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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十一章 惹かれ合う世界
190/230

190話

「それで、会いたいって人はどこニャ?」


「向かいの中華酒場にいるよ」


 とは言っても、相手は猫なんですけどね。しかし、今更驚く要素でもないというのが何とも野良猫があっという間に人化しちゃったし、ちくわとささみみたいな妖精みたいな猫もいるしね。


 連れ立って中華酒場を訪ねると、ベニから二階に案内される。魔法がある世界はいいね。床や壁などに着いた油をクリーンアップして簡単に除去できるし。ベタベタの中華屋さんにならないので、客として来ても気持ちいい。靴底が貼り付く感覚ってのは、思った以上に気持ちの悪いものなんだよね。


「だんごを連れてきたよ」


 ノックしてそう言うと、中から返事が返ってくる。


『どうぞお入り下さい』


 中に入ると、椅子に座ったレモーネにみりんが抱かれていた。みりんは毛繕いに夢中のでこちらには気付いていない。


「ニャ?」


 こちらに気付くみりん。


「ん? 猫?…………あれ? 知ってる猫かな? 何かそんニャ感じがするんだけど」


 だんごがみりんに近付いていく。


「! さくらかっ!? さくらなんだな?」


「え? まさか……おにぃ?……なの?」


 だんごに飛び付いていくみりん。受け止めてグラつくだんご。それは、可愛い少女が大き目の猫を抱く姿だった。


「なぁ、ホントに兄妹だったのか?」


「うん! この猫は確かに私の事をさくらって呼んだ! おにぃに間違いない!」


「ちっちゃい姿になったけど、匂いは変わらない。妹のさくらだよ」


 お兄ちゃん、何で妹の匂いを嗅ぎ分けられるんですかねぇ。今は猫だけれども、元の匂いを嗅いでいないと駄目な訳で。まぁ、感動の再会を邪魔したくはないから突っ込みませんけど。


 その後、二人はとりあえず一緒に暮らす事にしたらしい。とは言っても、まだ故郷に帰る手段は分からないのだけれど。


「あら、みりんも人化できたんだ……」


「多分、ケンジさんの猫愛にバッカスが遊んだせいニャ……」


 はぁ?


「そ、そうなのかー」


「王都の猫は人化しないニャ」


 それに加えて、皆にも渡しているスマホ。俺が近くにいると通信速度が速くなるらしい。ホントかよ。


「さて、それじゃ、さくら(だんご)と……」


たもつ(みりん)ニャ」


「さくらとたもつを王都に送ってくか」


「いいニャよ。自分達で帰れるから。ケンジさんはほら、皿洗いしないと怒られるニャよ」


 さくらが指差す先には山になった皿が……。


「はい……そうですね……仕事します。それじゃあ、二人とも気をつけてお帰り」






 みりんがいなくなりシュンとしているレモーネ姫。店に出てきてプラプラしていたと思ったら、その内に客達と話をしたりと自由に行動している。

 メイド服を着ているのに働かないので、かなり変な空気を醸しているけど、酒を飲んで酔っているので誰もそこを突っ込んだりしない。


「お兄様達、お代わりは如何ですの?」


「おぅ、そうだなぁ、もらっちゃおうかな?」


 その会話を聞いて、すぐにサーバーからジョッキに新エールを注ぐ。


「えーと、お酒はどうすればいいんですの」


「もう注いであるからこれを持っていって」


 仮にも王族に仕事をさせていいのかという問題もあるけど、あの親にしてこの子なので、とりあえず静観しています。ジョッキを持つ腕が少しもぷるぷるしているのが可愛らしいみたいで、瞬く間に人気者になってしまった。


「そう言えば、明日あたりでしたっけ?」


 リリィが聞いてくる。


「え、ああ、ラムとサラか」


 長らく政府筋にこっちの事を教えたりしていたのが、ようやく休みをもらえたらしい。


「明日からはラムとサラにベッタリになるんでしょうから、今夜は……ね」


 しかし、それは指をくわえて見ていたチコリによって阻止されてしまうのだった。

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