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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第八章 酒の為ならどこまでも
111/230

111話

「ここが王都か…流石にデカイな。三階以上の建物も普通にあるし。人も多い」


 結局、サラの転移魔法が二度失敗した後に王都に辿り着けたのだが、予定していただんごに加えてフクも来ていた。どうやらだんごが気になるらしいが詳しくは教えてくれないのだ。ああ、それと、ちくわとささみもいる。猫だらけだな。なので、サラには猫耳を装着した。あくまでもバランスの問題なのだ、趣味云々ではない。


「真っ直ぐに城へ行くかどうするか…」


「お腹空いたニャ」

 フクが言うので、王都の食べ物屋が気になってきた。


「食べ物屋はどの辺なんだろうね」


「あっちから美味しそうな香りがしますニャ」

 だんごが鼻をヒクヒクさせて言う。


「肉が焼ける香りだな…あっ、ケバブか!これは珍しい」

 すかさず屋台によって買う。

「凄い大きな肉なのニャ…じゅるり」

 フクが驚きの表情で肉の塊が回るのを見ている。

「ほら、食べな」


「肉を切ってパンに挟むんですね…あ、辛くないソースにしてくださいニャ」

 だんごは辛いのが苦手みたいだ。


「サラはケバブは知ってた?」


「知ってましたけど食べるのは初めてです。お肉が香ばしくて美味しいですね…モグモグ」


「これは牛肉みたいだけど猪でも出来そうだよね。ソースも何とかなりそうだし。ん?これは酒ですか?」

 一緒に売っている飲み物が気になって聞いてみる。


「固くなったライ麦パンから造った酒だよ。酒精は弱いんだ」


「なる程、クワスか!へぇ、このセカイもやるもんだね、クワスは飲んだことがないから一つ貰おうかな」

 見た目は黒ビールで味派少し酸味があって、好みは分かれそうな味だけど、キンキンに冷やして飲んだら美味いかも。


「ご主人様、飲んでみたいのニャ!」


「うーん、アルコールはほとんどないような感じだからいいか。ほら、一口だけな」


「あ、間接キス!私も飲みたいです!」

 サラもかよ。

「どうぞ、どうぞ」


「ケンジさんはホントにモテるんだねぇ。だんごは感心してしまうニャよ」


「これってモテてんのか?まぁいいけど、それよりだんごは自分の世界に戻りたいって思った事はないの?恋人とか好きな人を残してきたりとか」


「戻れるのかニャ…」


「サラなら何とかなりそうな気もするけどな。仲間になったんだから、その辺のフォローもするよ。ほら、口元にパンくずが付いてんぞ」


「ふ、フクちゃん、ジト目で見るのはやめてほしいニャ……」


「ついてきて正解だったニャ!だんごも結局はそうなるのニャ!」

 違う違うといいながらフクにすがり付くだんごに、ちくわとささみがじゃれついていて、猫好きにはたまらない風景だった。


「客寄せにちょうど良かったよ。これはオマケだ、持ってってくれ」


 ケバブを沢山土産にもらってしまった。






 僕らは大量のケバブを抱えて城の正門前に来ていた。門番に数個渡して用件を伝える。


「食いもんはありがたくもらうが、王に一般人が簡単に会える訳がないだろう」


「そう言わずに伝えて下さいよ、ケンジが会いに来ましたって」


 そうしたら僕らは、五分も待たされずに中に通してもらえた。

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