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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第八章 酒の為ならどこまでも
113/230

113話

 小さなボトルではすぐに飲み切ってしまうので、ポケットから出すフリをしてブランデーを取り出した。香り系が苦手だと香水臭いという人もいるけど、飲めないなんて何てもったいないんだ。紅茶に多めに垂らすのがいい。最後はほぼブランデーになったとしても。

 簡単に開けられるコルクの栓を抜き、新しいグラスにブランデーを注ぐ。


「ワインを更に加熱して蒸留し、酒精を高めつつ風味を残し、樽に詰めて寝かせたものになります。ゆっくりと香りを楽しみながら飲むのがお勧めです」


「あれだな、バッカスはケンジが異世界から来たのを感じ取っていたのだろうな。こんなにも多種の酒など、この世界ではまだ飲めぬからな。酒以外にも得るものもある。ケンジに仇なす者はこの国に仇なす者に他ならぬ。アンバーの件は早急に対処しよう。そうだな、騎士団で一人面白いのがいる。後で紹介して、できれば奴を町長代理で連れて行って欲しい」

 ブランデーグラスも召喚魔法でさり気なく出したが、王様はゆうたろうチックな大き目をチョイスしてしまった。気に入ったならいいか…。


「騎士団の人間なら守りの面でも頼もしいですね。ちなみにバッカス達は僕らの世界に滞在中です…かなり気に入ったみたいで、酒屋巡りをしているとか聞きました」

 あれから母ちゃんが毎日メールしてくるようになった。雑貨屋にいても店を離れられないみたいだからな。


「くっ!出来る事なら私も行ってみたいぞ!」


「その辺はスケジュールさえなんとかなれば大丈夫ですよ」

 異世界の行き来も気軽になったものだ。


「ならば、王子の結婚式に使う酒の仕入れと称して行く事にするか」

 顎に手を当て、何やらカッコイイポーズになっているけど、酒が飲みたいだけですからね、それ。






「ケイティさん、お久しぶりです。元気みたいでよかったです」

 ちくわとささみもケイティの周りを飛んで、久しぶりの対面を喜んでいる。

 王子様はニコニコとそれを眺めていて、フクちゃんとだんごちゃんにはお菓子をあげていた。美味しそうだなぁ。


「そう…リリィさんが」

 ケイティさんは、リリィさんとは斡旋ギルドでの長い付き合いがあった。私達よりも彼女の事を知っているはず。


「お店はどう?上手く回せてるの?」


「うん、猫ちゃん達が来てくれたからお客さんも増えたし…あ!それとね、皆でケンジさんの田舎に行ったんだよ。バッカスさんやルナさん達も来ておお騒ぎになったけど」


「そうなんだ、私も行きたかったなぁ。ねぇ、どんな所だった?」

 やっぱり王子様と好き合っても、ケンジさんの世界は気になるよね。私は体験した事を細かくお話した。


「あれ?だんごさん、その腕輪は私のとお揃いですね」


「むニャ?ホントだね、同じ紋様が彫られてるニャ…むニャ?これは召喚されてた時に既にはめられてたのニャ。王子様のはどうしたのニャ?」


「うん、これもね、バッカスに身体を乗っ取られていた時期に付けたらしくてよく分からないんだけど、付けたままにしてるんだ」


 お揃いの紋様?

 これはケンジさんに報告しておいた方がよさそうですね。


「あら、焦げ臭い……」

 戸を開けて廊下を覗いてみました。

「皆さん!逃げてくださいっ!火事です!」


 廊下の先から火の手が上がっていました!






「陛下!城内にて火の手が上がりました!一旦避難してください!」


「火事ですかっ?まさか、僕らが来たからっ?王様、立てますか?」

 こんな事があるなんて分かっていたら、飲ませなかったのにーっ!


「ハッハッハッ!まだまだふらついたりはしないぞ!」

 王様はしっかりとした足取りで部屋を後にする。もちろん僕もついていくが、これが普通の火事か、それとも放火なのかで下手すると死人も出てくるかもしれない。複数箇所で火の手が上がっていたらヤバい。


 サラ達も無事に避難してくれているといいが…。


「ケンジ、こっちだ!」

 王様に誘導されて廊下をひた走る。煙がかなり発生してきていた。


「陛下!こちらです!」

 甲冑を部分的に付けた騎士が駆け寄ってくる。


「おお!お主か!」

 騎士は女性だった。

 ようやく老紳士以外に会えたと思ったら、こんな事が起きてからで…もう!他にも城内は避難する人々でごった返してきた。


「そうだ…消化器カモン!」


「ケンジ、それはっ?」


「これをこうしてっ!こうすると!火を消せるんですよ!まだまだ出しますから、皆さんで火を消していきましょう!」


 くそっ!

 一体どうなってんだ!






 王都に向かって音速で飛ぶ者達がいた。


「ま、お世話になってるしいいんだけどね…何でアンタもついてきてんのよ!」


「心配だからだよ!姉ちゃんは加減を知らないからな」

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