199話
俺の田舎での披露宴も無事に終わり、酔ったバッカスが祝福を大パワーで与えた為、山形県鶴田市は働く場所がないド田舎から一転、大企業の本社や工場がどんどんと建てられていくのだった。
にわかに沸く田舎町。俺の個人的な立ち飲み屋も儲かってきていた。
そして、スーパーでの買い物から帰ると、実家が城になっていた……。
「何ですかこれは」
「母ちゃんもやりすぎだって言ったんだけどねぇ……バッカスさんがこれぐらいしないとダメだって、一瞬で建て替えちゃったんだよ。これでアンタの部屋もできたんだから、たまにはお父さんに顔を見せに来なさいよ」
「そう言う母ちゃんもな。最近はずーっとアンバー暮らしじゃないか。もはや実家って呼べるもんじゃないだろ」
こんなのは実家じゃない、バッカスの城だ。
ちなみに一帯の家々にはバッカスからかなりの金額が支払われたらしく、喜んで立ち退いていったそうな。 ちなみに、跡地をさらったら沢山の小判が出てきたらしいけど、それは母ちゃんが着服しちゃって、アンバーで貨幣コレクターに売る事にしたそうな……いいのか?
「何だ、来ないって言ってたのに来たのか」
「だぇ?」
「ん? この人はね俺の妹だよ」
「おにぃ、そんな小さな子と結婚したんだ……お母ちゃんから聞かされてたけど、冗談だと思ってたのに…………」
ヨヨヨと壁にもたれかかる妹。
「はじめまして。チコリはチコリです! ケンジのおくさんれす!」
「初めまして、チコリちゃん。あたしは妹のさと美よ。よろしくね」
チコリは俺の前に来てほっぺをプクプク膨らませている。奥さんになる資格がない、みたいに言われたと感じてしまったのだろう。頭を撫でてやり、持ち上げて抱っこする。それを見つけたフクが走りながらダイブして来た。二人を抱きかかえながら、妹に結婚したと言っても、大人になるまでは妹が増えたみたいなものだと説明する。
「ふーん、そうなんだ。それでおにぃはどっちに住むのよ」
「住むのはアンバーだな。あっちに家もあるし、仕事もあるからな」
「へ、へぇ、そうなんだ。あたしもアンバーに行ってみたいなぁ……?」
急に何なんだよ。
「別にいいぞ。但し、うちの店は今人手不足だ。分かるな? 働いてもらう事になるぞ」
「えー、人使いが荒いなぁ」
妹は猫ちゃんずに逆モフモフされながら、アンバーに連行された。俺らもそろそろお暇しよう。