表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第八章 酒の為ならどこまでも
110/230

110話

「ナターシャ達も頑張ってくれたお陰で、店も無事に営業日できました。今後も色々と大変な事があると思いますが、よろしくお願いいたします」


 力になってくれた治癒魔法使いのオジサンも、美味い酒ですなぁ、と、しこたまビールを飲んで宿に帰っていった。フクが何故かオジサンを気にしていたが、まさかオジサンコンプレックスなのではなかろうな。いや、オジコンでもいいですけどね…僕を好いてくれているのですから。


 それから、家に帰って、各々の報告会になった。

 まずは修道院の状況。


「マリーナさんを始め、病気にかかっていた修道士達は快方に向かっています。呪いというのは、病気をぶり返す様に仕組まれていたようです」

 ラムがそう報告すると、だんごが補足する。


「こんな事をするのはよその世界の者だと思うニャ。リリィがやったのか、それとも他にもいるのか、その辺までは分からないニャ」

 そして、何かを手渡してくるだんご。その手にはくすんだミスリルの指輪が握られていた。


「似てるけど僕らのしている指輪じゃないな」


「こっちではどうか知らないけど、ミスリルは呪いの触媒に使えるのニャ。それは水瓶に入れられてたニャ」


「そこから感染させられたのか」

 だんごがこんなに頼りになるのを見ていると、弱いってのは嘘なんじゃないかと思う。本当はどうなんだろう。


「そういや、アンバーの防犯対策はどうなってるんだ?警備の兵士なんて見たことがないけど。それに、亡くなった後の町長はどうなったんだ」


「街が雇った傭兵が巡回警備したりしてたけど、町長が亡くなってからはどこがお金を出すかで揉めてるみたいね。もう、王様になんとかしてもらうのが一番かもね。売った恩は返してもらわないとね」

 ラムは何故にアンバーに来られるようになったのか…いるのが当たり前になってスルーしまくっていたけど、言いたくないならまぁいいか。


「街のリーダー的な役割はやりたくないんだけど、こうなってしまったからには王様に頼んでみるしかないか」


 バニラ達がお茶を淹れて持ってきてくれた。


「バニラはお茶淹れるの上手いね。ありがとう、それで店はどうだったの?」


「串焼きは全部売れたニャよ」

 と、バニラ。


 チョコやモカとラッテにミルクはビールを注ぐのに箱に上がってやっていたらしく、その姿が可愛いと評判なったそうだ。


「明日からは通常営業するけど、午前中は弟の事で動くからよろしくな」


 サラの移転魔法で王都に行くか。だんごも連れて行った方がいいかもな。土産に業務用サイズの杏屡酒でも持っていこう。






「さて、今度はどこへ行こう」


「歩くのも流石に疲れたわね」


「姉ちゃん、あの人知ってるぞ。乗り物から降りてきたから、あれに乗せてもらおうよ」


「あれは串焼き名人だな。結婚式の時に食べたが、得も言われぬ美味さだった。とりあえずついて行ってみるか」

 俺達は串焼き名人の後を追った。




「ん?何ついて来てんだ」


「もうバレちゃった。マーズがもたもたしてるからでしょ、もう」


「話さなくちゃいけないんだし、見つかってもいいんだよ!」


「ああ!確か、トダ村で結婚式を挙げてた…なんて言ったか……」


「ザシャと妻のルナ、それに弟のマーズだ」


「おお、そうか!って、名前は初めて聞いたんだったわ、ハッハッハ。買い物か?」


「ルナが疲れてるのでな、串焼き名人の乗り物に乗せてもらおうと頼みたかったのだが」


「これから買い物するから、少し待ってもらえるか」


「それでは外で待とう」

 串焼き名人は気持ちのいい男だな。




 結局、串焼き名人が酒場をやっていると知り、そのまま店に向かう事になった。






「しかし、立ち飲み屋があんなに混むとはな」

 冒険者風の若い男が言う。


「猫耳の小さい小達が可愛いからだろ。それに串を焼いている女性もエルフだし」

 こちらは少し腹が出ている男だ。


「それもあるかも知れないが、食い物も凄く美味かったな」


「ああ、それに酒!何でこんな辺境にあんな美味い酒があるんだ。それに見たか?壁にさり気なく王家御用達のプレートが飾ってあったぞ」


「マジかよ。まぁ、楽しみがあった方がいいし、これからはオープン前に並ぼうぜ」


 冒険者ギルドの酒場に来る客が少なくなった。どうしたものかと最近話しに聞く立ち飲み屋を偵察に来たら、凄い賑わいではないか。


「おい、あれって…」

「アンバーのギルドマスターだ。飲みに来たのかな」


 冒険者ギルドは、酒場でされる何気ない会話が情報として重宝されたりする。それがめっきりなくなっては仕事にならない。むむむ、どうしてくれよう。


 そう、俺はここアンバーの冒険者ギルドマスター『ブラス』だ。辺鄙なこの街にいると、ろくな仕事がない。そこで、情報を売って何とか財政を保っているのだが…。


「ああ、いたいた!ブラスさん!こんな所で何やってんですかっ!」


「ん、まぁ、何だ、その」


「これから忙しくなるってのに!油売ってないで仕事して下さい!」

 部下のクセに生意気だ!俺がどんなに仕事をしているのか!今だって…。


「トダ村に出来たんですよ!」


「何がだよ、日本酒の新しいのか?」


「違いますよっ!ダンジョンですよ、ダンジョンっ!遂に来ましたよ、アンバーの時代が!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ