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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十章 魔王という名の
157/230

157話

「いつの間にか自分の事を俺って言う様になったのね」


「いいカッコしいだったんだよ。お前がやきとん屋で隣に座った時からな」


 単に素の自分を出したかったからだよ。これから魔王との戦いもあるしね。

 しかし、日本でサラリーマンをやっていた俺が、猫好きの俺が何でまた魔王と戦うんだろうねぇ。


「でも、トカゲのおっさんでしょ。プッ……」


「あれはないよなー。チコリは喜んでたけどさー」


 しかし、アリスの世界では魔王が賢輔()らしいし、いや? 弟みたいだけど別人として考えなきゃダメなのか。

 シリアスはゴメンだね。ゆっくりとビールでも飲みたいよ。


「そういえばくじらのおでんは食べた?」


「まだだけど、どうかした?」


「日本の耕ちゃんのくじらのおでんは最高だったでしょ? ここのくじらのおでんは更に上をいくのよ! 脂の旨さも、肉の旨さも」


「あの恵方巻きがそんなにか。確かに赤身の刺身は肉の味が濃かったからなぁ。肉以外の部分が更に美味しいとなると……口開け後の店内はどうなってしまうのか………」


 猫ちゃんずのバニラにチョコ、モカとラッテ、ミルクの報告によると、口開け前のお客さんの列は約三百メートルで六百人くらいになっているようで……。


「あー、チョコに頼んでいいかな。列を二列にして長さを縮めて欲しいんだけど」


「アイアイサーなのニャ!」


 どこで言葉を覚えてくるんだろうね。

 チョコはちょこちょこっと猫ちゃんずを連れて、列の形成に動いてくれた。


 仮設ステージでは、既にサラのライブが始まっていた。

 チコリが歌に合わせて踊っている。小さいのに才能の宝庫だ。ん? チコリってば、ルナを無理矢理ステージに上げたな。で、嫌がるルナを見てジョッキを掲げるバッカス(ザシャ)


 店内は猪串とくじら串の仕込みも終わり、くじらのモツ(内臓)を使った煮込みもクツクツと音を立てていい香りを漂わせている。


「耕ちゃん、お疲れ様です。休みなのに疲れたでしょう」


「ははは、それが凄く楽しいんだよね。そうだ……胃の中の物を渡しておくよ。何だか色々入ってたぞ」


 ダンボール箱の中には細々とした物が沢山入っていた。

 一見、何に使うのか分からないような物が多いけど、装飾品や武器、防具等は劣化せずにそのままなので売れそうだ。


「ビームセイバーだ」


 これは弟が持っていた物だ。それが何故クジラの胃の中に入っていたんだ。

 パラレルワールドの弟も作っていたのかな。


「ところで、くじらの肉を少しもらえないかな。あっちでもこっそり出してみようと思うんだけど」


勿論(もちろん)、肉もモツも持っていってよ。あまりの美味しさに皆ビックリするだろうね」






「早目だけどそろそろ口開けしますか」


 余りに並び過ぎているので、口開けを一時間早める事にする。

 暖簾を出すと客達はワッと歓声を上げた。


 仮設ステージのライブも最高潮で、会場では魔汁(まじる)キンミャー焼酎を割物で割った酒を提供している。

 これが飲みやすく、提供しているリリィとだんごも濃く作るものだから、跳んでるファン達はどんどん酔っていく。

 (そば)ではオハラさんの出店が焼きそばを売っていて大盛況だ。海老の串焼きも出しているけど、どこから仕入れたんだろう。


「クジラを仕入れたんだって? この世界のをクジラはまだ食べた事がないから楽しみだよ」


「なら、今すぐ食べてきて下さい。早くしないとなくなりそうな勢いでお客さんが来てますから」


「なら、早く行くニャ!」


 ベニちゃんもクジラには興味津々らしい。

 オハラさんの腕を取ってグングン引っ張っていく。


「ふふ、ベニちゃんとこも仲良しでいいね」


 そこへ瞳子がやって来た。


「ねぇ、ケンジさん。実はクジラの他にこんなのもらったんだけど」


 見せてもらったのは壊れたXPERICA


「俺のと同じ機種だな……」


 そうだ、SDカード。

 探して取り出し、自分のと入れ替えて中身を見てみる。

 そこには知らない人の写真が多く写っていた。動画ファイルもあったので再生してみる。


「ケンジ……助けに来て……」


 そこには母ちゃんが助けを求める姿があった。

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