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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第五章 フクの憂鬱
49/230

49話

本日は深夜に48話を更新しています。

 目が覚めると左にフクが、胸の上にちくわとささみが乗って寝ていた。あまりにも可愛い寝顔だから、少し眺めてからそっと脱出した。

 顔を洗って朝食の準備をする。子猫達も普通の食事は出来る大きさになっているので、マスの残りと猪肉を小さ目に切っておいた。愛猫ラブなのである。


「おはよう、フク、ちくわ、ささみ」


「おはようなのニャ」

「「ニャー」」


「すっかり仲良しさんだな。んー、コチョコチョー」

「「「フニャニャニャー」」」

 フクはまだちっちゃいけど可愛い。それに子猫達が加わると和み度が増す。


「顔を洗って朝ごはんにしような。ちくわとささみはここで待ってて」

 二匹は僕にも懐いてくれたようで、フクが来るまで大人しく撫でられている。ちくわとささみだと、ささみが少し大きくやんちゃな感じで、ちくわは大人し目のマイペースかな。どちらも左利きだ。


「いただきます」


 朝食からがっつり食べる。所謂バゲットを半分にしてフクと。目玉焼きは二個ずつでソーセージは五本ずつ。トマトたっぷりのサラダにミルクで作った具沢山のコーンスープ。


 ささみは人間の食べ物にも興味津々で、匂いを嗅ぎに脚からよじ登ってきたが、ちくわは自分の分を少し残して食べ終わったら、部屋の探検を始めていた。


「さて、サーバーの取り付け準備に店に行くかな。フク達はどうする?」


「二人を連れて一緒に行くニャ」

「「ニャ」」


 サーバーだけど、今後の取り付けもあるのを見越して鍛冶屋で注文していく。取り付けまでやらないか聞いたけど、鍛冶屋でやる仕事ではないなと断られてしまった。




「おはようございます。何か珍しい物でも入荷したんですか?」


 マイヤーズさんの店先に女性の長い列が出来ている。


「やぁ、おはよう。この列かい? ラムちゃんが仕入れてくれた肌に塗る……何て言ったかな、ああ、保湿クリームってやつを求めるお客さん達だよ」


 手に取ってみたら確かに保湿クリームだ。


「んー、保湿クリームですね……何やってんだアイツは」

 保湿クリームの横には洗顔フォーム、シャンプー、コンディショナー、ボディーシャンプーも置いてある。こちらは売れていないようだが。


「こっちは売れてませんね」


「ラムちゃんのモチモチ肌を触った奥様の口コミで保湿クリームは売れるんだけどねぇ」

 何気に奥に視線を移したということは、かなりの在庫があるんだろうなぁ。


「桶に水を入れて持ってきて下さい。それと、タオルもお願いします」


 マイヤーズさんは実験台に丁度いい。


「それじゃあ皆さん、実演販売です。より綺麗になりたい方は見てって下さい」


 ムサ目のマイヤーズさんに洗顔フォームを渡して顔を洗ってもらう。

 丁寧に洗顔した後は水で洗い流して……タオルで拭き取ると、顔の古い角質が取れて肌が明るく小綺麗に。それを見てどよめく女性達。


「水で洗うだけではそんなに汚れは落ちていないんですね。そこで、こちらの商品。これは洗顔専用になっております。それと、お風呂の時に全身を洗っていただけるのがこちら『ボディーシャンプー』です。濡らしたタオルに付けてこすると……この様に泡立ちますね。まるでクリームの様ですが、このきめ細かな泡が肌に溜まった汚れを取り除きます」


 更に畳み掛ける。


「濡れた肌をこすると垢が出たりしますね、それをくまなく綺麗に落として……更に!潤いも与えてくれる、正に一石二鳥の商品です」


 次々と買うわ!こっちにも頂戴!と声がかかる。


「まだまだ焦らなくても商品は奥に沢山あります。これで最後ですから聞いて下さい」


 出勤してきたナターシャも輪に加わっていたのには驚いた。女性だもんな。おいでおいでして彼女の髪を借りることにした。


「ここにいる女性は容姿が整っている事で有名なエルフ族の方です。髪は見た目美しいですが、指通りは少し引っかかりますね。それが、このシャンプーとコンディショナーを使っていただければ………少しの間、目を瞑っていてね…………ワシャワシャ、ワシャワシャ………ここで風魔法…あ、お嬢さん、使えるんですか。すみません、髪を乾かしてもらえますか。はい、この通り、指通りサラサラ。更に香りを嗅いで頂けますか。いい香りでしょう。この様に少しの手間できれいな髪になります。はい、こちらはお一人様二本まで!」


 言い終わると同時に棚に群がる女性達。

 隣で恍惚と髪を触っているナターシャ。


「ナターシャも買わなくていいの?」


 首を振るナターシャ。

「これからはケンジ殿に洗ってもらいます……ああ、そうなると引っ越さねば………」


「ナターシャ、それくらいは自分でやってね」


「そんな、気持ちいいのに…………ケンジ殿のいけずです……」


「ま、まぁ、たまにならいいぞ」


「えっ、あっ、そうだ仕込みしなくちゃ……」

 恥ずかしがるエルフ、いい……。


「ご主人様、やっぱりエッチなのニャ……」

「「ニャ……」」




「ケンジさん、向かいの商店ですが閉めて店を売ったらしいですよ」

 リリィがギルドで聞いてきた話らしい。


「まさか……」


「そのまさかなんです。例の酒場ができるらしいのです」


「勝手にライバル視されて、喧嘩を売られた気分しかしないな。立ち飲み屋だったらどうしてくれようか」

 ここは飲み屋街から外れているので、夜は一軒だけ賑やかになっているんだけど、それにしても真ん前とはね。


「どんな酒場になるか聞いていないのか」

 気になるっちゃ気になる訳で。


「この辺には無い料理の店みたいですよ」


「見るまでは分からないか…………」

 足元から毛玉が這い上がってくる。


「あのおじさん、また来るのかニャ?」


「来るかもしれないねぇ。来たら奥に引っ込んでいいんだぞ」


「わかったニャ」



 仕込みは、あれから止めどなく肉を切り続けたナターシャのおかげで、普段より早く完了したが……量多いよ。


「今日はサービスメニューを猪串の盛り合わせにするから、どんどん勧めていってね」


「ケンジ殿、すまない……余計な事をした」

 シュンとするナターシャも可愛い。


「大丈夫大丈夫、今日は持ち帰り様に外での販売もやるから、きっと全部売れるよ。クヨクヨしないで頑張ろうな。ほら、今夜は家に来ていいから」


「えっ!」


「流石に肉を大量に焼くと髪も汚れちゃうだろ。それに昨日から家族が増えてな、うちは賑やかで楽しいぞ」


「ちくわちゃんとささみちゃんですね。ナターシャ頑張ります!」



「ん?何?」


「「「「「ジトー」」」」」


「何だよ、お前らも風呂に入りたいんか?」




 何だか女性陣の機嫌が悪くなってしまった。

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