表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第六章 特異点「立ち飲みチコリ」
PR
57/230

57話

 タリーズ王国バーボン辺境伯領アンバー。

 この街はいつになく賑やかだった。

 ワイバーンやドラゴンに沸いたドラゴン祭り以来に賑わっている。

 トダ村で見向きもされなかった米。それを原材料にして造った日本酒の第一弾が、立ち飲みチコリに入荷したのだ。

 そして、いつもより美味しい猪豚も入荷した。

 前の中華居酒屋もオープンし、挟んだ通りでビアガーデンを共催することになり、更に耕ちゃんの作るおでん!流石にベテランの作る澄んだ出汁のおでんは、いい香りを漂わせながら食べると最高に美味い。

 こうして、ちょっとしたイベントになりながら宴が始まった。



「とりあえず試飲だな。味を知ってもらってナンボだし。ケイティとリリィ、サラで小さいグラスに日本酒を注いで配ってもらえるかい」


「「「はーい!」」」


 全ての客にくばり終えると、マイヤーズさんや従業員、オハラさんとその従業員にも酒を配る。フク、ベニちゃん、チコリは子供なのでラムネを渡す。


「今日はお向かいの中華居酒屋紅と合同ビアガーデンを行います!そして、トダ村で造った新しい酒、日本酒も存分に味わって下さい!カンパーイ!」


 カチンとグラスの合わさる音があちこちですると、それぞれの感想が次々と語られる様子が見られる。驚きの眼の人、遠い目をして余韻を味わう人、笑顔になってお代わりを注文する人。

 新しい酒なので、どうしても口に合わない人もいるのですが、人々の表情を見ると笑顔ばかりなのでどうやら思い過ごしだった様です。


「どうですか? トダ村の日本酒は」

 色々協力してもらっているマイヤーズさんに感想を求める。


「米は商売人として知ってはいたんだけどね……煮たりしてもドロドロでオートミールと何ら変わらず。ダイゴロウさんは意固地になってしまっている、そう思っていたよ。しかし、その米で酒が造れてしまうなんてね。しかも、炊いた米の味も知ってしまった後にこれだ。想像の上をいくフルーツみたいな味だよ。ケンジさんはやはり賢者様だったな」


「ありがとうございます。故郷の酒がアンバーで味わえるなんて、ダイゴロウさん達には感謝してもし切れませんよ。それと、瓶詰めですのでマイヤーズさんの店でも売ることができますよ。桶一つで一升瓶千本前後になりますから」

 マイヤーズさんの顔はすぐに商売人のものに変わっていた。これからもよろしくお願いいたします。


 ラムがオハラさんとビアガーデンの真ん中で乾杯をしている。聞く所によると、オハラさんは俳句も嗜むそうで、行った先々の酒場に句を残しているんだそうだ。一体何者?


「そうだ、確か部屋に残ったのがあったな…湿気てないといいけど」

 右手を掲げてある物を召喚する。

 チコリやフクを呼んで、中のお客さんを一時外に出してもらう。そして順に着火。



『『『ヒューーーーー……ドンッ!』ドンッ!』ドンッ!』



「うわぁっ! なにあれ! きれい!」

 久しぶりのチコリの発言だ。


「チコリ、あれは花火って言うんだよ」

 召喚した思い出の残りは湿気てなかったようだ。


「ご主人様、初めて観たのニャ……」


 更に続けて打ち上げる。

 この世界の初めて尽くしは、アンバーの住人に色んな影響を与える事になる。



「花火なんてらしくないじゃない?」


「うるせーやい。こんな日くらいはいいだろ、どうせ去年の残りだし」


「ふふ、素敵よ、ケンジさん」

 ラムはそう言ってほっぺたにキスをした。


「あーっ! あーっ! 抜け駆けズルいです!」


「アイリス……」

 アイリスは日本酒で既に出来上がっていて、ピョンピョン飛び跳ねて抱き付いてくる。

「キスするもん! アイリスもするんだもん!」


「はいはい、後でね、後で」


 さっき乾杯したばかりのはずなんだけどなぁ。何このカオス。まぁ、キスされたり抱き付かれたりと、一人勝ちみたいなものではあるんだけどさ。



「さて、猪豚はどうなってるかな」

 気になっていたんだよね、串焼きにモツ煮込み。野趣溢れる猪も好きだけど、豚肉の安定感も懐かしいし、そのいいとこ取りみたいなのは食べないとね。

 きちんと支払って串焼きと煮込みをもらう。

「脂が美味いなぁ……これはエミリー達に感謝だなぁ。ナターシャも味見したかい?」


「もちろんです、猪より柔らかくて食べやすいですよね。モツ煮込みは耕殿に指南して頂きました。アッサリと味付けし、スープまで飲んでもらえるようにしてあります」

 ナターシャは耕ちゃんからかなりのコツを伝授してもらっていた。惜しげもなく教えてくれる耕ちゃんに感謝しつつ、彼のおでんももちろん食べるのだ。


「耕ちゃん、ちくわぶと大根、金時人参、それに玉子にはんぺんね」


「今日は猪豚のタンもあるよ!」


「うわー、そう言われちゃうとそれも食べなくちゃですね」

 こっそり純米吟醸トダをぬる燗にしてもらった。ああ、おでんにぬる燗。至福の刻。

「うまぁい!」

 やはりおでんだよなぁ。





 そして……そんな楽しい時間を邪魔する奴等がついにやってきてしまった。


『人間共注目しなさーいっ! 可憐なブラックドラゴンのルナとケアスが来てやったわよ! その新しい酒を全部よこしなさいっ!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ