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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第九章 暴かれるヒミツ
133/230

133話

 アンバーに戻り、家に帰るとそこには僕と会った事を覚えていないリリィがいたのだった。


「ケンジさん、事情は聞きました。色々と迷惑をかけてすみませんでした。家を探して出ますので安心してください」

 そう言って、僕に渡してきたのはくすんでしまった例の指輪だった。


「ギルドに戻るのかい?」


「はい、そうなります」


「ラムー、人手は足りてないんだろ?」


「そうね、足りてないわね」


「だ、そうだ。また一から働いてもらえないかな。部屋も前のままにしてあるし」


「でも……」

 フクを始め、猫ちゃんずがワラワラとリリィに群がっていく。うちの従業員の大半は訳ありですからなぁ。人ですらないですし。


「ニャーニャー、また一緒に働こうよー」

「ダンジョンだから忙しくなるんニャよ」

「毎日、猪が食べられるニャ」

「マタタビの在り処を教えてあげるニャ」


「フクはリリィと一緒に働きたいニャ。おっぱいの秘密も探りたいニャ」

 フク、揉むな。


「だ、そうだが、まともな引き止めが一つもなかったのは謝る。スマン」


「フフッ。ここは楽しい場所ですね。私の物も全てここにありましたし、皆さんが歓迎してくれるならこのままいようと思います」

 ニコッと笑ったリリィはペコリとお辞儀をした。






 十七階層で初めての宝箱は、開けた途端に襲ってきやがった。今まではいなかったミミックが湧いてやがる。ちなみにミミックは舌の部分が食べられる。まさに赤貝ってな味だから試してみるといい。こいつらは襲ってきても人を食わないから安心しな。流石に人食いの肉を食いたいとは思わないだろ。


 さて、舌を切り取り袋に詰めて階段を探さないとな。

 ……?何か落ちてるな。


「あっ……」

 ヤバい……切れ端……まさか、既にこの階層に到達してる奴がいるのか!?

 それを拾ってポケットに入れる。


「ああー、もう、誰だよ。千切るなよ……って、こんなページあったか?点々と落ちてる…」

 俺が隠したブツとはジャンルは一緒でも違う物が落ちてるんだが…。


「何だ…あの宝箱は……」


 蓋が空いた状態で、バラバラになった雑誌をばら撒いていた。

 そう、俺が隠していたのは雑誌を作るような印刷技術もない、写真もない世界には毒な物、愛用していたエロ本だ。この世界にはまだ刺激が強すぎる。


「蓋を閉じねば…」


 って、固定されてて閉じねぇ…!

 これ、エロ本ばかりじゃねぇな……漫画や週刊誌、新聞も混ざってるぞ。


『…しかし、何なんだろうなこの穴。物を捨てても一杯にならないなんて…』


 箱の中から何か聞こえる。


『…業者に頼むと金がかかるから丁度いいよ…』


 ワームホールかこれ。日本の何処かと繋がってるな。しょうがねえなぁ、斬るしかないか。

 俺は刀で箱を一刀両断した。


「この世界の住人は何故か俺らの言葉も文字も理解するんだよなぁ。下衆な記事から新しい人種(オタク)を生みそうな漫画、エロなんてのはこれ、高く取り引きされるんじゃないのか。どうする、燃やすか」


 ま、俺がした事じゃないからいいか。俺のブツさえ回収できれば。

 とんでもねぇオーパーツを放置したまま、俺は次の階層を目指すことにした。






 こっそりとケンジと呼ばれていた男についてきていたアタシってば、ピューリッツァー賞確実でしょこれ。

 これって別の世界じゃない。明らかな建築様式の違い。店先には…キンミャー焼酎だぁ?えっえっ!あれっ、化粧品も置いてる。


「あの、すみません。この化粧品て…」


「あれ、お姉さん、化粧上手だねぇ。ああ、この化粧品は隣の人から仕入れてもらっててね、アンバーで流行ってんだよ。お姉さんもラムの知り合いかい?」


「ラムさん?」


「何だ、違うのかい。ラムも初めて会った時はお姉さんみたいな格好をしてたからさ。隣にいるから会いに行ってみなよ」


「はい、そうします」

 隣は飲み屋さんかな。看板には日本語で立ち飲みチコリと書いてあるけど。


「あ、いらっしゃい!新しく来てくれる子かな?よかったー、小さい子ばかりで少し困ってたのよねぇ。ささ、入って入って」


 明らかに勘違いされてるけど、好都合なので入り込んでみるとしますか。多分、この人がラムさんだよね。見た目は凄く日本人だけど。






「ふぅ、屋台はこんなもんでオーケーだろ。後は仕込んだ食材を焼くだけ。持ち運びできるサーバーも設置したし、よろしく頼むね」


 ナターシャ、アイリス、シャノン、ロリは既にメイド服に着替えて準備万端だ。


「お、おい、アレって…!」

「この絵と同じ服だな!」


「何だか騒がしくなってきたねぇ。遠巻きにされて、誰もよってこないってどうしたんだろ?」


「ん!」


「あれまぁ、チコリ、いつの間に。野良ちゃんと一緒に来たのかい?ん?何かなこれは……これはっ!」

 チコリを連れてきてくれた野良ちゃんにはご飯をあげるとして、チコリが差し出した物は紙だった。


「何ですか?」

 アイリス達が覗き込んでくる。


「はっ!やめなさい!」

 思わず後ろに隠す。


「何隠してんのよ」

 シャノンからそれを奪われる。


「!!!」

 顔を真っ赤にする三人。ナターシャはマイペースに炭をおこしている。

 紙切れに印刷された女の子は、メイド服を着て何も履いていない下半身を露出していた…。

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