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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第四章 モンスターで酒が飲めるぞ
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38話

「町長とその家族の遺体が確認されたと?」


 その情報と共に、平和な街アンバーに一転してきな臭い気配が蔓延し始めた。

 ドラゴンの攻撃から逃げ遅れた上で、建物の倒壊による圧死。

 今の町長はその任に就いてから長い割に、目立つ様な仕事も少なかったようで、住民からはまるで空気みたいな存在だったらしい。なので、悲しむ人が少ないというのも何だか微妙な出来事なのだった。

 次の町長も街で一番大店のオヤジに決まったが、ドラゴン以上にバッカスにビビり、半日で辞めてしまった。現在は町長がいない状態である。


「会議に連れて来られたけど、僕としては話す事もないんですけどね」


「そう言うな、ケンジにはバッカスが好きそうな酒を準備してもらいたいのだ。これはお主にしかできん」


「それを言われるとどうしようもないなぁ。確かにバッカスは新エールにビールも凄く気に入ってました。でも、既にかなりの量を飲んでましたからねぇ。飽きていないか心配です。後、思い付く酒はキンミャー焼酎を割り物で割った物か……今はそのくらいですね」

 日本酒はまだこれからだし。


「キンミャー焼酎とは最近評判の消毒薬の事か。あれが酒とは知らなかった。それならばバッカスが食い付くのではないのか?」


 謎の異世界焼酎キンミャーは未だに消毒薬として流通しているのか。もう、酒として売っているんだと思っていた。


「キンミャーは飲みやすく、何で割っても相性がいい酒ですが……割る物の開発に時間がかかります。この辺で手に入る果物のジュースで割っても、物珍しさやインパクトはないでしょうし……」


「そうか……短期でどうにかできるかと期待していたのだが難しい様だな。じっくりと対決するしかないか」


「そもそもバッカスという神は、何故息子さんに取り憑いたのでしょう?」


「うむ……それは、私が度が過ぎる酒好きだったのが理由だ。世界各国の酒を集めさせては日々飲み明かしていたのだが、ある日、その事にバッカスが興味を持ってしまってな……部下になりすまして盗み飲みしていたらしい。そして、酒に興味を持ち始めた若い息子の身体を借りれば、この世に長い間具現化でき、酒を堪能できる。そのような理由で身体を奪ったのだ。黒いドラゴンの事はよく分からん。人化できるのも初めて知ったのだ。しかし、奴が破壊の元凶で厄介なのは事実だ」


 うちらの世界だと神は人間に手を貸さず、姿を現す事もなく、逆に滅ぼそうとしたりする悪者に描かれる事が多いけど、この世界も同じ様なものなのかな。


 ノックして、一人の騎士が入って来る。


「何、ケンジに使いが来ている?」


「何でしょう?」


「ここに連れて参れ」


 連れて来られたのはフクだった。

「どしたー?」


「お邪魔しますのニャ。ご主人様、ダイゴローが店に来てるのニャ。何だか慌てててご主人様に会わせろって言ってるのニャ」


「ダイゴロウさんが? はて、どうしたんだろうね」


「ケンジよ、こちらの話は終わったので退席しても問題ないぞ」


「そうですか。それではこれで……」


 宿屋を後にし、急いで立ち飲みチコリへ移動した。そこには興奮しているダイゴロウがいた。


「遅かったな、待っていたぞ!」


 ダイゴロウは興奮していて、何かウズウズしている。


「どうしたんだ、そんなに慌てて」


「日本酒の件なんだけどよ、酒を造る蔵とか桶を準備しようとしていたら、その全部が朝起きたら蔵の中に置いてあったんだよ!」


「落ち着いて! 朝起きたら蔵が酒蔵として完成していた、って事なんだな?」


「そうなんだ! 立派な桶がデデーンといくつも置いてあった。ありゃ、使っても大丈夫なのか?」


「……何となく、何となくだけどそれをやったのはバッカスの様な気がする………」

 バッカスは日本酒の事も嗅ぎ付けていたんだろう。この事は王様にも報告するとして、とりあえずは日本酒を造れって事ですかね。


「問題ないから、ダイゴロウ達は仕込みに取りかかってもらって大丈夫だよ」


「ケンジが言うならそうしよう。それじゃあ俺は戻るとするか」


「僕も途中まで一緒に行きましょうか」

 王様への報告は迅速に、だし。


 フクと既に『出勤』していたチコリを小脇に抱え、ゴツいダイゴロウと歩いていると皆、ギョッとして見てくるのだった。

 子供を誘拐している悪者達、みたいに見えるんでしょうね……トホホ。


 造る予定の日本酒についてアレコレ話していると、あっという間に宿屋へ着いてしまった。

 すんなりと通してもらい、すぐさま本日二度目の王様との面談になった。

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