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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十一章 惹かれ合う世界
185/230

185話

「すげぇ!」


 サキはダンジョンに入りたそうだったが、怪我をして出て来る冒険者を見て、黙ってしまった。


「本物なんだな……なぁ、あの人の怪我、大丈夫なのか?」


「あの程度だったらポーションでも魔法でも治せるよ。傷跡も残らないしね」


「そりゃスゴいな。なぁ、こっちとアタシらの国は上手くやってけるのかな」


 怪我の治し方一つでも、傷跡を残さないで治すのは日本だと難しい。それがここではできる訳で。


「医者なんか受け入れる人は少ないんじゃないかな」


「やっぱそうかぁ……」


「サキは以外に物事を考えてるのニャ」


「あ、お前ー、小さいのに上から目線過ぎるしぃ」


 その時、ダンジョンから強い風が吹いた。レアアイテムが大量に風に乗って舞う。


「うわっ、何だよこれ。ん? 雑誌の切れ端か?…………えっ、裸!?」


 ネット全盛の今、見たくらいではどうって事のないヌードグラビアだった。


「何だこれ! 何でダンジョンからこんなのが出てくるんだよ! エロ過ぎて捕まっちまうぞ!」


「サキ、捕まらないから」


「バカッ、捕まるよ、ヌードは御法度(ごはっと)だろーが!」


 モザイクで隠れてるのは御法度じゃねー。


「ア、アタシは下ネタダメなんだよ……」


 真っ赤になってその場にへたり込むサキ。今時珍しい娘だな。まさかと思って手を貸そうとすると、やはり腰が抜けているし。


「ここのダンジョンは、日本の廃棄雑誌がレアアイテムとして出てくるんだよ。ここの人達はサキと一緒でエッチな事に免疫がないんだよ。だからこそのレアアイテム扱いなんだけどね。もう、次に行こうか」


 腰の抜けたサキをおぶって、魔法陣から転移した。






 王都は相変わらず人が多い。石畳なので埃っぽくないのは助かるけど、道に連なる屋台からはスパイスの香りや、肉の焼ける香りが立ち込め、多種の体臭や荷物を引く獣の匂いが混じり合い、一種独特の空気になっている。


「何だかスゴイね」


 サキは鼻を押さえながら眼下に広がる街並みを見ていた。ここは王城のテラス。俺ら立ち飲みチコリのメンバーは、王様から許しを得ているので立ち入りが自由なのだ。


「ちょっとクサいのがたまらないのニャ」


 フクは変な匂いフェチだな。まぁ、その内、下水道も整備されるんだろうけど、獣人の排泄物ってのは獣のそれを受け継いでいるらしく、特に匂ってしまうのだった。


「それじゃあ、王都店へ行きますか。ミルクも頑張ってるみたいだしな」


 色んな意味で城の中では有名人の俺らは、警備している騎士団にも顔が利く。サキがスマホで写真を撮りまくっているけど、SNSに上げちゃうんだろうなぁ。そこまで俺は知らん。


「オッサンてばすげーな。皆から尊敬されてるぞ。何やったんだよ」


「ここの王様とは友達な訳。それで、危機から救ったり救わなかったり?」


「何で疑問形なんだよ。まぁ、いいや。オッサンも見かけによらずってやつなんだな。アタシは年上好きだから、彼女になってやってもいいんだぜ?」


「シャーッ! 何が彼女になってやってもいいんだぜ、なのニャーッ!」


「ところでこのチビはオッサンの何なんだよ。ペットか?」


「ウニャーッ! 奥さんなのニャ!」


「奥さん……? お前、いくつだよ。どー見てもまだ子供じゃんか。あ、あれだ、天才無免許医の相棒みたいなあれか?」


「アッチョンブリケ!」


 どっちもどっちだし、仲いいなオイ。


「と、とりあえず店に行こう」


 肩車のフクに腕に引っ付くサキ。威嚇するフクに軽く受け流すサキ。いいコンビに見えてきたぞ。


「下ネタダメなくせに男にくっつくのはいいのか?」


「別に変じゃないだろ? オッサンはおかしな奴だな」


 俺じゃなくてお前が少し変なんだよ。


「ほら、あれが立ち飲みチコリ王都店だ。今日も賑やかだな。ん? 店先にいるのは……」


 俺を見つけてトタタタタと駆け寄って来るのは……。


「ん!」


「またちっこいのが来たぞ」


「チコリ、どうしたんだ? オルカさんは来ていいって言ったのか?」


「……ん」


「駄目じゃないか、心配しちゃうだろ」


「ご主人様、怒らないであげて欲しいニャ。チコリもご主人様と遊びたいんだニャ」


 ちっちゃなエプロンまで着て、店先で客引きしてたのか。なんて健気な。


「チコリ、来る時は誰かと一緒じゃないと駄目だぞ。オルカも俺も、それに皆も心配しちゃうからね」


 チコリを抱き上げて店内に入ると、客達が冷やかし始める。


「大将、モテるね!」


「どーだ、羨ましかろう!」


 俺はお子様だけにモテるんじゃないんだぞ。ま、モテても一切手を出していませんが……。


「あ、ケンジさん。洗い物を手伝って欲しいニャ! 今日は料理が沢山出ているのニャ」


 はいはい、入るやいなや、手伝いですね。ミルクもしっかりしてきたし、感慨深いものが……。


「あ、ここいいですか」


 眩しいと思ったら、オハラさんが入って来たよ。ああ、あれの収録ですか。つーか、まだ、文化交流してないはずなんどけどなぁ。

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