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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十章 魔王という名の
159/230

159話

 相変わらず混沌としている店内。

 カウンター内には焼き場にナターシャ、板場に耕ちゃん、そして助手としてバニラが入っている。洗い物は給仕メンバーがその都度洗っているが、サラが抜けているので少しだけ混雑していた。


「あ、ケンジ、どこ行ってたのよ。お願いがあって探してたんだから」


 ラムが赤い顔をしながら困っている風に寄って来た。


「悪い悪い。すぐに洗い物を洗うから」


「それもあるけど違うのよ」


 奥のカウンターを小さく指差す。

 何やら三人組がハイテンションになっている。


「祭りで興奮しちゃってるの?」


「違うわよ! 例のレアアイテムを女の子達に見せて喜んでるのよ。質が悪いったらありゃしないわ。どうにかしてよ!」


 トラブルを防ぐのも俺の役目だ。

 しかし、腕っぷしで負けると分かる相手、しかも酔っぱらいに注意するってのは……はあぁ、ケガしないといいけど。


 近付いてみると、彼らが持っているのは洋物のポルノだ。この、安臭い紙質とボケた色合いの印刷が妙に艶めかしい。


「お客さん達盛り上がってますね。何かいい事でもあったんですか?」


 空いた食器を下げつつ話しかけると、(くだん)のレアアイテムを見せてきた。


「マスター、トダ村のダンジョンは知ってるだろ? そこから出てきたのがこの上質(・・)な紙でできた、本物みたいな姿絵だ。凄いだろ、美しい女がこんな所まで」


 ネット、スマホ時代に生きていると、この程度ではリピドーが開放されない。

 この世界の人達は今、昭和の小学生が神社の境内や橋の下で、妙にふやけたエロ本を見つけてしまった時と同じ心境なのだろう。


「おおっ、これは凄いですねぇ。これだけのレアアイテムだといくらぐらいで取引されるんですか?」


「マスターも好きもんだねぇ。そうだなぁ……これだと金貨一枚にはなるだろうよ」


「それはそれは。かなりの物ですね。ところで、祭りも最高潮でして、酔った方が押し寄せます。酒などこぼされない様に注意して下さいね。濡れたら大変だ」


 それを聞いたお客さん達はハッとして、レアアイテムを袋の中にしまった。セクハラする楽しみよりも価値がなくなる方が痛いもんね。

 しかし、俺ってマスターなの? ずーっと客だったから変な感じだな。


「ケンジ……凄いわね。あんなにセクハラしていたのにしまっちゃったわ。それで、忙しいのにカッコつけてんのは何なの?」


「俺の事、マスターだってよ」


「何だそんな事。ほら、突っ立てないで動いて動いて」


「そんな事か……まぁ、そうなんだけどさ」


「ちょっと、落ち込まないでよー。もう皆、ケンジの事はマスターだって思っていたわよ。頼りにしてるわよ……チュッ」


 ウワッ、客でごった返す店内で口にキス?


『ヒューヒュー!』


 あー、こっ恥ずかしい。


「むむむむむ!! ご主人様! 発情しちゃダメですニャーー!!!」


 フクの言動で、クジラ祭りは更に盛り上がりを見せていく。

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