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7人の異世界生存者  作者: 椅子寝
第1章
16/27

それぞれのそれぞれ

「王女様おめでとうございます!」

「ああ…我らの王女様が結婚だなんて…」

「王女様~!」

「なんとお美しい!」


 翌日、披露宴が盛大に行われた。魔導師さん曰く「貴族は汗臭いバーシアが苦手でね」とのことで、中央広場に集結したのは大勢の労働者たちだった。私は屈強な男たちの人だかりに飲み込まれそうになったところ、魔導師さんがサード君たちのいる舞台の目の前まで導いてくれた。


「あれが君の会いたかったサード君だね?」

「え…はい。ちょっと風貌が変わってますが…」


 少女漫画に出て来そうな煌びやかな正装に身を包んだサード君は…白髪になっていた。まるでコスプレを見ているようだ。でも…コスプレではなく、私の見上げた先にいる彼はガチなのだ。


 私の腰ほどの高さがある舞台の中央にサード君と王女様が並んで座り、舞台両端にはデイビス家などの来賓が座っていた。彼らの前にある机には豪華な料理が並んでいた。魔導師さんの料理で見て学んだが…この世界の人と私では味覚に驚きの誤差があった。サード君は大丈夫なのだろうか?


「披露宴はほとんどお祭りだからね。王女様たちのいる舞台の上で行われる見世物を見て、露店でお買い物等々…夜には会えるし、楽しんでいこうよ」

「はい」


 魔導師さんに返事はするものの、サード君が気になってしょうがない。6m先にいる彼と…彼の婚約者が笑顔で話している様子がとても眩しく、その眩しさに負けないくらいモヤっとした何かが心に広がる。


 そんな私をよそに、どこからともなく打楽器の音が聞こえ、舞台には数名のダンサーが場をさらに盛り上げようと踊り始めた。これを機に…披露宴は開幕したようだ。たぶん、この後にもパフォーマーが何十人と控えているのだろう。そして彼らは私からサード君を遮ってしまう。


「あの…じゃあ夜まで部屋にいていいですか?」

「君は相当な引きこもりなんだね。わかった。送るよ」


 私が最後に見たサード君は王女様に寄りかかられても、嫌な顔を見せず、頬にキスさえも許していた。でも…サード君を、釜谷君をずっと見てきたからわかるものがあった。彼は恋愛に興味がなく、異性と話すのは苦手。そして何かを我慢している時、彼は必ず手で耳たぶに触れる。


 今のサード君もまた……耳たぶに触れていた。


 ~~~~


「シュウジ見てよ!すっごいお祭りじゃない?」

「本当だな…なぁテッペイ?」

「あ…ああ」


 バーシアへと飛行中、偶然にもシュウジとユウキの2人に追いついた。2人とも能力者らしく、シュウジは土、ユウキは植物を扱うらしい。合流した後、いろいろと話した結果…こいつらも人殺しをしていた。


「にしてもすごい塔だね~」

「繁栄の塔だっけ?中央広場はすぐ下だろ?」


 ついさっきバーシアの門を通過した俺らはすでに始まったとみられる披露宴の会場に向かっていた。しかし大勢の男たちが道に群がり、繁栄の塔という場所も相当に遠い。


「テッペイ君なら連れて行けるよね?」

「お?あっ…街中で能力を使ったら目立つだろ。聞く話じゃ、ここは人身売買の中心地って…学生から見世物ピエロに転職したくない」


 正直、あの世界ではあまり話したことのない2人だ。いざ話しかけられると…こう、何と言うか…調子が狂う。


「ま、のんびり歩いてもいけるって」

「だね」

「ああ…」


 そんなことよりもシュウジとユウキ、それからサードこと釜谷…俺とマヒロも加えれば生存者は5人か…


「なぁ、2人は元の世界に帰りたいよな?」

「テッペイ君?いきなりどしたの?」

「当然帰りたいさ。能力は惜しいがな」


 2人は一心同体なのだろうか。古くからの親友らしいし、きっといい信頼で繋がっている。マヒロと俺の関係とはかなり違って見えるな…


 マヒロはこのままこの世界に踏み止まる可能性が高い。目の前で仲間が死に、精神的に病んでしまったこともあるが、何よりも能力によって周りを従えてしまったせいで…自分にかなり酔っている。泥酔レベルだ。


 俺は彼女と暮らせるのか?


 ここに来るまでずっと考えていた。恋人であるマヒロに疑問を持ったのだ。俺は帰りたい。クラスメイトは大勢死んだし、彼女が征服した城の兵士1000人も彼女が殺した。正直、人が死ぬところをあまり見たくない。そう思う一方で、彼女には俺が必要なのではないか、とも思った。あのままでは悪い連中の操り人形にでもなってしまいかねない。彼女を支えるべき人間は絶対に必要なのだ。


 俺はどうしたい?


 見上げた先には巨大な塔があるのみ。答えなどない。


 ~~~~


「アハハ!ねぇサード、面白くない?」

「まったくなっ!お笑い芸人がいるとは驚きだ!」


 はぁ…疲れる。ありえないほど疲れる。俺は舞台の上で主役を全力で演じている反面、早く終わらないかなと投げやりになっている面を持っていた。人間の二面性というのはこのことなのか?


 いつも見せる嫌な顔はなしね!


 …とテスラに言われた。結果として終始笑顔を保つ必要がある。かれこれ4時間、ずっと口角が上がりっぱなし。


 エルフの側妻の件も話していないのに…夜には生存者の女子と会う予定もある。頭が痛くなってくるし、体力が残っているか心配だ。


「アハハ!アハ!アハハハハ!面白いね~」

「酒の飲み過ぎだよテス…シラクサ」

「え~?何か言った~?」

「何でもないよ。お!…ハハハ!」


 何で見物するフリをしてテスラの飲んでいた酒を回収しなくちゃいけないのだろうか?酔い潰れて醜態を晒すわけにはいかないのだから当然だが、王女ならそれぐらいセルフコントロールしろよな。嘆かわしいことよ…トホホ…


 そんな顔も表には出しちゃいけない。常に笑顔。お人形のように…お祭り騒ぎが収まるまでずっと…

とりあえず第1章は区切りかな?と。

ブックマーク等々ありがとうございます。

そして今後ともよろしくお願いしますね。

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