62話
タクシーの運ちゃんに猫は大丈夫か聞いたら大丈夫だったので、ちくわとささみを抱きながらタクシーでマンションを目指した。
フクはタクシーに乗ると病院に連れて行かれた事を思い出すらしく、少し震えている。頭を撫でてやるといつもの笑顔に戻り、窓の外を珍しそうに見つめていた。可愛い。ちくわとささみは腕の中でぐっすりと眠っていて、こちらも可愛い。
マンションの部屋に入り窓を開けて換気をする。淀んだ空気が澄んでいくのが分かる。埃よさらばだ。
こっちに来たらサラリーマン。久しぶりにパソコンを立上げメールを受信するかと思ったけど、OSのアップデートがウザそうなのでどうするか。
「ニャニャ?」
ささみがキーボードの上に寝っ転がって手にまとわりつく。
「ニャニャじゃねーよ、アップデート始まったじゃねーか。メールチェックは後だな…。フク、買い物に行くけどどうする?」
部屋にあれば召喚出来るけど、こっちに来ているんだから買って戻ればいい訳で。酒場のあるあの街は何でも揃ういい街だから、買い物→メールチェック→異世界に戻る前に酒場街で買い物で大丈夫そうだな。
「フクも一緒に行くニャ」
フクには途中でパーカーを買ってやり、フードの中にちくわとささみを入れてやった。
金物屋で出刃包丁と三徳包丁、スーパーで適当にスパイス類とカレー粉、カレールー、野菜の種などを買っていく。フクは物珍しさにクンクン匂いを嗅いでいる。
「フクは何か欲しい物あるかー」
猫だった時は入った事のないスーパー。見た事もない食べ物。目移りしながら選んだのは…。
「これがいいニャ!」
パンコーナーの角にあるみたらし団子だった。
「団子ね…」
みたらし団子にあんこのも追加でカゴに入れる。
とりあえずの買い物を終え、マンションに戻るもアップデートは終わっていなかった…。
自分には缶コーヒー、フクにはホットミルク、ちくわとささみには猫用ミルクを与えてしばし休憩だ。
「ん、フク、どした?」
フクが部屋の角に置いてあるくたびれたクッションを抱きしめていた。
「これ、まだ持っててくれたのニャ…」
「ああ…ハナのお気に入りクッションだもんな。まだ毛も何本か残ってるだろ」
「ホントなのニャ……くしゅんっ!」
『ボンッ!』
「ん?」
フクがいた辺りが煙っていて、ちくわとささみか逃げ惑っている。不思議にフローラルな香りだ。
「ニャーン」
ニャニャニャニャーン?ニャーーっ!ニャンですとーっ!
「ハナになっとる………」
フクはハナになっていた。そう、元の猫になっていたのだ。
「フク?いや、ハナかな。猫になっちゃってる自覚ある?」
「ニャ?」
あれ?
「話せないのかな?」
「ニャーニャー」
至って普通の猫になってしまってる。ちくわとささみが威嚇してるし。
「はっ!変身能力ってやつか!やつなのかっ!」
ティッシュでこよりを作って鼻をこする。
「クシュン!」
『ボンッ!』
「はニャ?戻ったニャ」
ちくわとささみは混乱している。
「フクはくしゃみで猫に戻るんだね。そんな力が授かったみたいだ」
「フニャ?」
アップデートはまだ終わらない。




