198話
「ワシからもケンジにお祝いを申し上げる。そうだ、グリーンカードを進呈しよう。バカンスは是非とも我が国へ」
本国では新たに大統領選が始まろうとしていますよー!
グリーンカードもきっと発行されませんよね。
「マクダウェル大統領……国には帰らないんですか?」
「帰っても大統領は続けられないしな。それに、ここのファンタジーな生活が気に入ってしまったのだよ。腕時計とカフスボタンを売ったら、結構な金額になったからな。ワシも店を出す事にした。その名も『マクダウェルバーガー』だっ!」
ハンバーガーショップですか。確かに目の付け所はいいかも知れないなぁ。ハンバーグはつくねの延長線上にあるから、すぐに受け入れられるだろうし。パンは前から食べてるしね。
「とりあえずは立ち飲みチコリの隣に出品する事にした。来週からはライバルだな。今日はうちで出す予定のハンバーガーを差し入れにやって来たんだ」
フクとチコリが、口の周りをソースでベタベタにしながらかぶりついている。それを猫ちゃんずが生唾を飲み込みながら見ているし。彼女らには少し大きいかな。
「ありがとうございます、大統領」
こうして、この世界にもジャンクフードが流通し始めてしまった。見た目と同じに高カロリー。しかも、ライトなビールまで持ち込んできやがった。
こうしてハンバーガーは一気に広まり、立ち飲みチコリの支店横に次々と出店していくマクダウェルバーガー。どっかの弁当屋みたいな戦略だな……。
「ケンジ……飲んでる?」
「飲んでないよー。挨拶ばかりしてるし、それに、皆のキレイな姿を写真におさめておきたいしね」
「ふふっ、それじゃあ、後でゆっくり飲みましょ? 黒ポッピーも持ってきてるから」
「黒ポッピー?」
「初めて隣りに座った時、ケンジが飲んでたのが黒ポッピーだったから」
「よく覚えてたなぁ」
「あー、何二人でイチャイチャしてるのよぅ〜」
ラムといい雰囲気になっていたら、どこからともなくリリィが割って入ってきて、反対側の腕に抱き付いたのだった。
「猫ちゃんずもウズウズしてるくらいなら来なさい」
「「「「「ニャー!」」」」」
せっかくの衣装もしわくちゃだが、人生で今が一番しあわせだよ。あーあ、爪も立てられちゃって、買い取りだなこれ。
アンバーの人達はこんなにも祭り好きだったのか……。
三日間夜通しの祭りが終わり、色々と片付け終わったのは四日目の夜だった。
「お疲れ様でした……従業員の皆さんは、特別ボーナスをもらったら帰って休んで下さい。明日、明後日と店は休みにします。それと、奥さん達は疲れていると思うけど、明日は日本でも結婚披露宴がありますので、準備だけはしておいてね」
「ニャー……凄いハードスケジュールなのニャ」
フクが膝を付いて脱力中だ。
「それにな、ナターシャと大将の結婚式も明後日行われるんだよ。そっちは瞳子が仕切ってるみたいだから、今回の祭りにも来ていなかっただろ?」
「そういえば見かけなかったのニャ」
「何だか楽しそうだな」
「うわっ! 大統領! なんでいるんですか!」
「ワシも日本に行ってみたいのだ」
こうして、マクダウェルバーガーの日本進出一号店は、山形の田舎に出店されたのだった。