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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第六章 特異点「立ち飲みチコリ」
72/230

72話

「ホント、いい結婚式だったなぁー」

「ルナちゃんも可愛かったー」

「ザシャは果報もんだ」

「んだなぁ」

「猪串は美味かったよー」


 少し不貞腐れるルナの弟以外は納得のいく結婚式だったようだ。


「ケンジさんっ!」


「うわっ!アイリスか、ビックリしたよ」


「家に寄っていくんでしょ?」

 右腕は完全にホールドされた。


「あー、それがね、予想外の結婚式だったから時間がなくなってね、このまま帰らないといけないんだよ」


「えー!久しぶりに会ったのに、私より大事な用事でもあるんですか」

 常套句で可愛く迫っても駄目なものは駄目なんです。


「フクにちょっとあってね、寝かせてきたけど起きたら一人じゃかわいそうでしょ?皆仕事だから家にいなくなるし」


「え?皆って何ですか。フクちゃんの事は分かりましたけど、皆って?」


 あー、アイリスには教えてなかったっけ…共同生活の事。

「えーと…店の皆と一緒に住んでます」


「うそ…」


「少し前からね…流れで…」


「ズルいです!私も一緒に住みたいです!」

 腕が…痛い…。


「それは何とも言えないかな、家にいるのは皆、立ち飲みチコリの従業員だし。それに、アイリスには日本酒造りを頑張ってほしいから」

 そうなのだ、日本酒造りにはなるべく経験を積んだ人手がいる。リーダーに育ってほしいから、軌道に乗るまではやめないでほしいのが正直なところだ。


「むー、それを言われちゃうとワガママが言えなくなっちゃいます。日本酒造りは楽しいですし、村の為にもなってますから」


「アイリスにはトダ村でやる事がまだまだあるし、それに、週に何度か会えるんだから、焦らずにいこうよ」


 アイリスにはもっと同年代の友達が必要だな。この辺はダイゴロウさん達に話しておかないと。

 こうしてアイリスを説き伏せて、イシカワさんと共にアンバーへ戻った。




 家に戻り、イシカワさんにお茶をいれてから、フクの寝る部屋に移動する。フクは誰かがベッドへ移動させてくれたらしい。泣き腫らした目も良くなってきている。

 ハナが亡くなった時は本当に悲しかった。それがこうしてフクとして異世界で会えたんだから、彼女の家族にはキチンと理解して欲しい。


「フク…」

 寝ているふくの前髪を撫でる。ふふっ、相変わらずの猫っ毛だ。

 彼女がいると凄く安心できるんだ。

 凄く…。






『ハナー、コラ、そこに乗っちゃ駄目って言っただろ!仕事で使うんだから、って、もう、こっちおいで!』


『ハナ…体中に種付いてんだけど……あー、面倒くさいなぁ』


『ん?その子と仲良しになったの?ちょっと妬けるなぁ』


『このカリカリ、新商品なんだけど食べてくれるかなぁ。時々変えないと飽きちゃうんだよね』


『………………』


『…………』




「はっ!」

 いつの間にか一緒に寝ていたのか…色んな夢を見ていた気がする。

 フクが腕の中に入り込んでいた。体温を感じながら…思い出した!


「イシカワさん!…あれ?」

 今に行くとそこにはもうイシカワさんはいなくて、テーブルの上に紙が置いてあった。


『ケンジくんへ 店の女の子が来たので、飲みがてら店を見に行ってきます。そのまま日本に戻る都思いますが、またすぐに会えるでしょうし、今日はフクちゃんの側にいてあげて下さい。 イシカワ』


「置き手紙…」

 イシカワさんには悪いことをしちゃったな。


 とりあえずフクの為に晩ごはんを作るか。美味しいものを食べて元気になってほしいし、フクと二人きりのご飯も久しぶりだ。

 ちくわとささみもどこからともなく戻ってきていた。あー、種付けまくりじゃんかー。二匹を見て笑ったらなんだかスッキリした。

 窓の外には夕焼けが広がっていた。

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