200話
アンバーに戻ってからは毎日忙しくしていた。何せ、同居人から家族になった訳で。色々と取り決めも多くなり……。
年長組は話し合いの元、ローテーションで一緒に寝る事になったが、フクを始めとする年少さん達は、事が終わると勝手に部屋に入ってきていた。なので、事後は寝間着をきっちり着直す事にしている。
もう少ししたら性教育もしないといけないんだな。はぁ、こんな事、夫婦で悩む事じゃないよな。
マクダウェルバーガーができてからというもの、超腹減ったー、な冒険者達はそっちに流れてしまっていた。
「ご飯物を出すの、少し控えてみるか?」
「うーん、それでも締めに食べたい人が出てくるから、量だけ少なめにすればいいと思うわ」
ラムがそう言うならそうしよう。客達を見る観察眼はラムが一番だからな。
「ご飯物はいいとして、そういや随分日本酒を仕入れたんだな。いつの間にか冷蔵庫もあるし」
「トダ村の日本酒でここの人達も随分と慣れたでしょ? だから、味の違いも感じて欲しいし。それに、好みの酒を探すのも楽しいでしょ?」
店の奥に備え付けられた冷蔵庫は、かなりの数が収納できる大きなものだった。
北は北海道から南は九州まで、俺ですら口にした事のない酒が冷やされていた。
「これ、全部を説明しながら売れる店員はいるのか? 適当にやってちゃ客離れに繋がるぞ」
頼んだのと違う好みに合わない酒を出されたら、俺なんかは再訪はないもんな。
「それね、瞳子が得意なんだって。皆を指導してくれるって言ってたから、店が終わったら勉強会を開こうと思ってるわ。こっちの人は賃金が出れば問題ないみたいだし」
「へぇ……本業は大丈夫なのかねぇ。マクダウェル前大統領の事も、結局書けなかっただろ?」
「それ、彼女の前で言っちゃダメよ? かなり落ち込んでたんだから。それに、新聞記者としても、一応こっちへ自由に出入りできる人間として、期待はされてるみたいなんだから。日本酒の講師をやる前に落ち込まれちゃかなわないのよ」
その後、ラムには散々念押しされたのだった。俺ってそんなに信用がないかな?
「え? ダンジョンがどうしたって?」
トダ村の村長の娘、シャノンが立ち飲みチコリにやって来た。かなり慌てた様子だ。
「ダンジョンのボスが倒されたのよ! 困ったわぁ……村長の娘として、こんなに困った事なんてないのよ」
「ボスが倒されるとどうなるの?」
「はぁ……ケンジはそんな事も知らなかったの…………。ボスが倒されるとリセットされてモンスターは強くなるし、フロアも増えるし、アイテムの傾向も変わるのよ……」
「あ、ああ! エッチなレアアイテムはなくなっちゃうんだ。いい事なんじゃないの?」
「……エッチなのは私は嫌いだけど、村に集まってくる冒険者達はそれが目的だから、変わっちゃうと村に来る人数が減っちゃうじゃない……」
シャノンは変にモジモジしている。スカートをお股に挟み込むのはちょっとやめてもらっていいですか。仕込み中のサラがジト目で見てくるので。
「でもなぁ、俺に言われてもどうしようもないぞ」
「それは分かってますわ」
「なら、どうして……」
シャノンは目をキラーンと輝かせて言った。
「ケンジにもっとエッチな物を準備して欲しいの」




