表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/230

1話

 大衆酒場、そこは一種独特な空間。ハッキリ言うと子供連れなんかはオミットだ。

 日頃の疲れを癒す為に集う場所であり、店主と客が織りなす空気感が癒やしを与えてくれる。

 チェーン店みたいなガチャガチャした喧騒に悩まされる事もない。


 お気に入りの酒場が電車で二十分の所にあるので仕事帰りに寄る事にする。まぁ、日課だな。

 ここはいわゆる立ち飲み屋でキャパは少ないが、気軽に飲めるのがよい。客同士少し密着した感じも心地よい。


 最近流行りのせんべろという、千円もあればつまみと酒でベロベロに酔える、そういった店ではあるけど、生ビールが好きなんだ。あえて少し高めの生ビールスタートなのだ。

 今日はいつになく暑い!

 こんな暑い日はキンキンに冷えた生ビールで決まりだよね!


「耕ちゃん、生で」


「生ビールです、どうぞ」


 おしぼりで汗ばんだ手を拭きつつ、ジョッキから冷たいビールをのどに流し込む。


「美味いっ!」


 さてさて、今日のメニューはどんな感じだろう。

 仕入れで変わるメニューは毎日通っている常連でもなかなか飽きる事はない。新鮮な魚介、くじらの刺し身から山菜、野菜の惣菜など、塩梅のいい料理が沢山ある。


「イサキと磯つぶ貝の刺し身をお願いします」


 今日の注文はこれだ。

 山形県の日本海側で生まれた俺は小さな頃から新鮮な魚、それに山菜などを食べらせられて育った。

 平野が広く海は近いし山も近いので、おかずと米は最高の物だったから、何気に食育は抜群なのだった。

 そんな事もあり、東京に出てからはなかなかこれは!という刺し身に出会えずにいた。白く濁ったイカは刺し身では鮮度面で遅いから火を通した方が美味いし。クタっとしたサーモンは脂がクドくてねっちょりするしで、食べる時は焼魚チョイスの日々だった。


「くぅーっ、このイサキ、味が濃い!」


 この店を知り、ようやく根っからの魚っ食いは欲望を満たせたのだ。

 まぁ、たまたまと言うより、巡回していた飲みブログのコメントにあった情報なんだけどね。それでも行くか行かないかは運命的タイミングもある訳で。


 そうこうしていると店内は顔見知りで埋め尽くされていた。


『そろそろ日本酒に切り替えるとするか』

 そう思いながらメニューのボートを見る。

 全国津々浦々の日本酒が十何種類。

 こんな時は、


「すみません、オススメの日本酒を一合で」


 日本酒はヘタにブランドで選ぶより、店の人に聞いてみるのが正解だと思っている。

 店主は日々客の好みを把握してくるし、たまにハズして好みではないモノに冒険できたりもする。雑誌やネット、テレビで人気だからと有名どころを飲むのもいいが、それで日本酒というものを判った気になる人を見ると損をしていると思う。


 大量生産のパック酒なんかも燗にすれば美味い。

 アルコール添加された本醸造でもヘタな吟醸酒より口当たりが良かったりする。

 それに、何万もする大吟醸なんか買うより、安く、三千円前後で一升瓶が買える純米大吟醸を買った方が断然お得で美味しかったりもする。真面目で小さい蔵は、まだまだ全国各地にあるのだ。

 しかし、そんな日本酒は酒を扱っていればどこでも買えるのかというとそうではない。蔵が決めた特約店でしか基本的には買えないのだ。めんどくさいけど、品質を保ったまま売る事ができるのには一定のレベルが必要だ。

 そこで、一升瓶で買ったものの飲んでみたら好みではなかった、などの失敗が少ないのが、安価な日本酒立ち飲みなのだ。


「どうですか?どっしり系が好みでしたけど、イサキに合わせて少し淡目のフルーティーなものにしてみたんですが」


「初めて見たラベルだけどどこの?口当たりよくてヤバそうな酒だね」


「山口の酒です」


「夏酒かぁ。刺し身にも合うし言うことないよ」


 こうして日本酒を楽しみつつお惣菜なども頼んだりして、小一時間ばかり滞在した。


 さて、二軒目はどこにしようかな。そんな事を考えながら暖簾をくぐった。



 二軒目も立ち飲みだ。ここは駅から少し歩くがいつも客であふれている人気店。

 自家製のアールグレイハイを頼み、ツマミには軽くチーズにした。


「あ、お久しぶりです」


「どうしたの?最近見なかったね」


「こっちに来るまでで帰宅コースだったんですよ。今日は久しぶりに来てみたら入れそうだったので」


 人気店はタイミングで入れない時がある。

 この辺も気軽に入れる酒場が増えてきて切磋琢磨している。安ければ良かろうでは客は満足しない地域なのだ。

 フラレても他に行ける酒場かあるというのはとても幸せな事だ。


「しばらくこの辺に来ないうちに色んな店ができたんだねぇ。相変わらず、向かいのやきとん屋は盛況だし、賑わってていいね」


「そうそう、立ち飲みも二店舗できてね、うちなんかもアグラかいてちゃいけないから日々精進よ!」


 マスターは白い歯をキラリと輝かせてそう言った。

 この辺が長い事人気店でいられるってことなんだろうな。隣ではテレビでよく見る芸人が、頷きながら金魚サワーを飲んでいる。


「ところで、その二店舗は何をメインでやってんの?マスターはもちろん偵察してきたんでしょ?」


「イタリアンのワインバルと自家醸造のビア立ち飲みだな。ワインバルはもう何店もあるから厳しいかもなぁ。何か特徴を出せたらね……ビールの店はなかなか良かったよ。つまみも全部五百円でワンコインだし、何しろクラフトビールが気軽に飲めるしな」


 この界隈もますます賑やかになってきている。

 さて、そろそろ次の店へ……。

とりあえず書いてみました。

不定期になると思いますが長く書けたらいいな。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ