111話
「ここが王都か…流石にデカイな。三階以上の建物も普通にあるし。人も多い」
結局、サラの転移魔法が二度失敗した後に王都に辿り着けたのだが、予定していただんごに加えてフクも来ていた。どうやらだんごが気になるらしいが詳しくは教えてくれないのだ。ああ、それと、ちくわとささみもいる。猫だらけだな。なので、サラには猫耳を装着した。あくまでもバランスの問題なのだ、趣味云々ではない。
「真っ直ぐに城へ行くかどうするか…」
「お腹空いたニャ」
フクが言うので、王都の食べ物屋が気になってきた。
「食べ物屋はどの辺なんだろうね」
「あっちから美味しそうな香りがしますニャ」
だんごが鼻をヒクヒクさせて言う。
「肉が焼ける香りだな…あっ、ケバブか!これは珍しい」
すかさず屋台によって買う。
「凄い大きな肉なのニャ…じゅるり」
フクが驚きの表情で肉の塊が回るのを見ている。
「ほら、食べな」
「肉を切ってパンに挟むんですね…あ、辛くないソースにしてくださいニャ」
だんごは辛いのが苦手みたいだ。
「サラはケバブは知ってた?」
「知ってましたけど食べるのは初めてです。お肉が香ばしくて美味しいですね…モグモグ」
「これは牛肉みたいだけど猪でも出来そうだよね。ソースも何とかなりそうだし。ん?これは酒ですか?」
一緒に売っている飲み物が気になって聞いてみる。
「固くなったライ麦パンから造った酒だよ。酒精は弱いんだ」
「なる程、クワスか!へぇ、このセカイもやるもんだね、クワスは飲んだことがないから一つ貰おうかな」
見た目は黒ビールで味派少し酸味があって、好みは分かれそうな味だけど、キンキンに冷やして飲んだら美味いかも。
「ご主人様、飲んでみたいのニャ!」
「うーん、アルコールはほとんどないような感じだからいいか。ほら、一口だけな」
「あ、間接キス!私も飲みたいです!」
サラもかよ。
「どうぞ、どうぞ」
「ケンジさんはホントにモテるんだねぇ。だんごは感心してしまうニャよ」
「これってモテてんのか?まぁいいけど、それよりだんごは自分の世界に戻りたいって思った事はないの?恋人とか好きな人を残してきたりとか」
「戻れるのかニャ…」
「サラなら何とかなりそうな気もするけどな。仲間になったんだから、その辺のフォローもするよ。ほら、口元にパンくずが付いてんぞ」
「ふ、フクちゃん、ジト目で見るのはやめてほしいニャ……」
「ついてきて正解だったニャ!だんごも結局はそうなるのニャ!」
違う違うといいながらフクにすがり付くだんごに、ちくわとささみがじゃれついていて、猫好きにはたまらない風景だった。
「客寄せにちょうど良かったよ。これはオマケだ、持ってってくれ」
ケバブを沢山土産にもらってしまった。
僕らは大量のケバブを抱えて城の正門前に来ていた。門番に数個渡して用件を伝える。
「食いもんはありがたくもらうが、王に一般人が簡単に会える訳がないだろう」
「そう言わずに伝えて下さいよ、ケンジが会いに来ましたって」
そうしたら僕らは、五分も待たされずに中に通してもらえた。




