、連絡があったの。心配するなって。」

「なんだ~」

美波は落ち着く。


「それより本題がこれ」

私は持っていた封筒を美波ちゃんに見せる。


「これは?」

美波はその封筒を持ち、中身を広げる。


新城学園、編入試験結果―合格


「小春ちゃん、これどう言うこと!」

美波は驚きすぎて思わず大きな声を出てしまった。


「私も知らないよ。だから美奈ちゃんに聞きに来たの。」


「えっ、小春ちゃんも聞いていなかったの?」


「うん、聞いてない。」

「あいつ、なんで実の家族にも言ってないのよ・・・・・」


「だからね、美波ちゃん、明日あいつが帰ってくるって言ったかたら一緒に問い詰めましょ!」


「よっし決定。達也を締め上げて白状させてやるわ!」

それから、2人は達也から問い詰める算段を考えた。


―――――――――――――――


「小春ちゃん~~」

美波は小春を見つけるなり飛びついてきた。


「びっくりするからやめてよ。美波ちゃん。」


「あはは、ごめん、ごめん」

美波は舌を少し出し謝る。いわゆるテヘペロである。


「はぁ~、美波ちゃん、謝る気ないでしょ。でも可愛いから許す。」

小春はそう言いながら美波の頭を撫でる。


「じゃあ、帰ろうか。」


「うん。」



「あ、そうだ!」

美波が急に何かを思い出したかのように手をポンと叩いた。


「どうしたの?美波ちゃん?」


「今日学校に達也が来てたの!」


「本当に!」


「うん、私は見てないのだけど、職員室に入るところを見たって言う。友達がいたの!」


「ってことは今日は家にいるんだね。」


何か殺気めいたものが小春ちゃんから見えるのだけど・・・・・・


そうこうしているうちに2人はマンションが見えてきた。


マンションの前には見覚えがある人物がキャリーバックを片手にマンションの方を眺めていた。


彼は振り返り

「あっ・・・・・」

とだけ声を漏らした。



―――――――――――――――――



私はあいつの顔見た瞬間に怒りがわいてきて学生鞄の中にある封筒を取り出した。


「バカ達也!これはどういうことー!」

私は新城学園と書いてある封筒を達也に突き付けた。


「そのままの意味だが」

達也は顔色1つ返えず答える。


「達也、ちゃんと説明して!」

美波も腕を組みながら達也に言う。


「説明とは、何で俺宛にその新城学園の封筒が届いているのかと言う説明か?

 それとも、なんで編入試験を勝手に受けたことを言わなかったことか?

 もしくは、叔母さんの家に住むのではなかったのかについての説明か?」


「「全部よ!!」」

小春と美波の声が重なる。


「まず、新城学園の封筒が届いているのは俺があそこの編入試験を受けたからで、その結果がと届いただけだ。」


「なんで、編入試験なんて受けようなんて思ったの?」

小春は達也に質問する。


「嫌いだから。」


「「嫌い?」」

2人は達也が何を言っているのかが分からなかった。


「ああ、嫌いだ。勝手に妹と比べられて勝手に失望し蔑む周囲の人間が嫌いだ。

 平気で裏切り、周りの人と同じようにあざ笑うことしか出来ない。そんな幼馴染が嫌いだ。

 俺が家族を大切にしようしても、当の本人は俺のこと家族とすら認識していない。そんな家族が嫌いだ。

 こんな嫌なことしかない街に何故まだいなくてはならない?

 教えてくれよ?」


「私は別にそんなこと思ってないよ・・・」

小春は目を逸らしながら達也に反論する。


「嘘だな、俺は知っている。お前が俺のこと「パシリ」だとしか思っていなく。こんな恥ずかしい兄は兄ではないんだろう?自分でそう言っていたじゃないか?」


「聞いていたの?」

私は前に友達との帰り道での会話を思い出す。


「ああ、たまたまな。それとなんで転校の事を教えなかったのかは赤の他人に教える必要なんてないだろう?」


「「・・・・・・・・・・」」


小春も美波も達也の「赤の他人」と言う言葉が胸に刺さる。

もう私たちは達也にとって妹でも幼馴染でもないだな。と認識させられる。


「あと、叔母さんはなお前とは暮らしたいが俺とは暮らしたくないそうだ。それが最後の説明だ。」

達也はそう言い身を返して歩き出す。


「「待って!謝るから」」


小春と美波が同時に達也は止める。

その言葉に1度足を止めた達也。


「もう信じた人間に裏切られるのはまっぴらだ。俺はもう誰も信じないよ。」


そう言った達也の顔はひどく悲しげな笑みだった。

達也はまた歩き出す。


私はもう1度呼び止めようと口を開こうとするが途中でやめる。


もう私達には達也を止める資格なんて・・・・・・・


小春と美波は達也の背中が見えなくなってもその場で達也が言った方向を見つめるのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ