144話
「何見てんのー?」
「キャッ!」
セシルさんでしたか。
私と同じエルフ族ですが、彼女は猫人族の国に住んでいたらしいです。ケンジさんと同じオリハルコンの指輪を持っています。
「わわわっ、私達じゃない………ええっ、そんな触手にぐちょぐちょにされちゃうの?」
肩越しにレアアイテムを見られてしまいました…。
「この本はエルフの絵物語ってだけで、別に私達の事が描いてある訳ではないと思いますが……」
でも、セシルさんが興奮するのも分かります。
こんな本は今まで一度も見た事がありませんから。
「何を騒いでるんだニャ?」
だんごちゃんがケンジさんのお母さんと家に戻ってきました。
「えーと……これなんですが」
「あらあら、私が昔に出した同人誌じゃない。懐かしいわね、うちに在庫はないはずだから、当時に手に入れた誰かのよね、これ。今ならもっと上手く描ける自信があるんだけど」
「うーむ、母ちゃんさんの世界はかなりエッチなのですニャ……これは………ローパーですかニャ。確かに触手から出る粘液には催淫効果がありますからニャぁ。でも不思議ですニャ。母ちゃんさんの世界にエルフはいないんじゃ?」
「想像上の種族として物語には出てきていたのよ。私も色んな世界に行けるようになって、本物と出会った時は驚いたものだわ。でも、この同人誌はどうしてここにあるのかしらね」
「ケンジさん宛に送られてきたのですが、送り主は分からないのです。トダ村ダンジョンのレアアイテムだと思ったのですが、まさかお母さんの描いたものだとは」
「話の途中で悪いけど、私は部屋に戻るね……」
セシルは変に内股でモジモジしながら階段を上がって行ってしまいました。
「……セシルがイケるなら、私もまだイケるかもね」
お母さんは一人で納得して頷いています。セシルはどこに行くのでしょうか?
「どうしましょう、これ」
「そうね、貴女達には性教育が必要ですし、少しはエッチな物に触れるのもいいかもしれません。それは私が高校生の頃に描いた物です。初めてのお誕生日席でドキドキした思い出の作品……今の持ち主は私ではありませんが、ナターシャに進呈します。本物のエルフに読んでもらえるなんて光栄な事ですよ」
私はエッチな本を手に入れた。
その後、次々とケンジさん宛に荷物が届けられて、中身は同じ、同人誌という本でした。
猫耳のエッチな本……魔法少女のエッチな本……そして、若いラムさんが、布の少ない下着みたいな格好で描かれてるカラフルな本がテーブルに乗っています。
「これも母ちゃんさんが描いた物ですかニャ?」
「これは時代が違うわね。私はケンジが高校生になる頃にはやめていたから。だんごちゃんの世界にはマンガってあるのかしら」
「絵本はあるけど、全部子供向けですニャ。この様なエッチな物は映像のがありますけど、アンダーグラウンドですニャァ」
「特に日本て国が異常なのよ。でも、ラムちゃんがグラビアをやっていたなんて聞いてなかったわよ」
確かあれは牛乳で作るアイスキャンディーという物です。それを食べている絵では、身体にミルクが垂れちゃっています。何でしょう、それを見ていると少し火照ってくるのは。
「とりあえず、フクちゃんと猫ちゃんずには見せられないわね」
私が責任を持って預かる事になりましたが、料理一辺倒でここまでやってきたので、急にこの様な物が私の中にやってきて……色んな事がおざなりになりそうで怖いです。
そろそろ師匠を連れてこないといけない時間ですね。顔を洗ってから行く事にしましょう。
「それじゃあ、アイリスを半日借りるからよろしく」
大五郎んちを出る時にロリに見つかって、強引に付いてこられてしまった。変身の事は部外者には教えたくないんだけどな。
「二人の関係って何か特別なものがありますよねー。ロリもその仲間に混ぜて下さい」
「店で出す酒を造ってもらっているだけだよ」
ロリに見えないようにお尻をつままれた。アイリスってば地味に痛いし。
「カレンおばさんは、二人は婚約してるのよーって言ってましたけど?」
「ロリ、羨ましいんだ?ねぇ、そうなんでしょ?」
「ロリはアイリスが好きなんです。ケンジさんがいい人なのは分かったけど、オジサンに取られちゃうのは何かつまらないんだもん。それにシャノンもケンジさんとアンバーに行ってたでしょ、ロリもアンバーで遊びたい」
「うーん、今日の用事は遊びじゃないんとけど」
「遊ぶのー!」
「蛮杯屋のマスターかベニちゃんにでも頼むか……」
ロリは屋台店員三人の中で一番身長があるけど、中身は一番幼いよなぁ。
「ケンジさん、疲れた。えいっ」
言うやいなや背中に乗ってきた。
「あっ、ズルいよ」
アイリスがロリをポカポカ殴っている。
胸が大きくて当たってると思ったら、腰にも何か当たってるんだけど。何ですかなこれは。
薄っすらとイヤな汗をかきながら、アンバーに戻ってきました。