表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第九章 暴かれるヒミツ
130/230

130話

 流石に割り物のバイスの瓶も空になったし、生すだちサワーを頼もうかな。

 ここのやきとんは素材自体の味が濃い。旨味があるからシンプルな塩味でお酒が進む。ビールだけじゃなくて甘味があるお酒が丁度よく合う。箸休め的にししとうをつまんで、生すだちサワーを一口飲む。すだちの皮の香りがフワッと鼻から抜け、その風味と共に炭酸のお酒が心地よく感じる。至福……真壁がいなければ更に至福なんだけどなぁ。

 そんな事を思いながらも、さっきから聞き耳を立てている話題にワクワクが止まりません。


「弟子なんていつかは師匠を追い越していくもんだろ。それが早くても遅くても、追い付くって事は、きちんと教えてるものを吸収してるって事だ。更に自ら考えてものにしたのが実を結べば、それはいつの間にか追い越してる事になるんだろう。ナターシャにはお弟子さんがいるのかな?」

 マスターは串を次々に焼き上げながら、謎の美女と話している。だんだんと店内は煙たくなってきた。


「小さい女の子なんです。それも少し前までは野良猫だった子なんです。もう、店の焼き台を任せられるまでになってしまいました……」


「それは…何ていうかチエちゃんて呼びたくなるような……。猫ってどういう事?」


 そうだよ、少し前まで野良猫だったって何?アウトローな女の子?外国のスラムとかだと普通っぽくて怖いわね。


「行き来しちゃったんですよ。得た力が人化です。可愛いですよ、ホントにもう。料理に興味がある子なので教えたら、こうですよ。焼いたのを食べたら私のより美味しかった……」


「センスのいい子なんだね。そんな子を一人育てられたんだから胸を張りなよ。ナターシャのだって美味しかったぞ」


 胸とか美味しかったとか聞くと、何だか熱くなってくるわね。まぁ、これ、酔ってるだけなんだけど。

 要はナターシャって美女が小さな子に負けちゃったって事よね。


「私、百年以上も料理を頑張ってきたのに…人になって数週間の子に抜かれたんですよぉ!」


「あー、ナターシャはエルフだもんねぇ。でもその子、もしかしたら凄い才能を持った子なのかもよ。そんな子に教えられたんだから羨ましいよ。こっちのんか、連絡もなしに辞めちゃうのが多い時代なんだからねぇ」


 あー、酔ってきたわぁ。

 何よ真壁、七輪で何焼いてんのよ。いい香りがするじゃない、一口ちょーだい。ん、んまっ!

 って、エルフ?エルフって何!トラック?


「なぁ、ナターシャ。料理に勝ち負けはないんだぞ。ましてやゴールすらない。素材や調味料、センス、色んなものが合わさってできるのが料理だ。深く考える事も大事だが、たまには息抜きもしないと。ほら、特別だぞ。これな、魔法使ってっから生でも大丈夫なんだ。店じゃ出してないんだけどな。味は付いてるから食べてみな」


「はい、ありがとうございます。いただきます」


 あれ?

 あれは…あのエッジの立った、え!マジ?


『瞳子さん、瞳子さんってば…聞きました?マスター、魔法って言いましたよね?』

 真壁が何か言ってるけどあまり入ってこない。だって!


「美味しい……」


「だろー。でもな、それ、殺菌魔法が使えないと食べられないからな。真似して出しちゃダメだよ」


「いやいやいやいやいや!マスター!アタシも食べたいですっ!」


『ガラガラガラ』

「こんばんはー、ナターシャ来てます?…ん?どうかしました?」


 くっ、タイミング悪過ぎ。あと少しでアレが食べられたかもしれないのに!

「何なの貴方!」


「何なのって、彼女を迎えに来たんですけど…」

 その客は例の美女を迎えに来たらしい。


「貴方もアレ?魔法使いなの?…うっぷ」


「大将、この人なんじゃない?例の」


「あー……そうかも」


「あれ?そっちの人。ちょっと…」

 童貞さんは真壁に興味があるようね。そっちなのかしら。うー、酔ってきたー……。


「賢輔!お前!」


 けんすけって誰よぅ…こいつは真壁………。


「兄ちゃん、タイミング悪過ぎ…ふふふふ、ハハハハハ!笑えるねぇ!」


「リリィじゃないな…誰だその女」


「俺達の道具になってもらう予定の女だったが、そうもいかなくなってしまったよ」



 やきとん屋さんで運命がクロスした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ