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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第八章 酒の為ならどこまでも
109/230

109話

 修道院はマリーナさんを始め、殆どのメンバーが快方に向かっていた。治癒魔法使いさんが優秀で良かった。イメージでは女性だったけど、会ってみたら髭面のオッサンであった。オッサン同士、世間話に花が咲きましたよ、ええ。


 呪いってのは簡単に言うと、病気が治りかけてもぶり返しまくるという単純なものだった。でもこれが伝染しながら人々を死に追いやる事ができる、バイオテロ攻撃の手段には最適なのだった。恐ろしや異世界。


「カレンさんもお疲れ様でした。急に色々あったのに、何から何までスミマセン」


「馬車で王都までに何日もかかるのに、違う世界には一瞬で行けちゃうんだからねぇ。旦那がそこの住人だったなんて、想像もできなかったよ。でもさぁ、皆いい人達だったし、こっちで人助けになる事をやってくれてるんだろ?お互い様だよぉ」

 カレンさんはニカッと笑って肩を叩くと部屋から出ていった。

 僕はそんな彼女に後からお辞儀をするしかなかった。


「ご主人様、帰るついでにビールを持っていってってマリーナさんからの伝言ですニャ」

 入れ代わりでトコトコとフクが入って来た。頭をナデナデして癒やしをもらいながら、荷車を引きつつ、台にフクが後方を向きながら乗っている図を想像してしまった。画になる!


「よし!帰ろうか」


「ハイですニャ」


 荷車に樽を積みながら、マリーナさん達がまたまた新酒を造っていたのに気付いてしまった。これは大事に売らせて頂きますよ。

 どんなビールかといいますと、立ち飲みチコリで使っていたすだちを利用した『すだちホワイト』だった。小麦を使った白ビールにすだちの香りが効いた、僕らあっちの世界人には郷愁を誘う、特別なビールかも知れない。

 治癒魔法使いのオジサンにも店の事は伝えておいたので、夜になったら来てくれるはずだ。その時皆で乾杯しよう。






「何と!この棚全部が日本酒か!対面の冷蔵庫にも日本酒!米の酒は丁度良い酒精に独特の風味で、私も気に入っているのだが…どれから飲んだらいいのか…ハッハッハ、迷ってしまうな!」


「お客様、こちらの上機嫌 特別純米などはいかがでしょうか?隣の市の蔵でございますが、本数が三百限定で当店分もこの一本のみになってしまいました。味わい深く、飲み飽きない酒に仕上がっております」


「では、もらおう。それで主、酒を注ぐ器はないのか?」


「でしたら、こちらのぐい呑みをサービスさせて頂きます。三つでよろしかったでしょうか」


「支払いが済んだらすぐに飲みたいのだが」


「あちらのカウンターをお使い下さい。おつまみなどは有料になりますが、隣の棚にありますので、酒と同じくこちらで会計して下さい」


「うむ、感謝する」


 パラダイスな酒屋は働いている人間も大したものだな。至れり尽くせりではないか。


「それで、お客様。本日は地元の蔵から試飲会をやる予定になっておりまして、同じカウンターで楽しんで頂けますので」


「しいんかいとな?」


「はい、色々な種類の酒を無料で飲む事ができます」


「!、金を取らずに飲ませるのか!」

 恐るべし世界だ。


 ちなみに神なので酒に祝福を与える事ができる。

 その酒は飲むと健康体になり、更には寿命も延びるのだ。ここ四百年は与えていないが、そろそろ考えても良さそうだな。

 しいんとやらをやっている蔵の酒に祝福を与えた。


「ルナ、マーズ、お前達も飲んでみろ」


「フルーティーな香りね…コクコク」


「酒は記憶がなくなるから苦手なんだけどなぁ…コクコク」


 これで二人共長生きできる。

「これからもよろしくな」


「どうしたのよバッカス。当たり前じゃない、す、好きなんだし…」

 飲み過ぎるなよ、胸が大きくなるかもしれないからな。


「ちぇっ、別れる予定はないのか」


「コラ!マーズ!どの口がそーゆー事ゆーの?」


「いはい、いはいれす!」


「仲が良いのはいい」

 この古酒というのもなかなか美味いな。






 フクは見てしまったのニャ…。

 だんごが実は猫のふりをした人族なのを。


 髪がシュルシュルって長くなって、背も伸びたんだニャ…恐ろしいニャ。

 治癒魔法使いのオジサンて、旅で来て病気になって寝込んでいた人だったのニャ。その人に何かして、治癒魔法使いにしてしまったのニャ!

 この事はご主人様にも誰にも言ってないニャ…どうしたらいいニャ。だんごに消されてしまうのかニャ。

 いや、あんなに凄い事ができるんだから、おだててご主人様の弟さん探しをしてもらうのが一番ニャ。


 しかしあれだニャ。

 何で力を隠すのかニャ。

 召喚された勇者なんだから、圧倒的な力を見せつけて引き出しを開けまくるといいのニャ。割れた壷の片付けが面倒くさいニャ。


「ご主人様ー、だんごとは寝たのかニャ?」


「な、何言ってんだ!フク達と一緒で添い寝だよ!」


 ご主人様はそう言ってたけど、初めてのローテーションの翌朝は生臭かったのニャ!前世でよく嗅いでた匂いだから、しらばっくれてもダメなのニャ!

 何かなくても何かしたに違いないニャ。


「ヤキモチやかない」

 なでてくれるのは嬉しいニャ。でも、誤魔化されはしないのニャ。


 でも、何だろう…だんごはなんか嫌いになれないのニャ。

 荷台に戻って揺られていたら、だんごから優しい目で見つめられたのニャ。

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