88話
「まぁ、固っ苦しいのはこれくらいにしてだな、賢司っていったか、お前はいつの時代から来た?昭和か」
急にフランクになる王様なのだった。素の方が取っ付きやすそうだな。
「いつの時代ですか…王様は昭和の方なんですね。僕は平成から来ました」
「平成?聞いたことがないな」
この様子は確かに昭和生まれだな。
「平成は昭和の次の年号なんです」
「なるほど……俺はこの世界に来てもう二十年にもなる。成人してすぐだったから今は四十だな。お前も俺とそんなには変わりなさそうだな」
王様は顔にも腕にも傷があり、歴戦の勇士然としているけど顔はダイゴロウなんだよなぁ。
「で、先程おっしゃってた名前は本名なんですか?ちなみに僕は名字は葉山っていうんですけど」
ここで少し勝負に出てみる。
「そうだな…ちょっとこっちへ来い」
王妃達から離れて耳打ちされた。
『俺の名は葉山大五郎だ。偶然にもお前と同じ名字だな…』
『大五郎さん、どちらの出身なんですか。僕は山形県の日本海側なんですが』
『…同じだ……て事はアレか?俺らは親戚か。葉山なんて名字は親戚しかいなかったはずだぞ』
『でも僕は大五郎さんを知らないんですよね。何かの集まりで会ってると思うんですけど』
『高校を卒業してすぐに東京に出たからな。それまでも親戚が集まるのには出なかったし』
『なるほど…』
大の男が二人でコソコソ話。
王様である葉山大五郎と僕は親戚同士。大五郎は昭和の時に子の世界に転生された。と、なるとですよ、トダ村のダイゴロウは大五郎さんなのか?いや、年齢が合わない。その辺の謎はまだ残る。
『そろそろ席に戻りますか、王妃様達がジト目になってますし…』
七人のジト目は圧力が凄いんじゃ。
『うむ、そうしようか』
いそいそと元の席に戻り愛想笑いをする僕と、流石は王様な大五郎さん、堂々と真顔のまま背中をつねられていた。
「それで、その指輪はどこで手に入れた?」
ここで気になっていた指輪の話題になる。
「アンバーで露天商から買いました。オリハルコンの指輪が一つとミスリルの指輪が六つです。後になってミスリルの指輪は七つあると知りましたが、残りの一つはこの指輪を作ったハイエルフを探しているドワーフが持っていました」
「なるほど、ハイエルフってのは俺が製作を頼んだ男に違いないだろうな。奴は同じ物をまた作ったのか…なかなか首を縦に振らなかったのにな」
「僕はこの指輪の物語が民衆に本で伝えられているのを聞きましたが、王様が結婚された経緯などは有名なのでしょうか?」
「どうかな、まだ吟遊詩人レベルじゃないかな」
「うーん、何かしっくりきませんね」
話をしている間、サラ達は王妃達から愛でられていた。特にちくわとささみは食べ物をもらって機嫌がいい。
「ケンジの連れの女の子と妖精だが、この国の言い伝えで、王と同じ血を引く者と妖精二人を連れた女が訪れた時、王国は更なる発展を遂げるだろう、とある。まさにお前達の事だな」
その、何かを期待する目はやめてください。単に魔法の暴走で辿り着いただけですから。
「ざっくりとした言い伝えですねぇ…ところで、喉が渇いてるんですが、何か飲み物を頂けませんか」
緊張続きですっかり喉が渇いてるのを忘れていたわ。
「葡萄ジュースですか…しかも常温…まぁ、飲みますけどね……パーティしてたんだから酒でも良かったんだけど………」
美味しくないけど水分は欲しい。
「俺は下戸なんで気にしてなかったが、この国に酒はないぞ」
はい?なんて言いました王様。
「酒がない…?」
「ないな」
「それだ!それかぁ…はっはっは。それしかないよなぁ」
更なる発展って、酒を造れってことだろ。
「とりあえずワインを造りましょう!」
こうして、この国に初めての酒を与える事になった。




