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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第七章 ミスリルの約束
82/230

82話

 宿にはいつもの騎士達が警護についていた。顔パスなので挨拶しながら奥の部屋へ入っていく。丁度、王子様が部屋に向かっているのに出会う。


「ケンジさん、どうしたんですか……」

 王子様はそう言って固まってしまった。今日は多いね。


「けっけっけっ、ケンジさんッ!」

 凄い勢いで間合いを詰められてしまった。一般人なので防御体勢も取ることは叶わない。 アンバー一、正しい意味でのセレブ(最も注目されている人)なイケメンに近寄られると、香油か何かのいい香りがするのだった。


「な、何でしょうか」


「ケンジさんが連れているご婦人方を紹介してもらいたいのですが!恩人は何故にこの様な華麗なご婦人方を連れ立っでいるのでしょう」

 王子様…ひれ伏す勢いで僕はちょっと引き気味です。


「イヤだなぁ、王子様。ここにいるのは立ち飲み屋の従業員ですよ。小さい子達もフクとチコリですし」


「…え?ホントに?」

 それぞれの顔をじっくりと見て回る。フクとチコリは笑っちゃってるし。


「こ、これは…貴女はとても可憐だ……」

 ケイティの前で王子様は止まってしまう。


「え、王子様…」

 王子様はケイティの手を取り、甲に口づけをした。

 その瞬間、彼女の指輪が消えて…僕の左手薬指に出現した。


「ケイティです…王子様」

「ケイティ、結婚して欲しい」

「はい」


 ええーっ!急展開。そして、指輪が光だし…二連リングになった。


「何だ、騒がしいな…」

 ドラが開き、中から王様が出てきた。


 廊下で抱き合う息子とケイティを見て驚くと、周りにいる僕らにも気づく。


「ケンジではないか…それに、店の皆も……なるほど、皆綺麗になって、これは眼福。それで、これはどうしたんだ」

 王子様を指差して呆れたような顔をした。

「そうか…惚れたんだな…」


「ケイティの分も補充要員がいるね、これは」

 ラムに話しかける。コクコクとうなずくラム。リリィは両手を胸の前で握って、顔を赤らめて二人を眺めている。

 ケイティも僕を慕ってくれてはいたけど、みんなに乗っかっていた感の方が大きかったのかな。電撃的な恋が実るといいね。しかし、身分の差とか関係ないのかね、この世界では。


 そして、ぽわゎーっとなったケイティを残したまま街中を皆で散歩していた。

 途中途中で女性達から囲まれて、化粧品の話をしていくラム。可愛がられてお菓子を両手いっぱいにもらうチコリとフク。

 屋台の串焼きは凝った調味料を使うようになってきていた。店それぞれに特徴が出てきていて、買い食いするのも前より楽しくなってきている。


 丁度、噴水の所に来たら露店が沢山出ていて、賑わいを見せていた。


「へぇ、色んな物が売られているんだねぇ」

 キョロキョロしながら店の物を見ていると、


「やぁ、また会いましたね」


 いつぞやの露天商の兄ちゃんだ。アンタには聞きたいことが山ほどあるんだ!

「あ、アンタ!まだアンバーにいたんだな」


「いえ、あちこち回ってましたよ。こちらへは今朝着いたばかりです……おや、指輪が二連に進化しましたね」


「そ、そう、その話をしたかったんだよ!この指輪、かなりの品みたいじゃないか。何で僕なんかに二束三文で売ってくれたんだ」

 素材はミスリルとオリハルコンなのだ。


「単なるシルバーリングではないと気付かれましたか。ふむふむ、あー、例のドワーフさんが、なるほど…ふむふむ……その指輪は私の物ですから、巡り巡って手元に戻ったので、値段は私の価値観でお売りした訳ですねぇ」


「ドワーフさん、探してましたよ」


「あの方もしつこい人ですねぇ…いや、しつこいドワーフかな?今の私は指輪の作り方は忘れてしまって教えられないんですよね。それに、あの方の視線は何やらぞわぞわとして気持ちよくないものでして」

 ランドウが男好きなのを感じ取ったんだな。


「まぁ、とにかくですね、その指輪は色んな効果がありますから、長く愛用していただけたらと思います」


「はい、そうします。それでは」


「日本は楽しそうな国ですね」


「えっ?」

 振り向くと、もうそこに店主はいなかった。

 何か言っていたと思うんだけど、確かめる事はできなかったな。しかし、瞬間的に移動できる魔法…なのかな。知り合いに使える人がいたら便利そうだよね。


 うちの女性陣は今のちょっとした間に、これまた色々と買い物していたみたいだ。

 可愛い、綺麗とおだてられ、アクセサリーを買い込んでいるし。まぁ、うちの従業員は高給取りですからして、この買い物くらいでは財布は軽くならないんだけども。アクセサリーを付ける習慣がない僕だったら……と、思いながら露店を眺めていると、イシカワさんが買い物をしていた。


「大将?」


「よぉ!ケンジくん。また来ちゃったよー」

 両手に竹串やら塩やらを持っている。

「こっちの物の方が質が良くてね。それに、うちの納屋とここが繋がったみたいでさ。さっきも金髪のお兄ちゃんが納屋に来てたしな」


「異世界も何だか随分近所になりましたね…ははは」




 そんな我々を草葉の陰から見ている者達がいるのだった。

なるべく毎日更新にしたいのですが…他の作業も日々あったりして、年末は時間の使い方が難しいです。

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