表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十章 魔王という名の
168/230

168話

「お前が別世界のケンジか……見た目はこっちのと変わらんのだな。俺はダイゴロウだ。こっちのケンジの義理の父親になるんだが、今は行方不明だからな……」


 娘のアリスをクジラの胃に詰めて逃した後は、行方不明なんだな。


「よろしく頼む。ところで、大魔道士と聞いたけどどんな魔法が使えるんだい」


「ふふ、転移魔法はもちろん、召喚魔法も使えるぜ。悪魔を召喚して攻撃させるんだ。後は回復系の魔法も得意だぜ」


 なるほど、この作戦にはピッタリだな。流石、ダイゴロウ。いざっていう時に役に立つのはこちらでも同じ事か。

 主要メンバーで作戦会議を開き、明日に決行する事となった。こっちの案件は時間がないのだ。






 ダイゴロウの転移魔法で一度に転移したのは王都。正に王城正門前であった。

 そこに我々は急いで屋台を組んでいった。

 既に王都の主だった住人は疎開しているらしいから、こんなおおっぴらに作業をしていれば目立つのだが、城からは誰一人出て来る気配がない。


「さて諸君、これからが本番だ」


 おもむろにジョッキにエールやビールを注いで回り、残っている住人達と酒盛りを始めるのである。

 ちなみに俺達が飲むのはノンアルコールビールだ。なので、徹底して酔ったふりをしてもらう。なんちゃって宴会のスタートだ!




 ガヤガヤと賑わい始め、串焼きなどのいい香りも漂っていく。チラリと城を見ると、通路や窓から顔が覗きだしていた。


「飲酒ってのは世界の常識かと思いきや、そうでもないのだと知らされた時に、この天の岩戸作戦を思いついたんだよねぇ。上手くいくといいけど」


 城の中にいるのは数十人らしいとの情報なので、全員が誘き寄せられたら作戦を次の段階に進める。

 見取り図に沿って潜入し、地下の牢屋からこっちの世界の母ちゃんを救出する。動画の背景も牢屋であるとの事だったし、後は他に捕まっている人がいれば全員を救い出す予定なのだ。


「ご主人様、城から誰か出てきたニャよ」


 フクが言うのでそっちを見ると、太った男がフラフラと出てくるところだった。


「あれが誰か分かるか?」


 どうやら城に出入りする商人との事だった。肉の脂が焦げる香りにやられては、乗っ取った異世界の精神体も元の体の持ち主に引っ張られる事だろうよ。


「あの人にはそっち(・・・)のビールを注いであげて。後、串焼きもね」


 ふふ、美味そうに飲んでやがる。

 あ、もう潰れた。


「モヤッとしたのが口から出たな。そこへ腰に下げていたビームセイバーを手に取りサクッと。はい、一人目ね」


「ん!」


 チコリが城の方を指差している。更にカモが出てきていた。

 こうして、次々と精神体をやっつけている内に、フクとダイゴロウが城内へと潜入。母ちゃんを始めとした囚われ人達を脱出させる事に成功。全ての精神体は王都の人達から切り離す事ができた。


「で、これからどうするんだ」


 俺はダイゴロウに聞いた。

 精神体は異世界転移してくるのだから、まだまだ諦めていなければ侵略行為をしてくるはずなのだ。


「惑星全体に結界を張ってみせるぜ」


「そんな事ができるのか?」


「ああ、城の中でこれを見つけたからな」


 ダイゴロウが手にしていたのはボロっちい木の棒だった。


「ん?」


 チコリもそれを見て首を傾げている。

 確かに、その辺に落ちていそうな棒っ切れだからなぁ。


「今は亡き、宮廷魔術師の魔法の杖だよ。これなら俺の魔力がかなり増幅されるからな」


「なら、もう任せて平気だな。こっちの世界もまだまだ大変なんで」


「ケンジ……さん、もう行ってしまうんですか?」


「アリス……ゴメンな。お互いの世界が平和になったらまた会おう。お父さんも見つかるといいな。祈ってるよ」


 こうして、俺達は異世界から元の異世界に戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ