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魔汁キンミャー焼酎を異世界で  作者: 水野しん
第八章 酒の為ならどこまでも
108/230

108話

 この世界は何故かあっちの世界と同じ事があったりする。

 時間もその一つで、ちょうど今振り子時計が夜の12時を回ったところだ。そう、ここも一日24時間なのだった。


「呪いを伴うインフルエンザか…俺が王をやっていた時代は今から500年程前の事だ。あの頃も…確か一度あったな。病気に対して知識がない時代ではあったが、魔法が何でも解決したのは今と同じだ。まぁ、今や魔法が使える奴は減ってきたが…血が薄まってきたんだろうな。この辺の事は今は置いておく。このインフルエンザは治療できる魔法使いがいれば大丈夫、問題ない」


「蔓延する原因は何だったんだ?」


「人の移動がない場所で発生した事から、当時は原因不明としていたな。しかし、この時代にやって来てから歴史は調べたんだ。『魔族』と呼ばれた種族が、そのウイルスを持ち込んだらしい。本には勿論ウイルスとは書かれてないがな」


 なる程、魔族ね…。分かりやすい呼び方だが…。


「この世界に魔族はいるんだな」


「いや、魔族なんて種族はいない。それは俺の最初の時代からだ」


 思わず振り返って大五郎を見る。


「なら、その魔族と呼ばれていた奴は何なんだ。全滅させられたとしたら、今起きている事には関係ない事になる」


「俺らの世界にファンタジーの概念がなかったとする。そこにエルフみたいな外見が違う種族が転移してみろ、どう思う?そして、そいつが悪い奴だったら。悪魔みたいに思わないか」


 大五郎は諸悪の根源は僕らみたいな転移者だと言っているのか。まさか。


「世界がいくつあるのか、更には同一の様でパラレルな世界。俺らがここに来ている以上、他にもそれが出来る者はいる、と考えるのが普通だろうな」


「身内が攻撃されたんだから対処するしかないな」


 もっと仲間が欲しい。普通はずば抜けて強い奴が戦うんじゃないの?


「で、リリィって女の事だが、タイミングを考えるとこいつが魔族と呼ばれていた奴らと同じ種族かもしれんな。賢輔は何かに利用されたとしか思えん」


「ケンジさん、リリィさんの机の引き出しにこれが」

 サラが待ってきたのはミスリルの指輪だった。


「随分とくすんでしまってるな…ミスリルは酸化しないんじゃなかったのか」


「どれ見せてみろ………これは確かにあの指輪だ。ミスリルが劣化するのは邪悪なものを吸い取った時だな」


 それ何を意味しているのか、今ならはっきりと分かる。リリィは魔族で敵側だ。あのリリィが。そして、弟を利用した仇でもある。


 ただの飲ん兵衛サラリーマン。そして今は立ち飲み屋の店員が巻き込まれる様な事じゃないだろ、これって。


「とりあえず修道院の病気を収束させないとな」


「俺は一旦、トダ村も見てくる。用心するに越した事はないからな」


 やるべき事は分かった。

 力がない分は知恵で補強しよう。






「コンビニもよかったが、このスーパーマーケットというのもいい店だな。何しろ売っている数も多いし、値段も安い。ツマミになる食い物もコンビニの比ではない。ルナは服が売っているのが気に入ってるのだろ?また買うか?絵の描かれたパンツを」


「ば、ば、ばばば、バッカじゃないの!」


「ははは、ポカポカは良いものだ。それに、あのパンツは悪くないぞ。あっちにはないのだから、気に入ったのがあれば買うがいい」


 子供パンツは最高です。日頃抑えていた気持ちが、バッカスという神と融合した事で、口にしても何も恥ずかしくなくなってしまった。

 神の記憶はあるし、考え方すら自分のものになっている。


「マーズはアイリスに会えなくて残念だったな」


「フン!この先、一生会えない訳じゃないんだから別にいいんだよ!」

 まだまだ強がってみせる若いドラゴンだな。しかし、いつまでくっついて来るんだ。夫婦の営みが邪魔されてたまらん。いや、溜まってるんだが。


「ねぇ、外に出ましょうよ。少し飽きたわ」


「ここは大きな店が集合して、一つの街の様だな」

 自動車という乗り物を停める場所がだだっ広い。あれが馬車の代わりなのだから、この世界は裕福なのだろう。


「あら、あそこってお酒を売ってるんじゃない?」


「む?ここはパラダイスか」

 ルナの言う通り、近付くと酒屋だった。無駄にデカい。

 透明な板の戸を押して入るとそこもかしこも酒ばかり。やはりパラダイスだった。


「どれを買うか、これは迷ってしまうな」


 やはりケンジの世界は稀だった。奴には感謝しないとな。まぁ、何かあったら助けてやろうではないか。

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