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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第七章 ミスリルの約束
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86話

 妙にイキイキしながら仕事をする女性陣。皆が笑顔なので客達の注文も進むのだった。

 珍しく煮込みが売り切れて、すぐに出せる料理がなくなってしまった。フライヤーを増設したのでジャガイモを皮付きで揚げる。これに塩をかければオーケーなので、ミルクに頼んで揚げてもらう。




「なんか迷惑かけちゃってごめんなさい」


 口開けの客達が帰る頃、ケイティが一人でやって来た。


「なんてことないよ。それより王都へはいつ立つんだい」

 王様達もそろそろ帰る頃合いだろう。


「明日の朝に」


「そうか、寂しくなるね。今日は皆に会っていってよ」

 客の中にもケイティを気に入っていた人は少なからずいて、どうしたの?とか声をかけている。本当の事は言っても信じないだろうし、その辺はぼやかす事にしたようだ。


 なるべく皆に話せるようにとフォローを入れつつ、樽の交換などをやっていた。


「それでさ、フクの家族も途中まで一緒に連れて行ってくれないか」

 ドラゴンに乗って、一気にアンバーまでやって来てしまったフクの両親とおにぃ。帰りの事を何も考えずに来ちゃった感じだったからね。


「うん、頼んでみる」


「ケンジー!日本酒足りなくなった!」


「ごめん、裏に取りに行かなくちゃ…元気でね、ケイティ。ま、王様もいい人だし、そんなに心配することもないか」


「ケンジさん…」


 最後はハグしてお別れだった。

 車や電車、飛行機などの交通手段がない世界なので簡単に会いに行くことは叶わないだろうけど、何となくどうにでもなるんじゃないかって気がしている。


「移動魔法とかあるんでしょ?」

 魔法少女サラに聞いてみた。


「ありますよ…ありますけど、かなり上位の魔法なので使える人が少ないです。私は……えいっ!…ほら、使えま…………ふぇっ!」

 店の床に魔法陣が出現したようだが。


「よし、サラ、一緒に行ってみよう」

「そんなお気楽過ぎますー!」




「ケンジー、サボってないで手伝ってよねー!」






「ここはどこでしょう」


「かなり豪華な作りの屋敷だな…奥の方が賑やかだ。とりあえず行ってみるか?」


 サラが一緒なら帰りも何とかなるだろうと魔法陣に飛び乗り、移動した先はどこだか分からない屋敷の中だった。

 森の中に出るよりはマシだろうと、賑やかな方へと足を向けてみる。


「廊下長いね…」


「これだけ長くて、ずーっと先から賑やかな声が聞こえるという事は、かなりの人数が宴会でもやっていないと説明がつかないですよ」


 確かに、声がしてから一度曲がり、そこが長い廊下だったのだ。


「大丈夫でしょうか…」


「何とかなるさ…きっと……」


「ケンジさん、変な汗かいてますよ……」


 そりゃ、汗もかくわい。

 こんな豪華な所に来たことなんてないもの。


「いざという時にさっきの魔法をよろしくね」


「マナを使い切ってしまいましたので…一晩寝ないと無理ですよぅ」


「え?そうなの?」

 しまったぁ!

 僕の召喚魔法では物しか出せないし…あー、仕事を放り出してきたからラムにこっぴどく怒られるなぁ。




「よし、開けるぞ…」




 ドアを開けると、そこではすんごい華やかなドレスの貴婦人達と、明らかに上流貴族的な紳士達が、これまた豪華な食べ物と酒でパーティを繰り広げていた。

 一気に注目を浴びる僕とサラ。アロハシャツにジーパンで仕事をしていたままの僕と、サラは魔法少女の衣装だ…。


『ざわざわ…ざわ…』


 騒ぎ立つ会場。

 固まる僕ら。



「静まるがよい」


 凛とした声がホールに響く。


「その者達をこちらへ」


 声と同時に衛兵と思われる男達に腕を取られ、ホールの奥にある…奥にある玉座ぁ!玉座の前に跪かされる。


「きゃっ!」


「この子には乱暴するな!」

 とっさに出る言葉。


『ガッ!』


 頭を小突かれる。


 サラの服の中から飛び出る、ちくわとささみ。

 空中に浮かび威嚇する。


「ほぅ、妖精を従える者か……言い伝えの通りだな」

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