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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十二章 侵略
194/230

194話

「ラム、サラ、お帰りなさい。ところでその人は?」


 スーツ姿のラムとサラだが、一緒にいる変な髪形のオッサンが気になり過ぎるのだ。


「この方はアメリカ大統領のマクダウェルさんです」


「ふぇっ?! アメリカの大統領?」


 そういや、アンバーに来てから数ヶ月して、スマホで大統領選がどうのこうのっていうニュースを見たような気がする。大統領は大衆酒場だけでいいよぉ。


「ふはははは、驚いたか。ワシはこの地を植民地にしたいと思っておるのだ。何でも……しがない王が治めているとか? ワシに治められた方がいいに決まっとる! そこで、この地に詳しい者を日本に圧力をかけて派遣してもらったのだよ」


 こいつ、典型的な悪者キャラだな。


「ケンジさん、これだよこれ。よくないものは既に来てた」


 エリック(ハイエルフ)が耳打ちしてきたけど、対処する前に来ちゃったし。これはどうしたものか対処に困るよね。ラムとサラも、アンタがどうにかしなさいよって目で見てくるし。何故俺に頼るんだ。


「大統領はこの国の王に会いたいので?」


「ふん、まぁ、そうだな。金ならある。国を買い取ってもいいんだぞ」


 この傲慢さはかなり鼻に付く。俺の後ろに隠れたフクの爪も自然に出ちゃって痛いし。サラも随分髪が伸びたけど、その中にちくわとささみが隠れていた。リリィは俺の隣で指先を微妙に光らせているし、まだここに残っているRGW(蘇る金狼)の面々は、国を買い取る発言に剣を抜く勢いだった。


「それじゃあ、王都に行ってみますか」


 王様を呼び出す訳にはいかない。お前が直に行け、とばかりに俺はこいつを連れて魔法陣に乗った。






「今のが魔法というやつか。ふははは、やはりこの国に目見つけたのは正解だったようだな。王都らしいが、我が国の首都に比べれば雲泥の差」


「つべこべ言ってないで、ほら、付いて来て下さいよ」


 いちいち両手を振り回して偉そうに。てか、今、こいつがどうにかなったら俺らの世界はヤバイんじゃないのか。そう考えると背筋が寒くなるけど、俺の知った事じゃないしね。


「ほら、ここが謁見の間。少し待っててください。あ、動き回っちゃ駄目ですよ」


「子供じゃないのだ、分かっとる」


 えーと、王様はどこだろう。あの人に聞いてみるか。


「しかし、映画に出てきそうな城だな。ふむ、あれは騎士団か…………」






「あれ? 大統領、いないし。ちっ、子供じゃないんだから動き回るなよな」


「何だ、訪ねてきた男はいなくなったのか?」


「王様、すみません。どうやら、黙って待つ事すらできない大人の様で……」


 その時だった。衛士が金髪とオッサンを連れて来たのは。

 どうやら騎士団の練習に見とれてしまい、一般人が立ち入る事のできない場所に迷い込んだらしい。


「お前が急にいなくなるから悪いのだ」


「何でそうなる!」


「まぁ、イライラするな、ケンジよ。こんな場所で会ってしまったし、普通の部屋で応対する事にしよう。ついて参れ」


 王様の後について、謁見の間の奥にある部屋まで来た。ここはいつ見ても豪華な部屋だな。


「むうぅ、何という豪華さだ。全て職人の手によるものなのか……」


「自己紹介が遅れたな。私はこの国の王、エルディンガー二世である」


「王様、こちらは私の世界でアメリカという国の長であるマクダウェル大統領です」


「初めまして、王様」


「それで、この度の訪問の目的は何であった」


「はぁ、それがですね……私の口からは言いにくいといいますか」


「そうか、それではマクダウェル殿に聞いてみよう」


「我々の国はこの国を併合したい。進んだ文化を持つ、我々の国は圧倒的な軍事力も保有している。併合の暁には優れた技術を手に入れられるぞ?」


 言っちゃったよー。もっとオブラートに包んだ言い方もあるでしょうに。


「ケンジから、我々の世界とそちらの世界が一つになったのは聞いておる。文化の違いがあまりにも大きすぎるので、とりあえずは国の代表が交流をし、緩やかに情報を解禁する事になったはずだが? マクダウェル殿は力で我々の国を侵略しようというのか?」


 王様は腰の剣に手をかけた。


「剣を抜くんですか? 戦争になったらこの国は消滅しますよ?」


 こいつ……核を使うつもりか?


「科学、だったかケンジ? 我々の国は遅れているのだろう。お前の造ったあの美味い酒がそれを証明している。しかし、この世界には魔法というものがあるのだ…………それは大魔導師が数人がかりで発動すれば、大陸ごと覆う結界すら作り出せる。それにな、こちらには神々がついているのを忘れるな」


 静かにそう言うと、剣をそうっと抜いた。


「なっ!」


「命のやり取りが日常茶飯事のこの世界に来て、死ぬ覚悟もないのか。そんな者が国の長とはな」


 言うと同時にマクダウェルを斬りつけたのだった。

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