80話
一緒に寝たものの、起きたら私はベッドの端に、マーズくんは真ん中で大の字になって寝ていました。相変わらず尻尾だけ変身がとけていて、時々ビクビク動いています。
ケンジさんのベッドには誰か入ってきたりするのかな。
朝からそんな事を考えていると、尻尾がペチンと向けていた背中に当たりました。
「痛っ」
もう、少し早いけど起きちゃおう。
「あら、早く起きて大丈夫なの?」
「お母さんおはよう…私寝不足だから今日はお酒の仕込みは早目に終わらせていい?」
「えっ、何かあったの?」
お母さん、何か驚いてる。
「うん、マーズくん子供なのに太いから痛くて…」
さっき明るい所で確認したら少し赤くなってた。
「お、お父さーん!大変よー!」
朝からお母さんもお父さんもそわそわしちゃって、ケンジさんとマーズくんのどっちがいいのか、ドラゴンでも問題ないのか、とか。ケンジさんがいいに決まってます。
そう言えばルナさんとザシャさんは新婚旅行へ行きました。アンバーに移動して準備するって言ってたな。
「新婚旅行かぁ…」
「新婚旅行なんてのは金持ちの商人か貴族がするもんだ」
「そうなんだ、お父さん達は結婚したらどうしてたの?」
「二、三日は仕事を休んでゆっくりしたけどな」
「その時にアイリスができたのよ」
「そ、そうなんだ…」
たとえ親でも、目の前でイチャイチャされたら、見ている方が恥ずかしくて嫌なものだってのを知りました。私もケンジさんに会うとこうなっちゃうけど、周りはこんな気持ちになっていたのかな…ちょっと恥ずかしい。
突発の魔法少女祭りは滞りなく終わり、外の後片付けをやっていた。
食べた後の串がかなり捨てられていて、拾うのにとにかく時間がかかる。回収して再利用する訳じゃないけど、串入れの導入した方が良さそうだな。
「ゴミを地面に捨てるのが普通なの、どうにかしたいねぇ。フクの国もこんななのかい?」
「んー?猫人族は物が落ちているとつい拾っちゃうニャ。気付くと両手に沢山のゴミを持っていたりするニャ。癖なのかニャ」
「ははは、それは収集癖かな。沢山の猫人族が拾ってる姿を想像するとニヤニヤしちゃうね」
「そうニャの?」
そういや猫人族にエルフ族、ドワーフ族は会えたけど、東洋系の人種ってこっちじゃ見かけないなぁ。ランドウさんは色んな所を旅してるみたいだったし、アンバーを立つ前に聞いてみるかな。
「さてと、片付いたし今日は帰りましょうか」
店内も既に掃除や洗い物は終わっていた。
「ん!」
「オルカさん迎えに来ないねぇ…え?今夜はお泊りするの?」
「んふぅ」
「あー、サラと一緒に寝るのね。今後の活動を話し合いたいのか…色々考えてるねぇ」
チラッとサラを見たら、ちくわとささみが肩に乗っていた。フクも特にとられた感はないようだな。寂しいのは僕だけか。小さなもふもふよ…しばしさらば。
うちの女子達に流行っているのが石鹸やらシャンプーやら、風呂で使う物などだ。ラムが持ち込んでマイヤーズさんが売っている物は前から使っていたけど、これらは耕ちゃんの持ち込んだ物なのだ。
いわゆる銭湯セット。
カエルの描かれた黄色い桶に垢すりタオル。これが流行っているのだ。カエルの絵が彼女達の心をグッと掴み、その上で垢すりの感覚が新鮮なのだと。一皮も二皮もむけた彼女達の色白な事。ちなみにこの世界にはヘチマはないみたいだった。
「みんな、どんどん綺麗になってくねぇ」
何気に呟いただけで長風呂になりそうな気配だったので、こすり過ぎるとせっかくの肌が痛む事も教えましたとさ。
僕は烏の行水です。
「そろそろ店の工事も終わりそうよ。キャパは四倍になりそう。なので、とりあえずは一人辺りの持ち場が広がります。よろしくお願いするわね」
ラムからの報告で四倍になると聞き、そうなるとメニューも増やしていかないと駄目だし、料理人もナターシャだけでは間に合わなくなってしまう。耕ちゃんはあくまで僕達の先生なのだ。
「料理人を増やさないと駄目だな。ナターシャは今まで通りに焼き場担当。後はフライヤー担当とその他の料理担当に盛り付け担当で三人は欲しい。後、サラが週末はイベントもやる事になるから、ホールも三人くらい欲しいな」
「ホールはすぐにでも探せそうだけど、料理人は難しいわね。リリィ、どう?料理人のギルド登録者数って」
「そうねぇ、この店で働けるレベルの料理人となると…殆どいないわね」
マジですか…それは困った。
「困ったねぇ…」
「店に貼り紙して、後は色んな所で声をかけていきましょう。口コミで探せるかもしれないしね」
「まぁ、ラムの言う通りだな。後は王様にも話しておくか」
店を広げるのも大変なのだった。ああ、猫の手も借りたいとはこの事か。
この時、窓際に野良猫がいたのには誰も気付かなかったのです。
仕事が激務で更新できませんでした。
ごめんなさい。




