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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第十章 魔王という名の
142/230

142話

「おはようございます」

「おはよ……」


 早起きしてリビングにいると、リリィに続いて、エルフのお嬢さんが起きてきた。


「二人共、おはよう……よく眠れたようだね」


 リリィは既に私服に着替えて長い髪も結っているが、エルフのお嬢さんはナターシャから借りたであろうパジャマのままで、顔もどこかしら腫れぼったい。


「うー、頭痛い」


「僕はケンジといいます。昨夜の事は覚えていらっしゃいますか?」


「…んー、ケンジさん、ケンジさん……ケンジ…………ああ!立ち飲み屋の人!……あー、また絡んで潰れちゃったか、ゴメンネ。それでわざわざ泊めてくれたんだ。ここってお店?」


「いえ、ここは僕の自宅です。店員も皆、一緒に住んでいるんです。もちろん着替えは女の子達がやりましたので」


「うわっ、何このパンツちっさ!あー、でも、動きやすい感じね、触り心地もいいし…」

 パジャマのズボンの前を、ああ、そんなに広げて……見えてるよ…。


「ゴホン、とりあえずパンツは置いといてもらって、僕としてはお名前を教えてもらいたいのですが」


「おっと、名乗ってなかったか。私はセシルという、見た通りのエルフだよ。酒が好きなので噂のアンバーに来てみたんだ。いやぁ、酒場も多いし、昼からガッツリ飲めるのはいいね!それにあんなに美味いエールはズルいよ。他の街のが飲めなくなるよ」


 最近は酒好きに噂が届いているんだなぁ。この人はどこから来たんだか。


「一応、僕が新しいエールを開発したんですけど、気に入って頂けたようで何よりです」


「え!ケンジさんがアレをつくったの?え!ホントに?」


「みたいですよ、立ち飲み屋のオーナーさんが言ってましたし」

 リリィも何気に会話に入ってきたな。


「凄いなケンジは。日本酒ももしかして?」


「日本酒は僕の国の酒だから、ここでも造ってみたくてね。気に入ってたようだけど?」


「聞いた事のない穀物から造ってるって聞いたけど、あんなにフルーツの香りがするなんて、まるで魔法の様な酒よね。バッカスみたいねケンジさんは」


「バッカスなら上で寝てるぞ」


「……え?」


「話すと長くなるけど、バッカスは店の常連で敵対した事もあったけど今は仲間なんだよねぇ」


「素晴らしい!素晴らしいです!酒の神バッカスが愛する立ち飲み屋……ケンジさん!ここに住まわせて!」


「うちは店員の寮も兼ねているので、働かないなら家賃は頂きますが……」


 リリィは店員です。途中で降りてきたフクや猫ちゃんずも店員だし。

 お金がないならうちで働くか、ダンジョンに潜りなさいよ。昨日の飲みでいくら使ったんだよ。

 色仕掛けでも、ダメなもんはダメです。小さい子が見てるでしょーが。ほら!ない胸を真似して強調しようとしてるし!


「むぅ、そりゃそうよね……で、店員は募集してるのかしら」


「募集してますよ。週末二日間はトダ村の屋台に僕と焼き手のエルフ、ナターシャが出向くので、アンバーの店は手が足りなくなりますし」


「他にエルフがいるの!?」

 この人はどこまで覚えてるんだか。


「店先で串を焼いているのを見て、店に入って来たって聞きましたけど?」


「あはははは……ホントに?」


「それじゃあ、これは?」

 左手のオリハルコンの指輪を見せてみる。


「あーッ!それっ!私のと同じ!ほら!ほら!」

 見せてくる指輪はやはり同じものに見える。


「朝からさわがしいてすけど、どうしたんです?」

 今度はナターシャが降りてきた。


「あ、この人ですね!初めまして、セシルです。猫人族の国の森からやって来ました!」

 ほぅ、猫人族の国にもエルフの集落があるのか。


「初めまして、私はナターシャよ。料理人をしてるわ。セシルさんは私より若いのね」


「あれ……?ナターシャさんも指輪をしてるんですね。それはオリハルコンの指輪と対になっているミスリルの指輪」


「これは師匠に頂いたんです。ケンジさん、ごめんなさい……」

 ナターシャはすまなそうに俯いてしまった。

 僕は肩に手をかけて、

「いいんだよ。大将はいい男だしね」


「で、皆さん変身するとどんなのになるんですか?」


 ん?変身?


「変身て?」


「この指輪を持つ人は変身して力を得られるんですよ。対魔王兵器みたいなものかなぁ」


「何だそれ……」


 いきなりヒーロー物かよ。

 いや、セシルは変身としか言っていない。モンスターみたいな姿になるかもしれないし。


「あ!フク!ニヤリとしないで!」


「変身ニャ!」

 猫時代はやたらと日曜朝のテレビを見る猫だったんだよなぁ、人間らしい猫、それがフク。

 うわ、フクの身体を光が包んでいく!

 渋いオッサンの声で何か言ってる。


 フクの周りを包んだ光が収まると、そこにはセクシーな全身毛皮の猫美少女がいたのだった。

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