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2話

 二軒目は向かいにある『やきとんの店』にやってきた。


 ここもタイミングが良くないと入れない店で、その焼きの技術に惚れ込んだ客が集う人気店なのだ。


 特徴は注文を受けてからの部位を切り分けて串打ち、そして炭火で焼く。モツを仕入れに行って帰ると仕込む時間がないみたいでこの様なやり方になったとか。

 ちなみにこの店には食べた後の串を入れる入れ物も無い。使い回しをしないのだ。


 そんなだから、店主に手間をかけさせないように、誰かが頼んだ物に乗っかる形で注文するのもマイナールールになっている。



 レバーとハツを頬張る頃、隣のサラリーマン達が出て行った。


 そこに滑り込む様に座って来たのが、この店には似合わない若くて可愛い娘。


 入るなりメニューを手にして固まったように動かなくなったその娘。

 マスターはチラッとそれ見て、あえてこっちに

「何か追加で焼く?」

と、聞いてきた。

 直接声をかけるでもなく、それきっかけで注文しやすい雰囲気を作る、流石のマスターである。


「それじゃぁ、シロをタレで…あと、ナカもおかわりで」

 うちの田舎ではシロはダルムって言われていたっけ。ナカってのは甲類焼酎の王様『キンミャー』だ。


「シロ、他に欲しい人、いる?」


「あ、私もシロ、お願いしていいですか?」


「一本でいいの?何本でも焼けるし、今なら他のも大丈夫だよ」


 娘はモジモジしながら、

「シロとふわを二本ずつお願いします。あ、あと、瓶ビールください」


「はいよ!」


 うまく注文できてよかったね。

 しかし、酒場に慣れていないようで酒は瓶ビールと渋いチョイスの娘だな。

 もらったナカを黒ポッピーで割る。


 マナーモードにしていたはずのスマホが鳴る。

「おっと、すいません」

 苦笑いで隣の娘を見る。


「それってXPERICAですか?私もなんですよ、ほらっ」

 急にテンションが変わったぞ。なんだどうした。


「へ、へぇ、ホントですね。XPERICAだ。最新のじゃないですか、僕のは四つも前のモデルですよ…」

 ガラにもなく『僕』なんて言ってしまった。


「えへへ、今日変えたばかりなんで、嬉しくてつい音に反応しちゃいましたっ。私の前のもそれだったんですよ…ほらっ」

 バッグから取り出されるそれは確かに手に持つこれと一緒だ。


 酒が入っている時の会話に意味を求めてはいけない。確かにそうなんだが、どうでもいい話題で楽しくなるのはいいものだ。

 オジサン、なんか楽しくなってきちゃったぞ。


 傍から見れば不釣り合いなオジサンと娘は、会計を済ませて飲み屋街の路地を歩いていた。

短いですが序章ですのでアップです。


ああビールが飲みたいです。

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