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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十二章 侵略
191/230

191話

 チコリが部屋に突入してから数時間が経った。

 ベッドの上に俺とリリィ。そしてチコリ。

 最近は父親のオルカも慣れてきて、この様な急な外泊も許してくれている。何故なら、チコリは立ち飲み屋で明るく振る舞っているだけでなく、さり気なくオルカの宿をアピールしていたのだ。チコリ、恐ろしい子。


 カーテンの隙間から薄明かりが差し込んできた。この世界の朝は早い。電気がないから、明かるい内に行動するのが基本なのだ。

 ちなみにうちの店はランプから魔法灯に全交換した。


「んんー……わっ! 苦しいと思ったらチコリちゃんがお腹に乗ってるし」


「ははは、懐かれてるな」


 俺の事を好きでいてくれる娘達とは、ローテーションを組んで一緒に寝る事になっている。

 結婚は早目にやるつもりではいるけど、日本人の俺は重婚てオーケーなんですかね。

 エルフのナターシャは大将と日本で入籍したし。そんな感じなので、こちらが休みの日は大将の店を手伝っているナターシャですが、エルフ萌えの方々が遠方からも来るようになったそうで……。


 今日は久しぶりに修道院へ行く予定で、何やら黒ビールが完成したとかいう話だったので楽しみにしているです。






「で、マリーナさん、黒ビールは?」


「ケンジさんが興奮するのは珍しいですね」


 ウフフと笑って、醸造所へ案内してくれた。前より修道士が増えたかな。それに、いつの間にか出来たてを飲める食堂がオープンしていたのに驚かされた。


「味の分かる方が増えてきたんです。それで見学が殺到しまして、そこから飲ませてはくれないのか、と要望が多々ありまして。うちとしましても修道士が増えましたので、大き目の食堂は作る予定だったんですよ」


「あれ? あのスーツの集団は……」


「スーツですか?」


「ああ、あの変わった服の人達です」


 スーツ姿の集団は、修道士から説明を受けて頷いている。見るからに日本人と分かるその集団。これまたフライング入国ですか。


「何でもクラフトビールのお祭りをするそうで、外国のビールを探しているそうなのです。私共としましても、沢山の方々に飲んでいただけたら嬉しいですし、協力しようと思っています」


「代金は何でもらうんです? あの国は金貨なんて流通していませんよ」


「そうなんですか? まぁ、物々交換でもいいんですけどね」


 日本の物で交換ねぇ。金塊だったら大丈夫か。


「金塊だったら用意できますよ、きっと」


 とりあえず日本人達はどうでもいいので、さっさと黒ビールを味見させてもらう事にする。

 担当した修道士も自信の作らしく、興奮気味に説明してくれた。


「常温だと香りが立ちますね。それに丁度いい微炭酸だ」


「ケンジさんから教えていただいてから、私共も勉強しましたから」


「これなら、ビールと黒ビールでハーフアンドハーフもできるなぁ」


「何ですか、それ」


「特別な注ぎ方をすると二層になるんですよ。そうだ、うちのジョッキもこの際、ガラス製に替えるか」


 忘れかけていた魔法でジョッキを召喚して見せる。


「これはビールの色が見えていいですね! 修道院でも使いたいわぁ」


「明日にでも配達させますよ」


「ありがとうございます! 黒ビールはこれから配達いたしますわ」


 黒ビールはあっちで言うところのスタウトみたいにできているので、量を飲んでも飽きが来ないだろうし、これに合わせるつまみも考えたいよなぁ。チーズもこっちだと季節物だし日本から持ってくるか。


「さて、帰って試飲会だな」






「よーし、届いたな。大人組で試飲会するぞー」


 チコリ達がブーブー言ってるので、乳酸菌飲料を水で割って与えておく。


「今度は黒いビールなんですね……コクコク………あれ、凄く飲みやすいです」


 リリィが黒ビールを一気に飲み干した。


「メルヴィはどうだ?」


「香ばしくて私は好きです」


 こちらもジョッキ半分を一気に飲んでいる。


「デレシーは……苦手そうだな」


「苦いですぅ」


 うさぎさんの口には合わないみたいだな。


「ご主人様、誰か入ってきたニャ」


 フクが言うと同時に見た顔の四人が店に入ってきた。


「あ、Sランクの」


 王都店に来ていたSランクパーティが何でここに?

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