196話
「それじゃあ、第一も第二もなしな。皆、平等って事で」
モテないおっさんの晴れの日。
婚約者達が立ち飲みチコリ本店に勢揃いした。ドレスはラムが先頭に立って、日本で仕立ててきたらしい。その辺は俺には内緒で進めていたみたいで、当日のお楽しみという事だった。確かにこれは……皆、綺麗だ…………。
何でも、王様が許せば何歳からでも結婚できるんだそうで、チコリやアイリスにフクもニコニコして、くるりと回ってはスカートを翻して喜んでいる。
それに、平民の居れば特別に重婚もオーケーなんだそうな。
「この歳で家族がこんなにできるとは、思ってもみなかったよ」
人間のみならず、バニラにチョコ、モカとラッテ、ミルクなんかは猫だぞ? 人化しているとは言え猫とも結婚しちゃうんだ、サラリーマン時代の同僚が知ったらなんて言うか……。
リリィはハイエルフだし、俺らが亡くなっても若い姿のままなんだよな。それは寂しい事なんじゃないかと聞いてみたら、笑顔でキスされただけだったよ。達観してらっしゃる。
結婚式で久しぶりに家族が揃ったと思ったら、妹は仕事で忙しいんだとさ。まぁ、転移魔法なんてのがあるのも知らないからねぇ。で、もてない村の住人だった兄を見て、平伏してほしかったんだが。
「準備できたニャン」
「ちくわとささみか、知らせてくれてありがとな」
どうやら花嫁達の準備ができたようだ。
「うーむ、この串打ちってのはやればやる程ハマるものなのだな」
「大統領も国に戻らず、こんな事をしてていいんですか?」
「ふはははは、この国を見よ。ファンタジーを地でいく、まさにこれからの地。わしはな……ウェスタンが好きなんじゃ。ここなら町長に掛け合い、ウェスタンテーマパークをドドーンと作れるだろう! 公約を実現するのは面倒くさいし大変なんじゃ。ワシは堂々と逃げるのだ!」
「大統領……威張りながら言う事じゃないですよぅ……」
「しかし、俺らの結婚式まで祭りにしちゃうのか…………」
アンバーは久しぶりのお祭りに大騒ぎになっている。
近隣からの屋台が出店し、街中に食材の焼けるいい香りが漂う。
「よぅ! ケンジ!」
「大五郎叔父さん、いや、お義父さん」
娘のアイリスを妻にしたのだから、今日から大五郎はお義父さんなのだった。こっちでもいとこ同士の結婚は認められてるみたいだし、悩むことはないのかもしれないけど……いかんせん歳が。十二歳ですもの。
「大事な一人娘なんだ、泣かすなよ?」
もちろんですとも。それに、夜の営みもあと数年待つつもりです。
「ケンジさん、チコリはまだまだ子供だからな、あまり無茶はしないでやってくれ」
オルカさん……無茶って何ですか。人として鬼畜な事はしませんよ!
「あ、お義父さん、二人目、おめでとうございます!」
「ははは、悪いな、うちの事も祝ってもらっちゃってよ。ビールの樽がたんまり届いた時は驚いたが、いいのか、あんなに貰っても」
オルカの奥さんが二人目を懐妊した。そこでお祝いにビールの樽を大量に贈らせてもらったんだよね。
しかし、チコリが隣りにいても、親子にしか見えない……。




