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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十一章 惹かれ合う世界
184/230

184話

 そのヤンキー女子高生サキは、バイトをきっちりこなす娘だった。


「ふーん、他にも店やってんのか。どんな風に仕事してんのか見てみたくはあるな。なぁなぁ、オッサン、今度連れてってくれよ、な、いいだろ?」


 口は悪いけど何だかやる気はあるみたいだ。それに、色んな事に興味があるのはいい事だ。特に飲み屋なんてのは話し相手になる場合もあるし、自分の興味の範疇外を振られることもあるからだ。


「サキはいつ休みなんだ? その日だったら連れて行ってもいいぞ」


「ホントか! ありがとな、オッサン」


 日焼けしたサキが腕に抱き付いてきたけど、最近の娘は発育がいいねぇ。こんな事をやっていてはフクから怒られちゃうかな。ご主人様はつじょーって。


「ついでだから明日の仕込みを少しやっておくから」


 安く仕入れられた牛すじの下処理をやりながら、異世界って何だったんだろう、と考えていた。






「うわぁ、何だここ、映画のセットみてぇだな! うひゃー! 店長みたいなモフモフなのが沢山いる!」


 サキはピンクのスウェット上下にビーサンという出で立ちだ。近所のコンビニに行くんじゃないんだぞ、まったくもう。


「何で手を繋いでるんだニャ」


 フクが手を引き剥がそうとすると、サキは左手でフクをモフモフしだした。トローンとした目になるフク。


「ウニャー! こうなったら、フクは抱きつくからいいんだニャ」


 フクは最近、前にも増してヤキモチを焼くようになったけど、その相手については諦めるのも早くなった気がする。


「第一夫人はヨユーを見せないと駄目なんだニャ」


と、言う事らしい。なるほど。

 でも、フクよ。今のお前はまだまだ結婚できる歳じゃないのだよ。


「オッサンはモフモフなのが好みなんだな……ふーん。あ、本店はうちんとこと同じ立ち飲みなんだ。焼台の姉ちゃんはえらい美人だな……耳が長いって事はあれか、エルフってやつか。後はこれまたデカイ胸だなー」


「アタシはメルヴィ。ケンジさん、この方はどなたですか?」


「えーと、俺の国の知り合い。うん、知り合い。少し変わってるけど、悪いやつじゃないから。今日はこっちの国の見学中なんだよ」


 訳あって、まだ『立ち飲み 肉球』の事は言えないのだ。


「そうなんですか。その派手な色の服はそちらでは普通に着てるのかしら」


「ああ、これか。欲しいんなら今度持ってきてやるぞ。何色がいいんだ?」


 何か知らんけど、あっと言う間に仲良くなってしまった。更にこちらの野菜の味見から調理の仕方もキチンと聞いていたし、サキって見た目と話し方で損をしてるよなぁ。ヤンキーだけど、酒もタバコもやっていないみたいだし。乗ってるバイクも電動なんだと。騒音も撒き散らしてないのね。


「あら、メルヴィってば楽しそうにしてるけど、その子は?」


「ケンジさんが連れて来たサキよ。サキ、こちらはデレシー」


「オッサン、店員にコスプレさせてんのか?」


「させてねーよ! デレシーは兎族なの」


「そ、そうなのか。よろしく、サキです」


「デレシーよ。よかったら触ってみる?」


 サキはデレシーの耳をモフっている。そして、スマホを取り出して見せていた。


「こんな格好が似合うと思うんだよねぇ。まぁ、かなり大胆な格好なんだけどさ」


「身体の形が丸分かりなのね……」


 赤くなりながらメルヴィとデレシーは少し乗り気になってきていた。本人達が着たかったら、経費で買ってやるけど……イタタ。フクが爪を立てて背中によじ登ってくるし。


「ご主人様は簡単にはつじょーしちゃうから注意が必要ニャ」


「分かった、分かったから。今夜は風呂に一緒に入ってやるから、そんなに怒らないでくれよ」


 頭を撫でて耳の後ろをかいてやる。


「おいおいオッサン、こっちが恥ずかしくなっちまうだろ。それに、お客さん達も変な空気になってるし。ほらほら、次の店に連れて行ってよ」


 へいへい、空気の読める子は好きよ。店の裏の魔法陣からトダ村店へ移動した。






「ここはうちんとこと同じくらい田舎だなー」


「ん? サキは市内じゃないのか」


「アタシは市内でも藤島だからさ」


 藤島というのは市内から離れていて、周りは広大な田んぼが広がる田園地帯だ。何とか鈴木とかいう芸人に、拳銃の弾みたいなバンドのボーカルの出身地でもある。


「そりゃ、大変だな。ま、何かあったら俺か店長に言いなよ」


「送ってってくれるのか?」


「さっきの転移魔法陣を使えばすぐだぞ。まぁ、交通費は出なくなるけどな」


「お! マジか。そうしてくれるとありがたいよ。親兄弟には心配をかけたくないからな」


 昨今、色んな事件が起きてるし、夜の仕事は帰る時が心配だからな。


「ああ、でも、あれだぞ、通学にも使っていいけど、魔法陣の事は家族以外には秘密だぞ。まだ政治レベルで許可されていない事だからな」


「オッサンも結構やるじゃん。アウトローってやつ? アナーキー?」


 王様とも神様ともベッタリですから。


「それよりほら、あれがダンジョンってやつだぞ」


 スマホでダンジョン系のゲームをやっていたのを知っていたので、店より先にここへ連れてきてしまった。

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