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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第六章 特異点「立ち飲みチコリ」
71/230

71話

「こ、これは…レバ刺し!」


 目の前にあるのは衛生上問題だらけで食べられなくなった生レバーだった。た、大将は何故につくってしまったのだろうか。


「大将、これは禁断の物なのでは?」


「ケンジくん、魔法使いだよ、魔法使い」


「え、どどど童貞ち」

「そうじゃなくて、光魔法に聖なる魔法ってのがあるんだと。村にいる神父さんに話を聞かせてもらったところ、何と食べ物を扱う職業にうってつけのがあるじゃないの。それをかけてもらったから、菌は死滅してるよ。百パーセント安全なレバ刺し。ちなみに魔法は教えてもらったら使えたんだよな。あっちでも使えるかな。ま、レバ刺しは無理でも食中毒を絶対に出さないってのは凄いことだからね」


「なるほど、そんな魔法が…」


「供物はその魔法で清める事になっているみたいだね」


 随分と便利な魔法があったもんだなぁ。レバ刺しは大好物だったけど、どっかの焼肉屋社長がやらかしたからなぁ。魔道具にしてあっちでも使えたらいいのに。検査すれば菌が皆無なのが証明されるはずだし。個人的にレバ刺し復活を目論むか。


「美味しそうですね…ごま油に塩…それと刻んだネギ…ゴクリ」

 これとビールは最高の組み合わせなんだな。くそう、食っちまうぞ!

「もぐ………くぁあ!歯応えがきちんとあってなおかつ甘い!」


「やっぱ美味いよなぁレバ刺しは。俺も久しぶりに作って食べて、感動しちゃったよ。何故にこの世界に飛ばされたのか、色々と初心に戻って考えさせられたよ」


 二人して黙々とレバ刺しを食べる。そして涙する。

 そんなのを見ていた村人達が興味津々で集まってきた。


「あれま、キモを生で食ってんのかー?魔物みてぇだな」


「新鮮なレバーは生でも美味いんです。騙されたと思って食べてご覧なさい。ささっ」

 大将が手際よくレバ刺しを作っていく。彼の作るレバ刺しはぶつ切りで、食べやすく歯応えも楽しめる一品なのだ。


「ありゃ!美味いぞ!」

「これは精が付く!」

「つまみに最高ですじゃ!」


 生で食べるのは原始時代くらいなもので。でも、美味しいならどんな物でも食べるのが日本人かもしれないなぁ。牡蠣なんか当たっても食べたいもんね。


 そして大将の猪串!


「美味っ!」

 なんだコレ…ナターシャの焼く猪串も絶品だけど、大将のは比べ物にならない。素材に違いはないから、何かしらのコツがあるんだろうけれども!噛んだ瞬間にほとばしる肉汁。肉の旨味が半端ないからか、塩だけでその旨味が引き立ってくるのだ。そしてビール。エールよりもビールが合うかも。ああ、毎日勉強することが多い。


「ケンジくんに、会った時は夜までに帰ればいいって言ったけど、Sci-Fi的には時間も超えそうじゃない?ここは凄く楽しいから、もう少しいたいんだけど」

 イシカワさんが楽しそうにしている!て、事はだよ、ここでの経験が店に昇華されるって事だよね。安く飲める酒場で更にレベルの上がったやきとんてのは、ここは天国なの?的な思いに駆られてしまう。


 大将は仕事中、いくら客に勧められても酒は飲まない。徹底して仕事人間。でも、それってなかなかできない事なのかもしれないよね。


「好きなだけいてください。たまにはこんな出張もありでしょ」



 こうして結婚式はクライマックスへ向かっていくのだった。

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