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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第八章 酒の為ならどこまでも
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99話

『信じられませんがこれは現実です!映画やドラマなどではありません!』


「お父さん!この世界にもドラゴンているんだね!」


「ドラゴン?そんなものいるわけねーだろ。どうしたんだアイリス」

 アイリスが腕を取ってテレビの前に連れて行く。無駄に四Kのデカイテレビだな…。

「おい、何だこれ…ライブなのか…まてよ……こいつはっ!」






「あの空に浮かんでるの、何だか見覚えがあるんだけど…」

 運転しながら頭が痛くなってきた。

 実家上空にブラックドラゴンがいた。ルナじゃん、あれ。


「魔法陣が見つかったみたいだね、これは」

 ラムがお気楽な感じで言うが、結構な問題なんじゃないの?あっちでオーラロードが開かれたんだな。


「ブレス吐いちゃってるよ…」

 ダメだこりゃ。




 実家に着くとかなり遠くから非常線が引かれていて、中に入る事ができない。

 田舎の移動は車か自転車なので、普段は一人も歩いていないし見かけない道路に野次馬が沢山いるし。アンタらそんな所にいて、ルナが怒ったら消し飛ぶぞ?


「どうにかしないと更に大事になるな」


「どうかしたのか?」


「ん、ドラゴンがな…って!ルナっ!えっ?あれっ?」


「久しぶりだな、酒を飲みに来たぞ」


「ザシャさん!てか、バッカスぅう?」


 ヤバイっ!警官がこっちに来る。

「二人共早くこっちに!」

 とりあえず車に押し込んで離脱だ。


 車で二、三分の陸上競技場に来た。ここは駐車場も広いしスペースが沢山ある。

「ルナ!この世界にはドラゴンなんていないんだぞ!急に現れたら大変な事になるんだ!ザシャも酒飲みたいって…バッカスだからいいんだけどさ、その格好もこっちじゃ仮装になっちゃうよ」


「フーンだ、ドラゴンはどこに行ってもドラゴンなんだから、騒がれたくらいでどうしたって言うのよ。そのくらいケンジがどうにかしなさい」

 何言ってんのコイツは…もう!釘なんちゃらみたいな声出しやがって。


「スマンな、妻が迷惑をかけた」


「で、どうすんの、これ……」

 スマホでローカル局を映して見せる。臨時ニュースをやっている。


「わ、わ!私がこの中にいる!」

 丁度さっきのVTRが流れていた。


「これはテレビっていって、僕の国全土で流れているものなんだよ。ルナの事は皆に知れ渡ってしまったから、ドラゴンに戻るのは止めてね…ホントに…」


「この世界ってモンスターがいないのよね。それが分かったから、もう人の形のままでいるわよ」




 実家に連絡して、騒ぎが収まるまでドライブでもする事になった。近くのガソリンスタンドでレギュラーを満タンにする。


 そういや皆は海を見たことがなさそうだな、と、日本海を見にハンドルを切る。

 大山街道を道なりに進み、大山地区に入るとバッカスが騒ぎ出した。


「何故だが酒を感じる。それも極上の酒を」


 そりゃ、鶴田市大山地区と言えば東北の灘と言われた酒蔵密集地区だし。

 酒屋を見つけて入ると試飲会をやっていた。


「飲みたい人はどうぞ。僕は運転があるから飲まないけど」

 これが日本人なら少しは気を使って遠慮がちにいくものだが、異世界の皆様は気にもせずゴクゴクいってます。くそー、和田来とか恋の山とか有加藤を飲ませてくれー。てか、バッカスに一升瓶を何本も買わされましたよ。トホホ。


「山に行ってるようだけど?」


「まぁ見てな。このトンネルを抜けると…ほら、向こうに海が見えてきただろ。坂を下ると港があるんだ。近くにクラゲが沢山展示してある水族館もあるぞ」


「ご主人様、この辺に精霊様の気配を感じますニャ」


「精霊?」


「猫の精霊様ですニャ。あ、ご主人様の肩に乗ってますニャ」

 どうやらチコリにも見えるみたいだな。なでてるし。


「ケンジ、それってアンタの飼い猫だったって言ってるわよ」

 ルナが言う。うーん、この坂の途中にある寺には愛猫が眠っているのだが…もしかして。

「テツか?」

 肩にモミモミする感触がある。


「ご主人様、思い出してくれてありがとうって言ってるニャ」




 港に出ると磯の匂いが窓から入ってくる。

 左折して水族館を目指す。近所で飯が食えるのはそこくらいだし。


「ここで昼ご飯にしましょう」


 前途多難な昼食が始まるとは、この時は思ってもみなかったのである。

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