81話
「東洋系っていないのかぁ…この顔を皆はどう思ってるの?」
ランドウさんに聞いたら東洋系の人間は見た事がないそうだ。
「私はカッコイイと思ってます」
とは、ナターシャ。
モジクネしながら言うので艶っぽい。
「サラはもう慣れました」
日本で働いてたしね。
「平たい顔」
ケイティは言う。
「魔族?かと、最初は思いましたね」
リリィってば、僕はそんなダークな感じですのん?
朝ご飯の時に話す内容でもないかとは思ったんだけど、この間帰った時に持ってきていた鏡を出して、覗き込んでいた。
「ケンジさん、何ですかそれ」
「ケイティも持ってるんじゃないの?鏡だよ」
「えっ!鏡ですか!高級品ですよ!」
「そうなの?はい、どうぞ」
四角くて開くと立てて置けるタイプの鏡を渡す。
「うわっ……ナニコレ……これって私?」
言うやいなや固まってしまった。
「どうしたの?」他の皆も鏡を覗く。
そして、次々と固まっていく。
「ラム?」
「フフフ、この世界の鏡って、金属を磨いた物しかないから、曇ってて当たり前なのよね。しかも高いし」
「スゴーイ!鼻の中も見えるぅ」「わわっ、ほっぺに変な毛がはえてるっ」「私ってこんな目の色なのね」
「こ、これ!欲しいですっ!」
珍しくケイティが声を荒らげる。
「いいよ」
「やったー!」
「ほら、まだあるし」
皆に配った。
チコリもさり気なくもらいに来たけど、太陽光を反射させて遊び始めている。
「ラムさぁ、もしかして化粧品も流行るんじゃないの?」
はっきり見える鏡があれば綺麗になりたい欲求も出そうだよね。その辺はタッチしていないけど、収入はあればあるだけ助かる訳だし。
「こっそり持ってきてるけど、シャンプーくらいであの騒ぎだからどうしようかと思ってて。ここの皆に試してみようかな。そうね、ナターシャなんかそのままでも凛々しくて綺麗だけど…」
早速メイクしだした。ナターシャはビクッとしてから固まったまま動かなくなった。
「ぉお!」
反射させて遊んでいたチコリが、ナターシャを覗き込んで声を上げた。
「どうなった?」
「凄い…自分でやったのに…これは凄いわ…ほら、皆に顔を見せてあげて」
ゆっくりとこちらに振り向くナターシャ。
「「「「!」」」」
「ナターシャ、女神様みたいだニャ……」
「いわゆるすっぴんメイクってやつなんどけど、元がいいからだよねぇ、ははは…」
結局、チコリやフクまでメイクをしてもらって、おめかしして散歩に行くことになった。
すれ違う人達が二度見するする。
気分が高揚してきた面々は、悪ふざけで王様に会いに行くことにした。




