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7人の異世界生存者  作者: 椅子寝
第2章
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夜の百合

「それじゃあ俺らは隣の部屋で」

「あ~ん…!私のサードと離れ離れなんて!」

「また明日なテスラ。それと…ユキノさんも」

「あ…すみません。お休みなさい」

「いいっていいって気にすんな」


 王女様の話が終わった後、男子たちが旅で疲れたということもあり、全員が休息を取ることになった。それも…私は王女様とこの部屋に残り、釜谷君の使っていたベットで寝かせてもらえるとのことだ。


「そんな~」


 男子一同が隣の部屋に移り、部屋には私と王女様だけになる。すると一瞬だった。


 とんでもない速度で王女様は私を抱え、そのままベットに押し倒される。ラグビーのタックルを受けたのかと思わせるような力強さだ。


「ちょ…⁉」


 私に抵抗する余地はなく、容易く王女様に馬乗りされてしまう。王女様の顔は…満面の笑みだ。


「白状しな?サードのことが好きなんでしょ?」

「えぇ⁉そんなこと…!」


 両手はそれぞれ掴まれ、足は絡みつき、身体はかなり密着する。別にそっちの気はないが、綺麗な人に顔を近づけられると、それはそれでなんとも言えない気持ちになる。


「私は別に構わないのよ?サードを奪おうっていうなら、正々堂々と相手してあげるわ」


 私の耳元で湿っぽい息を吹きかけ、その後には頬に鼻息が感じてしまうほど顔を近づけてきた。何をされるかはわからないけれど、身体が急に火照ってきた。


「私、別にそんな…!」

「いつまでそんな嘘を言えるのかしら?」


 ついには私の唇に自分の唇を近づけ…⁉


「好きです!とっても好きです!」

「誰が?どこが?」


 慌てて白状したのに王女様の唇と追求は止まらない。


「サード君の…!優しいところ………です!」


 キスをされる前に叫ぶと王女様は満足げに私から離れ、隣のベットに飛び移る。すごい滑らかな身のこなしだ。


「白状したわね」

「ううっ…」


 私はとりあえず火照った身体の熱気を振り払い、隣のベットに移った王女様からさらに距離をとるようにベットの淵まで身を引いた。このままでは…大切なものを失いかねない。


「怖がらなくても大丈夫なのに。だって私は既婚者ですもの。旦那様一筋の従順な奥様ですもの」


 そんな私に勝ち誇ったような笑みを浮かべた王女様は惜しげなく自分の服を脱ぎ…私では到底勝つことのできない大きな山を2つ揺らす。私のそれは「形で勝負する」ということもできず、男性のボディビルダーのそれの方が大きいのではないかと思ってしまうほど…小さい。というよりもない。


「私…別に…奪おうなんて」

「だろうね。だってそんな勇気なさそうじゃない。いっつも大きな背中に隠れてた系でしょ?ラテラクリフトが頭を痛めるほど引きこもり癖があるみたいだし」


 図星を隠すように魔導師さんが用意してくれた寝間着に着替える。服を着る時だって、つっかえる部分がないからすぐに着れた。


「ま、そういうあなたに面白い情報を教えてあげなくもないのだけれど?」

「…何ですか?」


 私がそう言うのをわかっていて聞いてきている。その証拠にニヤリと笑い、ベットの上であぐらを組んで私の方を向く。


「この国の側妻制度を知ってる?」

「ソクサイ?…さぁ?」

「男は3人まで、妻を持つことを許されているの。理由は出生率の低下や近隣諸国のハーレム等々があるんだけど」


 それを私に教えてどうす……まさか!


「私に…!」

「サードの側妻になれと~⁉…じゃないんだけどね?」


 私の言おうとしていたことを読まれていた。私、他人の口から聞くと恥ずかしいことを言おうとしていたんだ…


「じゃあなんで私に?」

「近いうちに側妻ができるかもだから」

「え…?」


 今の私の顔がそんなに面白かったのか、王女様はクスクスと笑った。その笑顔には…勝てない。少女漫画に出てくるようなお姫様だ。私とは眩しさが違う。


「デイビス家の匿っているエルフ族の娘がいるらしくって、その娘をサードの側妻にとさ。マーセナスは本人に既に話し済みとのことでね」

「じゃ…じゃあサード君は…」

「返事は私に相談してからするらしかったの。今日はする間もなかったけど」


 釜谷君に側妻が?…そんな。


「たぶん、マーセナスが私には言わなかったことをサードに言ったんでしょう。きっと私たちを政治利用するのが魂胆ってところかしら」

「王女様はどうするんですか?」


 そんなの1人の女として…


「エルフの知恵が欲しいのは当たり前なんだけど、正妻である私には…いい話じゃないな~」


 いい顔はしていないが、否定的な顔もしていない。そこまでエルフの知恵というものが貴重なのか?そもそもエルフって…あのエルフ?


「あの…エルフの知恵って?」

「そっか。知らないよね。エルフ族は世界を流れる民で、国籍がない。ある時定められた国際講和条約の規定ではそのエルフ族に干渉することは許されなかった。つまり彼らは常に部族で動くの。性格上、彼らは気難しく、研究熱心で、世界を周ることから多くの知識を蓄え続けている。その知識をエルフの知恵というの」

「でも…干渉できない存在をデイビス家は匿っているんですよね?」

「それはあれよ…はぐれのエルフ。厳しい規則に縛られたエルフ族の多くは耳たぶの裏に部族の紋章が入っているの。条約では紋章の入っているエルフのみを認めているから。入ってないエルフよ」

「それだと…エルフの知恵を持てないんじゃ?だってまだ私たちと同じ世代の人なんですよね?」


 私だって日本で育った日本人でも日本の技術を全部知っているわけじゃない。


「エルフは寿命が長いからその辺は知らないけど、エルフの脳に蓄積された知識は全世界のエルフと共有が可能らしくて、エルフ1人さえいれば、共有されているエルフの知恵を独占できるの」

「じゃあデイビス家はその知恵を?」

「獲得するつもりだったみたいだけど、そのエルフが口を割らない限り不可能だし…周りの貴族たちの圧力もあったから手放す必要があったんでしょうよ。エルフは知恵を他者にはむやみに教えないらしいしね。自分たちの知恵の恐ろしさを知っているから」


 匿っていると言うよりも、まるで政治利用しようとして囚われているんじゃないか、と思ってしまった。そんなことのために拷問とかされてしまっているのだろうか?そしてそういうことを何気なく話す王女様もまた…そっち側なのだろうか?


「エルフの規則の中にあるのよ。知恵を与えるに相応しい人にのみ与えよっていう教えが。マーセナスはその教えに反してたみたい。あのごますりじゃ無理もないわ」

「サード君がそれに合致する可能性は?」

「さぁ?本人の内に眠る本性を見抜くのがエルフの持って生まれた特技。どうかな?」

「エルフの知恵がもらえなかった場合は?」

「う~ん…貴族に高い恩で売るかな?」

「側妻ですよね?離婚…になるんですか?」


 釜谷君がそんなことするはずがない。もし王女様が彼にそうするだろうと思っているなら…私の方が釜谷君を理解している自信がある。


「待って待って、そんな顔をしないの。普通ならの話だよ。あのサードがそんなのをわかった上でするわけないじゃない。彼女の境遇を案じて逃がすんじゃない?」

「あ…普通なら、ですか」

「結婚して十数日。あの優男ったら…まだ私に手も出してないんだから。寝る時に私が抱きついても、朝になったら抜け出してるし、今日だって勝負下着で誘惑したのに動じないのよ?」


 これがかの有名な「のろけ」というやつか。しかしやっぱり釜谷君は優しいんだ…


「その辺の判断は本人に委ねるとして…」


 しまったと思った時には大抵遅く、王女様は私に飛びついてきた。魔導師さん曰く「反射速度は人類最強だからね」だとか…今度も抵抗する間もなく抱きつかれてしまう。


「あのちょっと…!キャッ⁉」


 ダメだ。今度こそ…ダメだ。


「女同士の親睦会といきましょ~!ユ、キ、ノ、ちゃん」


 この人はこうやって釜谷君を襲っていたのかと思うと…どこか可哀想だ。異性が得意じゃないというのに側妻の件を突きつけられ、夜は襲われる。きっと心休まるときがなかったろう。


「あっ⁉いや!いやぁ~!」

「ここが敏感ね~」


 今なら休まっているのかな…だったらいいな。


 今夜は熱い夜になる。私はそれを覚悟し、勝てない相手に抵抗を試みようとするのだった。

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