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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十一章 惹かれ合う世界
178/230

178話

 何だか疲れて、朝まで一度も目が覚めずに寝ていたようだ。ジットリと寝汗をかいていて気持ちが悪いが、何故か身体の両側は暖かかった。

 寝返りせずに顔を動かして確認すると、右にはラムが、左にはリリィが引っ付いていて、股の間にはフクが丸まって寝ているし。


「今日も天気がいいねぇ……」


 そっとベッドから抜け出して窓から空を眺める。

 その内、条約とかその辺がきちんとなされれば、前みたいに飛行機もバンバン飛び交う事になるんだろうね。ドラゴンとニアミスとか、ニュースになりそうな予感。


「むにゅう? ご主人様起きたのニャ?」


「ゆっくり寝てたらいいよ……皆疲れてるしね」


「んニャ……そうするニャ……」






 情報伝達が早くないこちらの国々でも転移魔法をフル活用した事で、殆どの民が住む大陸が別世界の国々と同じ星の上に存在している事実を確認、認知していた。地球側の観測では軌道上にある衛星などもそのままあるらしく、送られたデータから、この星は地球より少し大きくなっているのが分かった。太陽も他の惑星も太陽系のままなので、地球側は迎えた形になる。


「しかし、色々と宇宙的影響がありそうなものだけどなぁ……まぁ、神様がなんとかしちゃったんだろうし、難しく考えなくてもいいか」


 昨日はルナが王様をぶん殴ったせいで、こっちの酒場文化を楽しむはずが、最後は微妙な空気になって終わってしまったし、ルナが言ってたレモーネ姫の存在も気になる。

 チャーム魔法って魅惑魔法の事だよな。俺には関係なさそうだが、今まで色々と巻き込まれているし……気を付けるにこした事はないか。


「さて、土曜日だし、トダ村の屋台の準備でもしますか」


 何だか凄く久しぶりな感じだな。

 ついて行きたがったので、リリィとフクが同行している。

 最近は猫ちゃんずが頭角を現し始め、各店舗をローテーションで回す責任者になったのだ。なので、俺にくっついて仕事をする事が少なくなってしまった。残念。


「何だか冒険者が多くなってないか。さっきからやたらとすれ違うけど」


 四、五人のパーティーがひっきりなしにアンバーを目指している。


「それに、気持ち悪いくらい皆笑顔だ」


「ダンジョンのお宝がまた出だしたみたいって聞いたけど」


「えっ!」


 また無修正のポルノが!?

 あー、うん、日本で廃棄される雑誌などは、こっちじゃまだお宝なんだな。男女の営みは結婚してからが普通で、娼館も殆どない世界だものねぇ。


「私も見たけど……あれがカルチャーショックってやつなのね。何だか身体の内からもぞもぞとしてくる感じが……」


 隣で悶だしたリリィからフクの視線を守りつつ、あっという間のトダ村だ。アイリスの家も久しぶりだな。






「よぅ、ケンジ。世界はまた狭くなっちまったな」


 大五郎叔父さんが笑いながら言う。

 異世界で時間を飛び越えて生きてきた大五郎が言うと、言葉に重みが増すな。


「地球上に国が増えましたからね。それに、文化以上に価値や考え方が変わってきます。戦争している場合でもなくなりましたしね。何せ、窓口は日本だけですから」


 この大陸とのパイプ役は日本の、それもうちの一族がやる事になった。本家の仕事なので、一族といってもうちは余り関係なく、アドバイスを求められたら応えるくらいでしかない。


「核兵器に意味がなくなったのは大きかったか。バッカスが泥酔して消したんだろ? 神は怖いねぇ。ところで、丁度いい時に来たな。これから蔵で瓶詰めするんだけどよ。手伝っていかないか」


 純米大吟醸の直汲(じかぐ)みかぁ。いいな、それ。


「羽黒からちょっとアドバイスを得てな、この酒には直汲みもいいんじゃないかって」


 蔵の中はヒンヤリしていて気持ちがよい。


「フクもやるのニャ!」


「あらぁ、私もやりますわよ」


 フクとリリィは何故か張り切っている。


「んじゃ、各自詰めた分はそれぞれ、純米大吟醸 フク、リリィってラベルを貼ろうか。俺はそれの準備をするよ」


「あ、それとな、山田錦を手に入れたんで、それも醸してみることにした。鑑評会に殴り込んでやるぜ」


「山田錦で造った酒は、常温でも長くダレないらしいもんな。だから鑑評会向けは山田錦ばかりだけど、大五郎だったらここの米で勝負するかと思ったよ」


「実はな……ここだけの話なんだが、モニョモニョ」




 ええー、アイリスの口噛み酒が美味いのが分かっただってぇ(棒読み)

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