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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第二章 それぞれの思い
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17話

 私、ラムこと堺マユは小学生の頃に事故にあって、三年間昏睡状態だった事があるんです。

 筋力か低下してベッドから起き上がる事も出来なかったから、凄まじく辛いリハビリを重ねなければならず、普通の生活が出来るようになった頃には中学生になっていました。

 中学校に初めて行った時の疎外感はリハビリよりも辛いものでした。周りには知り合いがいても、三年間で皆、成長していて話も合わないのです。


 しばらくして転校の機に合い、その後は至って普通に学校生活を送れたと思います。

 それから、大学に進学して酒を覚え、チェーン店の居酒屋のつまらなさに一人で個人経営の酒場に飲みに行くのを覚え、誰にも内緒にして飲みブログを始めたのもその頃でした。


「昨日は最悪だったなぁ」

 つい独り言になってしまう。


 初めて入った立ち飲み店でいけ好かない男に絡まれてしまいました。その店はオープンしたてで、不慣れな店員は注意してくれなかったし。最悪だったのは、お勘定した後もついてきたんです。それには流石に辟易しました。


「何でついてくるんですか?」

 どうしても一緒に飲みたくってさ、じゃねーよ。


「迷惑なんでやめてもらえませんか?」

 男はニヤニヤするばかり。


 道を行き来する人達は知らぬフリで通り過ぎていくし、世知辛過ぎですよね。

 そうこうしている間に飲み屋街の外れまで来てしまったのに、相変わらず男はついてきます。


「どこまでついてくるんですか? 嫌っ、離してください!」


 遂に腕まで掴んできました。

 その時です。

 その人は突然現れました。


「何やってんのお前?」


「誰だよテメエ!オッサンが邪魔してんじゃねぇぞ!」


 誰だろう?

 えっ?何?


「マユ、こいつ誰?」


「し、知らない人…」


「そっか、知らない人か。知らない人が人の彼女に何してくれてんの?」

 その人はそう言って、男に微笑んだんです。


 凄味のある微笑みに逃げる男。

 ホッとしていると、助けてくれたその人は、

「それじゃ」

そう言って去っていってしまいました。


 それからしばらくして、また飲みに出かけるようになって、行く先々の店でその人を見かけるようになりました。

 見かける度にさり気なく観察すると、私とお酒の好みが似ていたり、チョイスするお刺身の種類が同じだったり。そんな事を知るだけで胸がキュンと締めつけられます。

 それからは自然と目で追うようになり、気になる存在になっていきました。


 そして、あの時のお礼をしようと話しかけようと思い、やきとん屋さんで意を決して隣に座りました。いつになく緊張して、注文もできずにしばらく隣でその人を感じていたのです。

ラム目線の話でした。

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